クロスオーバー#1
クロスオーバー#1
(作:ドニー・ケイツ、画:ジェフ・ショウ)
【序文】
コミックブックの世界は、強者/冷血漢/嘘つき/詐欺師たちが幅を効かせる世界であり、そこでは人間の尊厳や高潔さが顧みられることはない。(フレデリック・ワーサム『無垢への誘惑』)
子供は鎖とかが超好き。(トッド・マクファーレン)
【クロスオーバー】
2017年、コロラド州デンバーは地獄と化した。
我々の世界が、ヒーローコミックの夏の大型イベントのタイインとなったのだ。

後に"イベント"や"クロスオーバー"と呼ばれることとなるその日、蝙蝠の扮装をした男や、ハンマーを持った神など、我々がアメコミの中で慣れ親しんだヒーローたちがデンバーに現れ、ヴィランたちとの最終決戦を繰り広げた。
重要ではない人々の犠牲が全てページの外で行われるコミックと異なり、市民の被害は甚大なものとなった。
そしておそらくはヒーローたちの中に、この"アース"の住人に被害が拡散することを重く見た者がいたのであろう。混乱極まるデンバーの街は何者かが張ったと思われる謎のフォースフィールドに覆われ隔離される。

それから数年の月日がたったが、デンバーはそのままである。
今でも街では絶え間ない戦いや破壊が続いているに違いない、真実やら正義やら、そういった諸々の名の下で……
(というわけで、今回はイメージコミックスで始まったドニー・ケイツの『クロスオーバー』を、登場人物を中心に紹介していきます。)
【エリプセス】
本作の主人公の1人。通称エリ。

本名であるエリプセスは"…"を意味する単語で、少々エキセントリックな両親が「娘の前に広がる無限の可能性」を願って付けた。
彼女は、コロラド州にあるコミックショップでコスプレ店員として働いている。
しかし、クロスオーバーの日を境に、事件の原因となったヒーロー物のコミックは文字通り"悪魔の書"として忌み嫌われるようになり、DCもマーベルもヒーローコミックの出版を停止。両社とも今では政府の検閲の下で西部劇や刑事物などのコミックを出版している。

そんな中、エリの勤めるコミックショップは焚書を逃れたヒーローコミックの古本を扱うアメリカ唯一の店となり、店の周りにはプラカードを持った宗教家やPTAなどが常に取り囲んでいる。
【オットー】
エリが働くコミックショップの店長。

ヒーローコミックを出版しなくなったことを指して「DCとマーベルは死んだ!」と公言するほどのヒーローオタク。
世界中がヒーローコミックを恐れ攻撃する中、敢えて「ワーサムは正しかった!」と書かれたTシャツを着てヒーローコミックを売る、歪んだユーモアセンスの持ち主。
※フレデリック・ワーサムは、悪名高きヒーローコミック排斥運動の切っ掛けを造った医者。
そんなある日、オットーは店内で怪しげな動きを見せる少女を見つける。

万引きだと勘違いし、少女を取り押さえるオットー。
目深にかぶったフードが取れ、少女の顔があらわになった時、オットーは言葉を失う。

彼女の肌に浮かぶ画質の荒いカラードット。そう、彼女はただの少女ではない。コミック世界の住人であったのだ!
コミックのキャラクターの登場により、パニックとなる店内。
当たり前である、少女がコミック世界の住人であるということは、彼女は超人である可能性がある。
よしんば超人ではなかったとしても、ひょんなきっかけで能力に目覚める可能性があるのだ。
オットー:エリ、警察を呼べ。「架空のキャラが現れた」って!
狼狽するオットーを、エリは嗜める。

エリ:彼女は架空のキャラじゃない。小さな子供よ。
ごめんね、怖がらせて。
私はエリ。アナタはどこから来たの?
少女:ごめんなさい。あの…男の人が壁の中から逃がしてくれて…
でも、両親はまだ壁の中で…
エリ:そうあなたのパパとママはドームの中にいるのね。私も一緒。"イベント"の日、私だけはデンバーから避難できたんだけど、両親は逃げ遅れちゃって。
少女を落ち着かせるために、ゆっくりと彼女から言葉を引き出すエリ。
エリ:それで、あなたを逃がしてくれた"男の人"ってどんな人なの?
少女:ごめんなさい。名前を聞く時間もなくって……あっ!でもどんな人だったか、画でなら描けます!
そういうと鉛筆を走らせ始める少女。
少女が描いた似顔絵を見て、エリとオットーは言葉を失う。
なぜならそこに描かれていたのは…

************************
というわけで、今回はイメージコミックスの『クロスオーバー』の紹介でした。
上記の通り、「現実世界がアメコミの大型イベントのタイインとなってしまう」という大技で始まった本作。
序文からも分かる通り、1950年代に盛り上がったコミック排斥運動のパロディとして、コミックが実際に人々に悪影響を及ぼす世界を舞台としたSF作品となります。
イメージコミックスから出版されている作品ですが、エリたちが作中で語るアメコミヒーローたちは"よく似た別キャラ"ではなく、我々が慣れ親しんだヒーローそのもの。

