ソー #9-10
ソー #9-10
(作:ドニー・ケイツ、画:ニック・クレイン)
【ドナルド・ブレイクの休日】

ドナルド・ブレイク医師は、日課の散歩を楽しんでいた。

空は澄み渡り、太陽の日が優しく降り注ぐ住宅地。
隣人たちはドナルド・ブレイクを尊敬し、散歩中の彼を見つけると陽気に声をかける。
永遠に続くかのような安らぎのなか、ブレイクは今日も完璧な町を歩き続ける……
【ソーの基本設定の振り返り】
足の不自由な医師として人々を救い続けるドナルド・ブレイク。しかしそれは、乱暴者の雷神に腕力に依らない"強さ"を学ばせるため、オーディンが与えた仮の姿であった。
ひとたび事件が発生したならば、ブレイク医師は魔法の杖で地面に打ち鳴らし、無敵の雷神の人格を解放。マイティ・ソーとして人々を救うために飛び立つのだ!

…しかし、そうなると1つの疑問がわいてくる。
「ソーの人格が解放されているとき、ブレイク医師の人格はどうなってしまうのか?」
その答えこそが、ドナルド・ブレイクが散歩する"完璧な町"であった。
オーディンは、ドナルド・ブレイクに報いるため、ソーが現実世界で活躍する間に彼が魂を休める理想郷を創り給うたのだ。
しかし、そんなブレイク医師と雷神ソーの2重生活は遠い過去のものとなった。
いまや、ソーの事を"乱暴者"となど思うものはどこにもいない。オーディンの試みは成功し、ソーは慈愛と勇気に満ちた立派な神へと成長。父の地位を継ぎ、十世界の全てを護るアスガルドの主神となったのだ。
【ドナルド・ブレイクの休日、その後】

ソーがドナルド・ブレイクの姿を必要としなくなってから長い月日がたった。
永遠に陰ることのない太陽の下で、終わりのない住宅地をさまよい続けるブレイク医師は、やがて気が付く。
この世界は理想郷などではなく、彼を閉じ込める無間地獄であることに。

永遠に続く彷徨の中で、ゆっくりと正気を失っていくブレイク医師。
そんな彼に、チャンスが訪れる。
とある事情によりソーが再び、ブレイク医師の人格を現世に呼び出したのだ。

十数年ぶりに現実世界に戻ったブレイク医師は、ソーに変身するための魔法の杖を叩き折り、彼に偽りの生命と地獄を与えたアスガルドの全てに対する復讐を開始する。
そして、そんな彼が最初に向かった先は、ブレイク医師のかつての同僚であり恋人であった女性、"先代ソー"ジェーン・フォスターの下であった…

******************************
というわけで、今回は現在のマーベルの看板ライター、ドニー・ケイツによる『ソー』の紹介でした。
今回、悪役として復活を果たしたドナルド・ブレイクは、上述の通り、ソーの"世を忍ぶ仮の姿"。アメコミ用語でいえば"シークレットアイデンティティ"というべき存在です。
歴史的な話をすると、ソーが登場した当時は、ヒーローといえば誰もがこのシークレットアイデンティティを持っているものでした。
そして、クラーク・ケントが臆病な田舎者の新聞記者、ブルース・ウェインが責任感のないプレイボーイであったように、シークレットアイデンティティとは、ヒーローの時の姿とは似ても似つかない、少し情けない性格であることもまたお約束でした。
ドナルド・ブレイクも同様で、危険が起きるとすぐに逃げ出してしまうブレイク医師は、その臆病さを度々ソーと比較されては、ヒロインであるジェーンから呆れられる存在だったのです。
(ここら辺、スーパーマン→ロイス・レーン→クラーク・ケントの疑似三角関係とほぼ同じ構図ですね)

