最近のクラーク・ケント(アクションコミックス#1029-1035)
最近のクラーク・ケント(アクションコミックス#1029-1035)
(作:フィリップ・K・ジョンソン、画:ダニエル・サンピア他)
【スーパーマンの老い】
きっかけは簡単な事件であった。
STARSラボの実験の失敗により開いた次元の裂け目。この裂け目の中に飛び込んだスーパーマンは、見事裂け目を塞ぐ事に成功。かくしてこの世界は次元崩壊の危機を脱したのであった。

そしてそれはスーパーマンに取って、ありふれた日常的事件であった。
しかしこの事件はスーパーマンと彼を取り巻く世界に、大きな変化をもたらす。
この事件以降、スーパーマンが“老い”始めたのだ。

(スーパーマンの身体状態の検査をするバットマンとアトム)
異次元世界で曝された放射線のせいなのか、それとも単なる時期的な偶然なのかはわからない。ただ僅かに、だが確実に衰えていくスーパーマンの能力。
しかし、自身の衰えはクラークにとってスーパーマンとしての活動を控える理由にはならなかった。
クラークがスーパーマンとして活動している理由は、「自分が無敵の超人だから」ではなく、常に「そこに助けを求める人々がいるから」なのだから。
【ウォーワールドの難民】
そんなある日、スーパーマンは宇宙からやってきた難民の少女を保護する。
スーパーマンの宿敵モンガルの手下たちに追われながら、ボロボロの宇宙船で地球にやってきた少女。
彼女を助けたスーパーマンの目を惹いたもの。それは、鎖でぐるぐる巻きにされた彼女の手と、その手に焼き印されたエル家の紋章――スーパーマンの"S"の字であった。

彼女の名前はツァオ・ラ、モンガルが支配する機械惑星ウォーワールドのスラムで育った少女である。
宇宙一の暴君モンガルによる苛烈な支配の下で育った彼女には、幼い頃からのヒーローがいた。
そのヒーローとはスーパーマン。彼女の部族の語り部が語るスーパーマンの物語を、おとぎ話のように聞きながら育った彼女にとって「いつかスーパーマンが助けに来てくれる」と夢想する瞬間だけが、暴力によって虐げられるつらい現実を忘れられる時であったのだ。

「支配だけがこの世の全てであり、闘技場で相手を殺すたびモンガル本人から増やされる手枷の重さこそが自らの存在理由」というウォーワールドの歪んだ価値観。
その文化を生来のものと受け入れながら、それでもスーパーマンによる救いを願い続ける人々を知ったスーパーマンは、彼らを解放するためにウォーワールドとの戦いを決意する。

【ジャスティスリーグ脱退と新チーム結成】
奴隷の解放のための協力を求めるためにウォーワールドの惨状をジャスティスリーグに伝えるスーパーマン。

しかし、リーグのヒーローたちからは色よい返事は得られない。
地球には地球の問題が山積みであり、遠い世界の人々の苦境にたとえ心を痛めたとしても、彼らを救っている暇や余裕はないのだ。
それは確かに妥当な判断なのかもしれない。しかしクラークは、そこに確かに存在し助けを求めている人々を見捨てることはできなかった。
かくしてクラークはリーグを脱退。ウォーワールドの人々を救うため、独自のチームを結成することを決意する。
そしてクラークが新チームのメンバー集めを任せたのは、意外な男であった。

男の名前はマンチェスター・ブラック。かつて、ジャスティスリーグを"オジサン向けのヒーロー"と切って捨て、新しい"過激なチーム"であるエリートを率いてスーパーマンに挑戦した男である。
そんなスーパーマンとは正反対の男は、今回の自殺的ミッションに向けてスーパーマンのために、リーグとは一味違うメンバーを集め、"オーソリティ"を結成する。

クラークはこの曲者ぞろいのメンバーとともに、ウォーワールドへと向かうのだ。
【ジョン・ケントの成長】
着々とウォーワールドへの潜入準備を進めるクラーク。
その様子を見ながら、息子のクラークは気が気ではなかった。
それは、今まで不死身と信じていた父の"老い"だけが理由ではない。
リージョン・オブ・スーパーヒーローズのメンバーとして、31世紀の未来で活動した際に、ジョンは知ってしまったのだ。
父スーパーマンの活動に関する記録は、ある時期を境に完全に消えることを、そしてその時期とはまさに今年であることを。