(ちなみに#2で登場する架空キャラ収容所はこんな感じ。詳細は割愛しますがスポーン#10のオマージュになってます)
これからどこまで他社のキャラクターが登場するのかは分かりませんが、アメコミオタクあるあるな描写も多い愉快な作品ですので、今後が楽しみですね。
【宣伝】(使いまわし)
最近の翻訳本ですが、米国での大ヒットをうけすっかり"ホワイトナイト・ユニバース"を形成しつつある『バットマン:ホワイトナイト』の続編である『バットマン:カース・オブ・ホワイトナイト』が1月に発売。今回はアズラエルやバットガールが登場!!
そして現在のDC正史世界の旗艦タイトルであるジャスティス・リーグ誌関連では、そのクライマックスである『ジャスティス・リーグ:ドゥーム・ウォー』が発売。『ダークナイツ:デスメタル』へと繋がる重要タイトルでDC世界の未来と過去のヒーローたちが集結するさまは一見の価値あり。
そして先日発表された嬉しいサプライズが『ゴッサム・セントラル』の翻訳。なんの特殊能力も持たず、職業的倫理観だけに突き動かされてゴッサムの狂人たちと戦うゴッサム市警の活躍を描いた本作。グレッグ・ルッカ(ワンダーウーマン)や、ブルベイカー(ウィンターソルジャー)といったハードボイルドな作風で知られる人気ライターが手掛け、非常に高評価な作品なのですが、とにかく地味なタイトルであるのでまさか翻訳されるとは。
また嬉しいサプライズといえばマーベルの『スーペリア・フォー・オブ・スパイダーマン1』。シニスターシックスを名乗る5人組のC級ヴィランたちが、マーベルユニバースの底辺で繰り広げるドタバタ劇がまさかの翻訳です。その評判だけ聞いていつか手を出したいと思っていた本作が日本語で読めるとあって、管理人はすぐさま予約しました。
またマーベルからは『チャンピオンズ:チェンジ・ザ・ワールド』と『ウエスト・コースト・アベンジャーズ:ベスト・コースト』の翻訳も発表。前者はカマラ・カーン(Ms.マーベル)やマイルス・モラレス(スパイダーマン)、後者はケイト・ビショップ(ホークアイ)やグウェンプールを中心とした、若手ヒーローたちのチーム誌。明るいキャラ同士の掛け合いが魅力のタイトルですので、そういうのが好きな方は是非!
(作:ドニー・ケイツ、画:ジェフ・ショウ)
【序文】
コミックブックの世界は、強者/冷血漢/嘘つき/詐欺師たちが幅を効かせる世界であり、そこでは人間の尊厳や高潔さが顧みられることはない。(フレデリック・ワーサム『無垢への誘惑』)
子供は鎖とかが超好き。(トッド・マクファーレン)
【クロスオーバー】
2017年、コロラド州デンバーは地獄と化した。
我々の世界が、ヒーローコミックの夏の大型イベントのタイインとなったのだ。

後に"イベント"や"クロスオーバー"と呼ばれることとなるその日、蝙蝠の扮装をした男や、ハンマーを持った神など、我々がアメコミの中で慣れ親しんだヒーローたちがデンバーに現れ、ヴィランたちとの最終決戦を繰り広げた。
重要ではない人々の犠牲が全てページの外で行われるコミックと異なり、市民の被害は甚大なものとなった。
そしておそらくはヒーローたちの中に、この"アース"の住人に被害が拡散することを重く見た者がいたのであろう。混乱極まるデンバーの街は何者かが張ったと思われる謎のフォースフィールドに覆われ隔離される。

それから数年の月日がたったが、デンバーはそのままである。
今でも街では絶え間ない戦いや破壊が続いているに違いない、真実やら正義やら、そういった諸々の名の下で……
(というわけで、今回はイメージコミックスで始まったドニー・ケイツの『クロスオーバー』を、登場人物を中心に紹介していきます。)
【エリプセス】
本作の主人公の1人。通称エリ。

本名であるエリプセスは"…"を意味する単語で、少々エキセントリックな両親が「娘の前に広がる無限の可能性」を願って付けた。
彼女は、コロラド州にあるコミックショップでコスプレ店員として働いている。
しかし、クロスオーバーの日を境に、事件の原因となったヒーロー物のコミックは文字通り"悪魔の書"として忌み嫌われるようになり、DCもマーベルもヒーローコミックの出版を停止。両社とも今では政府の検閲の下で西部劇や刑事物などのコミックを出版している。

そんな中、エリの勤めるコミックショップは焚書を逃れたヒーローコミックの古本を扱うアメリカ唯一の店となり、店の周りにはプラカードを持った宗教家やPTAなどが常に取り囲んでいる。
【オットー】
エリが働くコミックショップの店長。

