DCの次なるクライシスと"究極の年表"について
今回はいつもと趣向を変えて、現在のDC世界に立ち込めるある噂について語ろうかと思います。
その噂とは、ずばり"次なるクライシス"。

『クライシス・オン・インフィニティ・アースズ』、『インフィニット・クライシス』、『フラッシュポイント』…
DC世界の節目節目で発生し、その宇宙観や歴史と共にキャラクター設定さえ根底から覆すようなイベントを指して"クライシス"と呼ぶのはDCの伝統ですが、2020年に新たなクライシスが到来しようとしています。
本記事では、この"クライシス"について現在わかっている内容を、管理人による想像も交えながら予想していきたいと思います。
【クライシスの到来とダークマルチバース】
まずそもそも「本当に来年クライシスをやるの?」という疑問ですが、これにははっきり「やります」と答えることが出来ます。
そもそもの話、以前からコミコンのパネルやWebメディアのインタビューなどで、度々「現行のジャスティスリーグ誌で展開している『イヤー・オブ・ザ・ヴィラン』に続く展開として、DC史上類をみない規模の展開をやる」と言われてきました。
しかし、クライシス到来の根拠はそれだけではありません。
遂に、作中でも到来が予告されたのです。

予告した人物はこちら、テンパス・フュージノート。
なじみのない方も多いかもしれませんが、『ダークナイツ:メタル』の後に登場した。ダークマルチバースの監視者です。
全ての恐怖と妄想が実現する可能性の領域であるダークマルチバースを日夜監視する使命を持った彼は、「DC世界の歴史上の大事件が最悪な方向に進んでいたら?」を探る連作短編集『テイル・フロム・ダークマルチバース』の一遍で、こう語っています。
テンパス:クライシスがくる……おそらく過去最大級のそれが。これを切り抜けるために、この世界は強くあらねばならない。
そしてクライシスの到来を察知した彼は、2つの行動を始めます。
1つ目は、文字通り無限の可能性を秘めたダークマルチバースの世界を渡り、来るクライシスに立ち向かう術を探ること。
その探索の様子は先ほども名前を挙げた連作短編集『テイル・フロム・ダークマルチバース』で描かれています。

(こちらは「もしも背骨の損傷から回復したブルース・ウェインが、アズラエルからバットマンの名を取り戻すことに失敗していたら?」を描いた『テイル・フロム・ダークマルチバース:ナイトフォール』の表紙)

そしてテンパスの2つ目の行動は、クライシスの到来と共に謎の暴走を見せ始めたダークマルチバースからこの世界を護るため、"世界最速だった男"ウォーリー・ウエストをテンパスのエージェントとして選び出すことでした。
また、ダークマルチバース関連して暗躍をしているのは、テンパスだけではありません。

"ダークマルチバースの化身"とも言えるような男、嗤うバットマンもまた、『バットマン/スーパーマン』誌で活動を再開。
正史世界のヒーローたち6人を密かに"ダークマルチバース化"。
独自の私兵集団であるシークレットシックスを結成し、何らかの計画を侵攻しているのです。
【究極の年表】
というわけで、クライシスの到来は正式に予告され、それにはダークマルチバースが重要な役割を果たすことが提示されたわけですが、今回のクライシスを読み解くうえでもう一つ欠かせないキーワードがあります。
そのキーワードとは"歴史"。
先日開催されたニューヨークコミコンのパネルにて、DCの編集長は「今後の展開を前に、現在、我々はDC世界の"究極の年表"を作り上げようとしている」として、1枚の巨大な年表をスクリーンに投影しました。

会場に比して非常に細かい字で書かれており、初めから来場者に詳細を読ませること狙っていないことが明白なこの年表ですが、そこからはDC世界の歴史は、
・ワンダーウーマンが世界最初のヒーローとして人間社会にやってきたところから始まる1G(1st Generation)、
・スーパーマンのデビューから始まる2G、
・『クライシス・オン・インフィニティ・アースズ』から『フラッシュポイント』までが起こったクライシスの時代3G、
・現在我々が読んでいる時代である4G、
の4つの時代に分けられることがわかります。
また先日、DCのTwitterアカウントがリーク画像の体でツイートした画像からは、この年表の具体的な構成と、1Gの様子がみてとれます。