スーパーマンがどのような運命を辿ったのかは記録に残っていない。ただ近日中に父は歴史の表舞台から姿を消すのだ。
そのことを父に伝え、ウォーワールドへの潜入を見合わせるように懇願するジョン。
しかし、ジョンの言葉を聞いてもクラークの決心は揺るがない。
なぜなら未来に何が待っていようと、そこに助けを求める人々がいるのだから。

この時ジョンは、普通であれば誰しも幼いころにとっくに学んでいることを、ここに来て初めて学ぶ。
それは「自分の親は不死身の存在ではないこと」、そして「自分もいつの日か両親の庇護を失い、自らの手で人生を切り開いていかなければならないこと」。
そしてそのことに気が付いたとき、ジョンの少年期は遂に終わりを迎えたのだ……
*****************************
というわけで、今回は『ダークナイツ:デスメタル』終了後、いわゆる"インフィニットフロンティア期"のスーパーマンの状況を紹介してみました。
少しだけ補足すると、今回スーパーマンが結成したオーソリティは、元々はイメージコミックス社の人気ヒーローチーム。
今回のDC版チームには、オリジナルチームからは"ワイルドストーム版スーパーマン"と"ワイルドストーム版バットマン"である、アポロ&ミッドナイターが参戦しています。

お付き合いさせていただいているアメコミ仙人ロヒキアさんによれば、元々オーソリティはワイルドストーム世界におけるジャスティスリーグのパロディであるストームウォッチの裏部隊として結成され人気を博したチームで、そのオーソリティをDC側がパロディしたのがマンチェスター・ブラック率いるエリート。
今回、ジャスティスリーグの裏部隊として結成されたオーソリティを、マンチェスター・ブラックが組織するのは、2重3重にもオマージュが積み重なった結果と言えますね。
というわけで、クラーク・ケントたちは遂にウォーワールドへ向かうのですが、この戦いがどうなるのかについては、すでに答えが出ています。
その答えとは、DCが本作の開始前の発売した、『スーパーマン:ワールド・オブ・ウォー』です。

DC世界の"実現しなかった未来"を描いたイベント『フューチャーステイト』の一環として発売された本作は、スーパーマンのウォーワールドでの戦いと、スーパーマンを失った地球の様子を非常にエモーショナルな筆致で描く快作です。
管理人的には今年のベストに上げたい作品なので、また機会があればこちらのほうも紹介したいですね。
【宣伝】
今回紹介したのはここら辺の内容(リンクはキンドル版)
丁度#1029からライターが変わって新章スタートで、読み初めに丁度良い内容となっています。
また、先ほど"2021年のベスト"に上げさせてもらった『スーパーマン:ワールド・オブ・ウォー』は独立した作品なので、これだけ読むのもおすすめです。
続いて最近の翻訳ですが、マーベルは何といっても『ハウス・オブ・X/パワーズ・オブ・X』!
最近、アベンジャーズ系列に押され気味だったX-MENを、この1作でトップフランチャイズに返り咲かせた傑作なのでぜひ!
当ブログでの紹介記事はこのあたり。
また、マーベルのウルトラマンの第二作となる『ザ・トライアル・オブ・ウルトラマン』も翻訳決定。どうも契約の関係で再販がないらしいので、気になる方は早めにどうぞ。
他にも『オールニュー・キャプテン・アメリカ:ヒドラの逆襲(仮)』や『ドクター・ストレンジ:ゴッド・オブ・マジック』が翻訳決定。MCU様様です。
続いてDC関係では、DCリバース期クライマックスである『バットマン・デスメタル』の本編および短編集が翻訳。
DCの全ユニバースのヒーローとヴィランが一丸となって、DCユニバースの破壊を目論む存在と戦うという、とにかくスケールのでかい作品です。
短編が傑作ぞろいなので、そちらのほうもぜひ一緒に読んでください。
そしてアラン・ムーアによるクトゥルー神話『ネオノミコン』が翻訳。以前、発売直前になって企画がぽしゃった作品だけに個人的にうれしいタイトルですね。
(作:フィリップ・K・ジョンソン、画:ダニエル・サンピア他)
【スーパーマンの老い】
きっかけは簡単な事件であった。
STARSラボの実験の失敗により開いた次元の裂け目。この裂け目の中に飛び込んだスーパーマンは、見事裂け目を塞ぐ事に成功。かくしてこの世界は次元崩壊の危機を脱したのであった。