しかし時代が進むにつれて、「ヒーローの正体を隠すための少し情けない隠れ蓑」としてのシークレットアイデンティティは次第に流行らなくなり、ヒーローたちも、ある者は表の顔でもより良い世界の実現のためにまい進したり、またある者は正体を公表したりと、昔ながらのシークレットアイデンティティを捨て始めたのです。
そして、そんな流れの中でソーもまた、ドナルド・ブレイクとしてのアイデンティティを使うことはなくなり、その名前が語られることも滅多になくなってきていたのです。
そんなドナルド・ブレイクの復活劇となった本作。
ライターが、いまやマーベルのトップライターとなったドニー・ケイツが担当していることもあり、今後の展開が非常に楽しみな作品でもあるので、気になった方は是非!
【宣伝】
今回、紹介したドニー・ケイツの『ソー』のTPBはこちら。
今回の紹介分は、2巻の冒頭にあたります。
また、本文では触れませんでしたが、ドニー・ケイツのソーは今後「サノスが全てのヒーローたちに勝利した世界」を描いた『サノス・ウィンズ』の内容と絡んできそうな雰囲気です。
こちらは邦訳があるので、予習したい方は併せてどうぞ。
マーベルからは、今回紹介した作品と同じライターによる『アブソリュート・カーネイジ』が翻訳予定。こちらは先日完結した大型イベント『キング・イン・ブラック』へと繋がる物語となっています。
またドラマの興奮が冷めやらぬ中、『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』も5月に発売予定。
またコミックではありませんが、画集『マーベル・コミックス 特別版カバーアート集』が刊行予定。
こちらは、アメコミの華、ヴァリアントカバーをテーマにした画集となり、マーベルが過去に刊行したヴァリアントカバーをその制作秘話と共に収録する内容となっています。
続いて、DC関係では『バットマン:スリー・ジョーカーズ』が5月に発売!
「この世界にはジョーカーは3人いる」という衝撃の暴露を受けての作品となりますが、物語はジェイソン・トッドとバットガールがジョーカーから受けた心の傷を巡る、非常に内面的な方向に… DCファンは必見の内容なのでぜひ!
そしてジョーカー絡みのもう1冊が『バットマン:ジョーカー・ウォー』。
最新のバットマン系列誌のクロスオーバー作品となり、現行のバットマンを取り巻く状況は、全てこの作品に端を発していますので、現行を追いかけるつもりの方にもおすすめです。
最後に個人的に嬉しいのが『スーサイド・スクワッド:バッド・ブラッド(仮)』の邦訳。当ブログでも紹介させてもらいましたが、近年のDC作品の中でも屈指の面白さの作品です(ちなみにライターは、現在のDCの看板ライターの1人トム・タイラー)
(作:ドニー・ケイツ、画:ニック・クレイン)
【ドナルド・ブレイクの休日】

ドナルド・ブレイク医師は、日課の散歩を楽しんでいた。

空は澄み渡り、太陽の日が優しく降り注ぐ住宅地。
隣人たちはドナルド・ブレイクを尊敬し、散歩中の彼を見つけると陽気に声をかける。
永遠に続くかのような安らぎのなか、ブレイクは今日も完璧な町を歩き続ける……
【ソーの基本設定の振り返り】
足の不自由な医師として人々を救い続けるドナルド・ブレイク。しかしそれは、乱暴者の雷神に腕力に依らない"強さ"を学ばせるため、オーディンが与えた仮の姿であった。
ひとたび事件が発生したならば、ブレイク医師は魔法の杖で地面に打ち鳴らし、無敵の雷神の人格を解放。マイティ・ソーとして人々を救うために飛び立つのだ!

…しかし、そうなると1つの疑問がわいてくる。
「ソーの人格が解放されているとき、ブレイク医師の人格はどうなってしまうのか?」
その答えこそが、ドナルド・ブレイクが散歩する"完璧な町"であった。
オーディンは、ドナルド・ブレイクに報いるため、ソーが現実世界で活躍する間に彼が魂を休める理想郷を創り給うたのだ。
しかし、そんなブレイク医師と雷神ソーの2重生活は遠い過去のものとなった。
いまや、ソーの事を"乱暴者"となど思うものはどこにもいない。オーディンの試みは成功し、ソーは慈愛と勇気に満ちた立派な神へと成長。父の地位を継ぎ、十世界の全てを護るアスガルドの主神となったのだ。
【ドナルド・ブレイクの休日、その後】

ソーがドナルド・ブレイクの姿を必要としなくなってから長い月日がたった。
永遠に陰ることのない太陽の下で、終わりのない住宅地をさまよい続けるブレイク医師は、やがて気が付く。
この世界は理想郷などではなく、彼を閉じ込める無間地獄であることに。