それによれば、セミッシラから人間界にやってきたワンダーウーマンは、その後JSAと共に、第二次世界大戦に参戦。
しかし、原爆の投下を理由に人間界に見切りをつけた彼女は、再びセミッシラに引き籠ることになったとのこと。
しかし、ここで注目すべきは「ワンダーウーマンがDC世界の最初のヒーロー」という新設定ではなく、「クラーク・ケントもブルース・ウェインも第2次世界大戦の終戦前に既に生まれていること」ではないでしょうか?
一見、1940年代に既に生まれていたバットマンやスーパーマンが、現在(年表で言えば4Gの時代)も現役で活躍しているのは、設定的に破綻しているようにも見えます。
しかし思い出してください、上記の通り3Gとは「クライシスの時代」であり、実際に年表には『フラッシュポイント』などの歴史改変イベントがはっきりと記載されていることを。
つまりは、この"究極の年表"とは、クライシスによる歴史改変自体が歴史上の事件に含まれたいわばメタ年表なのです。
そう考えれば、戦中生まれのバットマンが、今も元気にジャスティスリーグに参加していることは何ら不思議ではありません。
途中歴史は改変され、彼らは新しいスタートを切ったのですから。
ちょっと横道気味でしたが、いずれにせよ次のクライシスでは、この"究極の年表"とDCの過去の歴史の復活が、ダークマルチバースと並んで重要な要素となることは間違いないでしょう。
そして、その予兆は既に刊行中の様々なコミックに現れてきているのです。
以降のパラグラフではその予兆を一つ一つ追っていくことにしましょう。
【フラッシュポイント前を思い出し始めたヒーローたち】
ウォーリー・ウエストのNew52世界への帰還から始まったDCリバース。
それ以降、長らくウォーリー・ウエストはこの世界で唯一の「フラッシュポイントの前の歴史」を知る人物でした。
しかし、現在のDC世界では、少しずつ過去の人生の記憶を思い出し始めたキャラたちがいます。
まずはそのキャラクターたちを紹介していきましょう。
[ヤングジャスティス]
今年になって始まった新タイトルの主人公たち。

ウォーリー同様スピードフォースの中から脱出したインパルス(バート・アレン)と、訳あってDCにおけるファンタジー世界ジェム・ワールドに飛ばされていたスーパーボーイ(コン・エル)の2人は、そもそもNew52世界での人生を持たないリブート前の世界の住人です。
しかしNew52世界のキャラとして今まで活躍していたレッドロビン(ティム・ドレイク)とワンダーガール(キャシー・サンドマーク)も、リブート前にインパルスたちと結成したチーム、ヤングジャスティスの記憶を何故か持っています。
この記憶の混乱については、ティムも自覚しており、「なぜ自分たちが、歩んでいない人生の記憶を持っているのか?」はヤングジャスティス誌の重大な謎となっています。
[アイリス・ウエスト]
バリー・アレンの恋人、アイリスも未来世界のフラッシュ博物館を訪問したことを切っ掛けにリブート前の記憶を取り戻しました。

しかし、自分とバリーが結婚していたことを思い出したことが、かえって悪い方向に作用してしまい、現在、アイリスとバリーの関係はどこかギクシャクしたものに…
[二人のクエスチョン]
無貌の仮面をかぶったDCを代表する探偵であるクエスチョン。
実は現在のDC世界では、ヴィク・セイジによる男クエスチョンと、レニー・モントーヤが名乗る女クエスチョンの2人のクエスチョンが存在していました。