そしてそれはスーパーマンに取って、ありふれた日常的事件であった。
しかしこの事件はスーパーマンと彼を取り巻く世界に、大きな変化をもたらす。
この事件以降、スーパーマンが“老い”始めたのだ。

(スーパーマンの身体状態の検査をするバットマンとアトム)
異次元世界で曝された放射線のせいなのか、それとも単なる時期的な偶然なのかはわからない。ただ僅かに、だが確実に衰えていくスーパーマンの能力。
しかし、自身の衰えはクラークにとってスーパーマンとしての活動を控える理由にはならなかった。
クラークがスーパーマンとして活動している理由は、「自分が無敵の超人だから」ではなく、常に「そこに助けを求める人々がいるから」なのだから。
【ウォーワールドの難民】
そんなある日、スーパーマンは宇宙からやってきた難民の少女を保護する。
スーパーマンの宿敵モンガルの手下たちに追われながら、ボロボロの宇宙船で地球にやってきた少女。
彼女を助けたスーパーマンの目を惹いたもの。それは、鎖でぐるぐる巻きにされた彼女の手と、その手に焼き印されたエル家の紋章――スーパーマンの"S"の字であった。

彼女の名前はツァオ・ラ、モンガルが支配する機械惑星ウォーワールドのスラムで育った少女である。
宇宙一の暴君モンガルによる苛烈な支配の下で育った彼女には、幼い頃からのヒーローがいた。
そのヒーローとはスーパーマン。彼女の部族の語り部が語るスーパーマンの物語を、おとぎ話のように聞きながら育った彼女にとって「いつかスーパーマンが助けに来てくれる」と夢想する瞬間だけが、暴力によって虐げられるつらい現実を忘れられる時であったのだ。

「支配だけがこの世の全てであり、闘技場で相手を殺すたびモンガル本人から増やされる手枷の重さこそが自らの存在理由」というウォーワールドの歪んだ価値観。
その文化を生来のものと受け入れながら、それでもスーパーマンによる救いを願い続ける人々を知ったスーパーマンは、彼らを解放するためにウォーワールドとの戦いを決意する。

【ジャスティスリーグ脱退と新チーム結成】
奴隷の解放のための協力を求めるためにウォーワールドの惨状をジャスティスリーグに伝えるスーパーマン。

しかし、リーグのヒーローたちからは色よい返事は得られない。
地球には地球の問題が山積みであり、遠い世界の人々の苦境にたとえ心を痛めたとしても、彼らを救っている暇や余裕はないのだ。
それは確かに妥当な判断なのかもしれない。しかしクラークは、そこに確かに存在し助けを求めている人々を見捨てることはできなかった。
かくしてクラークはリーグを脱退。ウォーワールドの人々を救うため、独自のチームを結成することを決意する。
そしてクラークが新チームのメンバー集めを任せたのは、意外な男であった。

男の名前はマンチェスター・ブラック。かつて、ジャスティスリーグを"オジサン向けのヒーロー"と切って捨て、新しい"過激なチーム"であるエリートを率いてスーパーマンに挑戦した男である。
そんなスーパーマンとは正反対の男は、今回の自殺的ミッションに向けてスーパーマンのために、リーグとは一味違うメンバーを集め、"オーソリティ"を結成する。

クラークはこの曲者ぞろいのメンバーとともに、ウォーワールドへと向かうのだ。
【ジョン・ケントの成長】
着々とウォーワールドへの潜入準備を進めるクラーク。
その様子を見ながら、息子のクラークは気が気ではなかった。
それは、今まで不死身と信じていた父の"老い"だけが理由ではない。
リージョン・オブ・スーパーヒーローズのメンバーとして、31世紀の未来で活動した際に、ジョンは知ってしまったのだ。
父スーパーマンの活動に関する記録は、ある時期を境に完全に消えることを、そしてその時期とはまさに今年であることを。