ヒーローコミックを出版しなくなったことを指して「DCとマーベルは死んだ!」と公言するほどのヒーローオタク。
世界中がヒーローコミックを恐れ攻撃する中、敢えて「ワーサムは正しかった!」と書かれたTシャツを着てヒーローコミックを売る、歪んだユーモアセンスの持ち主。
※フレデリック・ワーサムは、悪名高きヒーローコミック排斥運動の切っ掛けを造った医者。
そんなある日、オットーは店内で怪しげな動きを見せる少女を見つける。

万引きだと勘違いし、少女を取り押さえるオットー。
目深にかぶったフードが取れ、少女の顔があらわになった時、オットーは言葉を失う。

彼女の肌に浮かぶ画質の荒いカラードット。そう、彼女はただの少女ではない。コミック世界の住人であったのだ!
コミックのキャラクターの登場により、パニックとなる店内。
当たり前である、少女がコミック世界の住人であるということは、彼女は超人である可能性がある。
よしんば超人ではなかったとしても、ひょんなきっかけで能力に目覚める可能性があるのだ。
オットー:エリ、警察を呼べ。「架空のキャラが現れた」って!
狼狽するオットーを、エリは嗜める。

エリ:彼女は架空のキャラじゃない。小さな子供よ。
ごめんね、怖がらせて。
私はエリ。アナタはどこから来たの?
少女:ごめんなさい。あの…男の人が壁の中から逃がしてくれて…
でも、両親はまだ壁の中で…
エリ:そうあなたのパパとママはドームの中にいるのね。私も一緒。"イベント"の日、私だけはデンバーから避難できたんだけど、両親は逃げ遅れちゃって。
少女を落ち着かせるために、ゆっくりと彼女から言葉を引き出すエリ。
エリ:それで、あなたを逃がしてくれた"男の人"ってどんな人なの?
少女:ごめんなさい。名前を聞く時間もなくって……あっ!でもどんな人だったか、画でなら描けます!
そういうと鉛筆を走らせ始める少女。
少女が描いた似顔絵を見て、エリとオットーは言葉を失う。
なぜならそこに描かれていたのは…

************************
というわけで、今回はイメージコミックスの『クロスオーバー』の紹介でした。
上記の通り、「現実世界がアメコミの大型イベントのタイインとなってしまう」という大技で始まった本作。
序文からも分かる通り、1950年代に盛り上がったコミック排斥運動のパロディとして、コミックが実際に人々に悪影響を及ぼす世界を舞台としたSF作品となります。
イメージコミックスから出版されている作品ですが、エリたちが作中で語るアメコミヒーローたちは"よく似た別キャラ"ではなく、我々が慣れ親しんだヒーローそのもの。

(ちなみに#2で登場する架空キャラ収容所はこんな感じ。詳細は割愛しますがスポーン#10のオマージュになってます)
これからどこまで他社のキャラクターが登場するのかは分かりませんが、アメコミオタクあるあるな描写も多い愉快な作品ですので、今後が楽しみですね。
【宣伝】(使いまわし)
最近の翻訳本ですが、米国での大ヒットをうけすっかり"ホワイトナイト・ユニバース"を形成しつつある『バットマン:ホワイトナイト』の続編である『バットマン:カース・オブ・ホワイトナイト』が1月に発売。今回はアズラエルやバットガールが登場!!
そして現在のDC正史世界の旗艦タイトルであるジャスティス・リーグ誌関連では、そのクライマックスである『ジャスティス・リーグ:ドゥーム・ウォー』が発売。『ダークナイツ:デスメタル』へと繋がる重要タイトルでDC世界の未来と過去のヒーローたちが集結するさまは一見の価値あり。
そして先日発表された嬉しいサプライズが『ゴッサム・セントラル』の翻訳。なんの特殊能力も持たず、職業的倫理観だけに突き動かされてゴッサムの狂人たちと戦うゴッサム市警の活躍を描いた本作。グレッグ・ルッカ(ワンダーウーマン)や、ブルベイカー(ウィンターソルジャー)といったハードボイルドな作風で知られる人気ライターが手掛け、非常に高評価な作品なのですが、とにかく地味なタイトルであるのでまさか翻訳されるとは。
また嬉しいサプライズといえばマーベルの『スーペリア・フォー・オブ・スパイダーマン1』。シニスターシックスを名乗る5人組のC級ヴィランたちが、マーベルユニバースの底辺で繰り広げるドタバタ劇がまさかの翻訳です。その評判だけ聞いていつか手を出したいと思っていた本作が日本語で読めるとあって、管理人はすぐさま予約しました。
またマーベルからは『チャンピオンズ:チェンジ・ザ・ワールド』と『ウエスト・コースト・アベンジャーズ:ベスト・コースト』の翻訳も発表。前者はカマラ・カーン(Ms.マーベル)やマイルス・モラレス(スパイダーマン)、後者はケイト・ビショップ(ホークアイ)やグウェンプールを中心とした、若手ヒーローたちのチーム誌。明るいキャラ同士の掛け合いが魅力のタイトルですので、そういうのが好きな方は是非!
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