リブート前の世界では言わば初代と2代目の関係にあった2人ですが、New52世界での2人の関係は不明。
しかし、『ロイス・レーン』誌で初めて出会った二人は、初対面の筈なのに互いの事を知っているばかりか、「吹雪の中、命を落としたヴィクとそれを看取るモントーヤ」という、リブート前の世界における初代クエスチョンの死亡の瞬間の記憶すら共有していることに驚きます。
【"過去"の復活】
そして、こうした微かな予兆だけではなく、今までその存在を匂わせる程度であったリブート前の歴史が、New52世界で実際に復活を遂げました。
その舞台となったのは、DC世界の創世神パーペチュアとヒーローたちの戦いを描く『ジャスティスリーグ』誌の中でした。
パーペチュアの使徒となったルーサーたちとの最終戦争に備えるために、二手に分かれてこの世界の過去と未来に跳んだヒーローたち。
歴史を遡ったバリー・アレンとジョン・スチュワートは、ハイパータイムを超えたその先で、自分たち同様未来からやってきたゴリラグロッドらと戦う、ヒーローたちと出会います。
初めて出会った謎のヒーローたちに、助力を乞うフラッシュとグリーンランタン。
しかし、彼らの名前を聞いた謎のヒーローたちの反応は予想外なものでした。
ヘルメットの男:君たちがフラッシュとグリーンランタンだって?失礼ながら、君らはなにか勘違いをしているようだ。
フラッシュとは私の事。そしてグリーンランタンとは隣にいる彼の事だ。
どうやら、我々も自己紹介をしなければいけないようだ。

ジャスティス・ソサエティ・オブ・アメリカと!

(余談ですが、未来に行ったチームも、なんだかんだあってDCの様々な未来世界のヒーローが一堂に会する胸躍る事態に。)
(さらに余談ですが、よくみるとこれらの"未来ヒーロー"の中にとんでもないキャラが…)
【DC世界のこれから】
というわけで、今まで長々と
・2020年にDCは大規模なクライシスをやるらしい
・そして、この新たなクライシスでは、"ダークマルチバース"と"DCの歴史"がキーワードとなるらしい
という話をしてきました。
そして、これらの視点に従うならば、DCが12月より開始するミニシリーズ『イヤー・オブ・ザ・ヴィラン:ヘル・アリズン』は重要な作品となると思われます。

何故なら、本作では嗤うバットマンとレックス・ルーサーが激突、
つまりは、"ダークマルチバース"をテーマとした物語と、"DCの歴史"をテーマとした物語が遂に交錯するのですから。
今までの情報から考えるに、この激突が"クライシス"につながることは、疑いないでしょう。
(少なくとも管理人は疑っていません)
このクライシスがどのようなものになるのかは、わかりません。
しかし、その結果何が起こるのかについては、1つはっきりしていることがあります。
このクライシスをもって、現在のDCの時代"4G"は終了。
次なる時代"5G"が始まるのです。
ニューヨークコミコンのパネルにて名前のみが発表された5G。
この内容については、
・現在のNew52は既に過去のものとなり、多くのヒーローは既に代替わりしている。
・スーパーマンの名を継いだのは、ジョン・ケントだ。
・バットマンは、ルーク・フォックスだ。
・グリーンランタンは…
など、正直出所の怪しい眉唾物も含めて様々な噂が飛び交っています。