スーパーマンがどのような運命を辿ったのかは記録に残っていない。ただ近日中に父は歴史の表舞台から姿を消すのだ。
そのことを父に伝え、ウォーワールドへの潜入を見合わせるように懇願するジョン。
しかし、ジョンの言葉を聞いてもクラークの決心は揺るがない。
なぜなら未来に何が待っていようと、そこに助けを求める人々がいるのだから。

この時ジョンは、普通であれば誰しも幼いころにとっくに学んでいることを、ここに来て初めて学ぶ。
それは「自分の親は不死身の存在ではないこと」、そして「自分もいつの日か両親の庇護を失い、自らの手で人生を切り開いていかなければならないこと」。
そしてそのことに気が付いたとき、ジョンの少年期は遂に終わりを迎えたのだ……
*****************************
というわけで、今回は『ダークナイツ:デスメタル』終了後、いわゆる"インフィニットフロンティア期"のスーパーマンの状況を紹介してみました。
少しだけ補足すると、今回スーパーマンが結成したオーソリティは、元々はイメージコミックス社の人気ヒーローチーム。
今回のDC版チームには、オリジナルチームからは"ワイルドストーム版スーパーマン"と"ワイルドストーム版バットマン"である、アポロ&ミッドナイターが参戦しています。

お付き合いさせていただいているアメコミ仙人ロヒキアさんによれば、元々オーソリティはワイルドストーム世界におけるジャスティスリーグのパロディであるストームウォッチの裏部隊として結成され人気を博したチームで、そのオーソリティをDC側がパロディしたのがマンチェスター・ブラック率いるエリート。
今回、ジャスティスリーグの裏部隊として結成されたオーソリティを、マンチェスター・ブラックが組織するのは、2重3重にもオマージュが積み重なった結果と言えますね。
というわけで、クラーク・ケントたちは遂にウォーワールドへ向かうのですが、この戦いがどうなるのかについては、すでに答えが出ています。
その答えとは、DCが本作の開始前の発売した、『スーパーマン:ワールド・オブ・ウォー』です。

DC世界の"実現しなかった未来"を描いたイベント『フューチャーステイト』の一環として発売された本作は、スーパーマンのウォーワールドでの戦いと、スーパーマンを失った地球の様子を非常にエモーショナルな筆致で描く快作です。
管理人的には今年のベストに上げたい作品なので、また機会があればこちらのほうも紹介したいですね。
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今回紹介したのはここら辺の内容(リンクはキンドル版)
丁度#1029からライターが変わって新章スタートで、読み初めに丁度良い内容となっています。
また、先ほど"2021年のベスト"に上げさせてもらった『スーパーマン:ワールド・オブ・ウォー』は独立した作品なので、これだけ読むのもおすすめです。
続いて最近の翻訳ですが、マーベルは何といっても『ハウス・オブ・X/パワーズ・オブ・X』!
最近、アベンジャーズ系列に押され気味だったX-MENを、この1作でトップフランチャイズに返り咲かせた傑作なのでぜひ!
当ブログでの紹介記事はこのあたり。
また、マーベルのウルトラマンの第二作となる『ザ・トライアル・オブ・ウルトラマン』も翻訳決定。どうも契約の関係で再販がないらしいので、気になる方は早めにどうぞ。
他にも『オールニュー・キャプテン・アメリカ:ヒドラの逆襲(仮)』や『ドクター・ストレンジ:ゴッド・オブ・マジック』が翻訳決定。MCU様様です。
続いてDC関係では、DCリバース期クライマックスである『バットマン・デスメタル』の本編および短編集が翻訳。
DCの全ユニバースのヒーローとヴィランが一丸となって、DCユニバースの破壊を目論む存在と戦うという、とにかくスケールのでかい作品です。
短編が傑作ぞろいなので、そちらのほうもぜひ一緒に読んでください。
そしてアラン・ムーアによるクトゥルー神話『ネオノミコン』が翻訳。以前、発売直前になって企画がぽしゃった作品だけに個人的にうれしいタイトルですね。
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