永遠に続く彷徨の中で、ゆっくりと正気を失っていくブレイク医師。
そんな彼に、チャンスが訪れる。
とある事情によりソーが再び、ブレイク医師の人格を現世に呼び出したのだ。

十数年ぶりに現実世界に戻ったブレイク医師は、ソーに変身するための魔法の杖を叩き折り、彼に偽りの生命と地獄を与えたアスガルドの全てに対する復讐を開始する。
そして、そんな彼が最初に向かった先は、ブレイク医師のかつての同僚であり恋人であった女性、"先代ソー"ジェーン・フォスターの下であった…

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というわけで、今回は現在のマーベルの看板ライター、ドニー・ケイツによる『ソー』の紹介でした。
今回、悪役として復活を果たしたドナルド・ブレイクは、上述の通り、ソーの"世を忍ぶ仮の姿"。アメコミ用語でいえば"シークレットアイデンティティ"というべき存在です。
歴史的な話をすると、ソーが登場した当時は、ヒーローといえば誰もがこのシークレットアイデンティティを持っているものでした。
そして、クラーク・ケントが臆病な田舎者の新聞記者、ブルース・ウェインが責任感のないプレイボーイであったように、シークレットアイデンティティとは、ヒーローの時の姿とは似ても似つかない、少し情けない性格であることもまたお約束でした。
ドナルド・ブレイクも同様で、危険が起きるとすぐに逃げ出してしまうブレイク医師は、その臆病さを度々ソーと比較されては、ヒロインであるジェーンから呆れられる存在だったのです。
(ここら辺、スーパーマン→ロイス・レーン→クラーク・ケントの疑似三角関係とほぼ同じ構図ですね)

しかし時代が進むにつれて、「ヒーローの正体を隠すための少し情けない隠れ蓑」としてのシークレットアイデンティティは次第に流行らなくなり、ヒーローたちも、ある者は表の顔でもより良い世界の実現のためにまい進したり、またある者は正体を公表したりと、昔ながらのシークレットアイデンティティを捨て始めたのです。
そして、そんな流れの中でソーもまた、ドナルド・ブレイクとしてのアイデンティティを使うことはなくなり、その名前が語られることも滅多になくなってきていたのです。
そんなドナルド・ブレイクの復活劇となった本作。
ライターが、いまやマーベルのトップライターとなったドニー・ケイツが担当していることもあり、今後の展開が非常に楽しみな作品でもあるので、気になった方は是非!
【宣伝】
今回、紹介したドニー・ケイツの『ソー』のTPBはこちら。
今回の紹介分は、2巻の冒頭にあたります。
また、本文では触れませんでしたが、ドニー・ケイツのソーは今後「サノスが全てのヒーローたちに勝利した世界」を描いた『サノス・ウィンズ』の内容と絡んできそうな雰囲気です。
こちらは邦訳があるので、予習したい方は併せてどうぞ。
マーベルからは、今回紹介した作品と同じライターによる『アブソリュート・カーネイジ』が翻訳予定。こちらは先日完結した大型イベント『キング・イン・ブラック』へと繋がる物語となっています。
またドラマの興奮が冷めやらぬ中、『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』も5月に発売予定。
またコミックではありませんが、画集『マーベル・コミックス 特別版カバーアート集』が刊行予定。
こちらは、アメコミの華、ヴァリアントカバーをテーマにした画集となり、マーベルが過去に刊行したヴァリアントカバーをその制作秘話と共に収録する内容となっています。
続いて、DC関係では『バットマン:スリー・ジョーカーズ』が5月に発売!
「この世界にはジョーカーは3人いる」という衝撃の暴露を受けての作品となりますが、物語はジェイソン・トッドとバットガールがジョーカーから受けた心の傷を巡る、非常に内面的な方向に… DCファンは必見の内容なのでぜひ!
そしてジョーカー絡みのもう1冊が『バットマン:ジョーカー・ウォー』。
最新のバットマン系列誌のクロスオーバー作品となり、現行のバットマンを取り巻く状況は、全てこの作品に端を発していますので、現行を追いかけるつもりの方にもおすすめです。
最後に個人的に嬉しいのが『スーサイド・スクワッド:バッド・ブラッド(仮)』の邦訳。当ブログでも紹介させてもらいましたが、近年のDC作品の中でも屈指の面白さの作品です(ちなみにライターは、現在のDCの看板ライターの1人トム・タイラー)
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