仮にそれらの噂が真実でもガセでも、「DC世界にとんでもないことが起きる」ということは紛れもない事実。
新しい時代の誕生に立ち会い、歴史の転換点の目撃者となることを楽しみにアメコミを読んでいる管理人は、あらたなクライシスが楽しみでなりません。
【宣伝】
今回の記事で語った「ダークマルチバース」と「DCの歴史」という2つのストーリーライン。
これらの物語は既に、翻訳本で語られ始めています。
『バットマン・メタル』で始まったダークマルチバースの物語は、先日『ザ・バットマン・フー・ラフズ』の刊行予定が発表。
また、DCの歴史の部分を語る『ジャスティスリーグ』も着々と翻訳が進んでいます。
今回の記事を読んで興味を持った方は、ここら辺から読み始めてみるのも良いと思います。
続いて近刊ですが、これまたトピックが多くて困ってしまいます。
まずは個人的にうれしいのが、"ヒーローたちのメンタルヘルス"というアメコミのタブーを扱った名作『ヒーローズ・イン・クライシス』の翻訳決定。
個人的には今年のベストに上げたい作品ですので、未読の方は是非。
同じ作者が手掛けているバットマン誌も順調に翻訳が継続。
遂に中盤の山場ともいえる『バットマン:ウェディング』までが刊行リストに載りました。
そしてこれまた嬉しいニュースが、角川のアメコミ翻訳参入。
不動の人気を誇るTRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の各種コミカライズ作品を、TRPGのシナリオ付きという面白い形態で刊行するとのこと。個人的には非常に評判の高い『バルダーズゲートの伝説』から読み始めてみようかと思っています。
また最後にぜひ皆さんに紹介したいのが、管理人の大好きな『アメコミ・ヒーロー スーパーグラフィック インフォグラフィックで拡がる 海外コミックの世界』の翻訳決定!
「5人のロビンの在任期間」、「バットマンのテーマの歌詞における"Da!"と"バットマ~ン♪"の割合」、「パニッシャーが悪人を前にした時のフローチャート」など、アメコミ界の様々なデータをインフォグラフィックの手法で提示する愉快な統計集です。
疲れた時に拾い読みするだけでも楽しめる管理人の愛読書なので、未読の方は是非!
また、同じ出版社から『ジャック・カービー アメコミの"キング"と呼ばれた男』の翻訳も決定。
こちらは、マーベルとDCを股にかけ、今日のヒーローユニバースの礎を築いたアメコミ界の"キング"ジャック・カービーの伝記となります。
伝記と言いながらも、当時のコミックやラフスケッチを多数収録したヴィジュアル的にも見どころの多い本のようなので、こちらも楽しみです。
ついでにスタン・リーの伝記も読んで、皆さんも「スタンとキング、マーベルユニバースを真に生み出したといえるのはどちらなのか」という、マニアたちの不毛な百年戦争に参加しましょう!(笑)
その噂とは、ずばり"次なるクライシス"。

『クライシス・オン・インフィニティ・アースズ』、『インフィニット・クライシス』、『フラッシュポイント』…
DC世界の節目節目で発生し、その宇宙観や歴史と共にキャラクター設定さえ根底から覆すようなイベントを指して"クライシス"と呼ぶのはDCの伝統ですが、2020年に新たなクライシスが到来しようとしています。
本記事では、この"クライシス"について現在わかっている内容を、管理人による想像も交えながら予想していきたいと思います。
【クライシスの到来とダークマルチバース】
まずそもそも「本当に来年クライシスをやるの?」という疑問ですが、これにははっきり「やります」と答えることが出来ます。
そもそもの話、以前からコミコンのパネルやWebメディアのインタビューなどで、度々「現行のジャスティスリーグ誌で展開している『イヤー・オブ・ザ・ヴィラン』に続く展開として、DC史上類をみない規模の展開をやる」と言われてきました。
しかし、クライシス到来の根拠はそれだけではありません。
遂に、作中でも到来が予告されたのです。

予告した人物はこちら、テンパス・フュージノート。
なじみのない方も多いかもしれませんが、『ダークナイツ:メタル』の後に登場した。ダークマルチバースの監視者です。
全ての恐怖と妄想が実現する可能性の領域であるダークマルチバースを日夜監視する使命を持った彼は、「DC世界の歴史上の大事件が最悪な方向に進んでいたら?」を探る連作短編集『テイル・フロム・ダークマルチバース』の一遍で、こう語っています。
テンパス:クライシスがくる……おそらく過去最大級のそれが。これを切り抜けるために、この世界は強くあらねばならない。
そしてクライシスの到来を察知した彼は、2つの行動を始めます。
1つ目は、文字通り無限の可能性を秘めたダークマルチバースの世界を渡り、来るクライシスに立ち向かう術を探ること。
その探索の様子は先ほども名前を挙げた連作短編集『テイル・フロム・ダークマルチバース』で描かれています。

(こちらは「もしも背骨の損傷から回復したブルース・ウェインが、アズラエルからバットマンの名を取り戻すことに失敗していたら?」を描いた『テイル・フロム・ダークマルチバース:ナイトフォール』の表紙)

そしてテンパスの2つ目の行動は、クライシスの到来と共に謎の暴走を見せ始めたダークマルチバースからこの世界を護るため、"世界最速だった男"ウォーリー・ウエストをテンパスのエージェントとして選び出すことでした。
また、ダークマルチバース関連して暗躍をしているのは、テンパスだけではありません。

"ダークマルチバースの化身"とも言えるような男、嗤うバットマンもまた、『バットマン/スーパーマン』誌で活動を再開。
正史世界のヒーローたち6人を密かに"ダークマルチバース化"。
独自の私兵集団であるシークレットシックスを結成し、何らかの計画を侵攻しているのです。
【究極の年表】
というわけで、クライシスの到来は正式に予告され、それにはダークマルチバースが重要な役割を果たすことが提示されたわけですが、今回のクライシスを読み解くうえでもう一つ欠かせないキーワードがあります。
そのキーワードとは"歴史"。
先日開催されたニューヨークコミコンのパネルにて、DCの編集長は「今後の展開を前に、現在、我々はDC世界の"究極の年表"を作り上げようとしている」として、1枚の巨大な年表をスクリーンに投影しました。

会場に比して非常に細かい字で書かれており、初めから来場者に詳細を読ませること狙っていないことが明白なこの年表ですが、そこからはDC世界の歴史は、
・ワンダーウーマンが世界最初のヒーローとして人間社会にやってきたところから始まる1G(1st Generation)、
・スーパーマンのデビューから始まる2G、
・『クライシス・オン・インフィニティ・アースズ』から『フラッシュポイント』までが起こったクライシスの時代3G、
・現在我々が読んでいる時代である4G、
の4つの時代に分けられることがわかります。
また先日、DCのTwitterアカウントがリーク画像の体でツイートした画像からは、この年表の具体的な構成と、1Gの様子がみてとれます。

それによれば、セミッシラから人間界にやってきたワンダーウーマンは、その後JSAと共に、第二次世界大戦に参戦。
しかし、原爆の投下を理由に人間界に見切りをつけた彼女は、再びセミッシラに引き籠ることになったとのこと。
しかし、ここで注目すべきは「ワンダーウーマンがDC世界の最初のヒーロー」という新設定ではなく、「クラーク・ケントもブルース・ウェインも第2次世界大戦の終戦前に既に生まれていること」ではないでしょうか?
一見、1940年代に既に生まれていたバットマンやスーパーマンが、現在(年表で言えば4Gの時代)も現役で活躍しているのは、設定的に破綻しているようにも見えます。
しかし思い出してください、上記の通り3Gとは「クライシスの時代」であり、実際に年表には『フラッシュポイント』などの歴史改変イベントがはっきりと記載されていることを。
つまりは、この"究極の年表"とは、クライシスによる歴史改変自体が歴史上の事件に含まれたいわばメタ年表なのです。
そう考えれば、戦中生まれのバットマンが、今も元気にジャスティスリーグに参加していることは何ら不思議ではありません。
途中歴史は改変され、彼らは新しいスタートを切ったのですから。
ちょっと横道気味でしたが、いずれにせよ次のクライシスでは、この"究極の年表"とDCの過去の歴史の復活が、ダークマルチバースと並んで重要な要素となることは間違いないでしょう。
そして、その予兆は既に刊行中の様々なコミックに現れてきているのです。
以降のパラグラフではその予兆を一つ一つ追っていくことにしましょう。
【フラッシュポイント前を思い出し始めたヒーローたち】
ウォーリー・ウエストのNew52世界への帰還から始まったDCリバース。
それ以降、長らくウォーリー・ウエストはこの世界で唯一の「フラッシュポイントの前の歴史」を知る人物でした。
しかし、現在のDC世界では、少しずつ過去の人生の記憶を思い出し始めたキャラたちがいます。
まずはそのキャラクターたちを紹介していきましょう。
[ヤングジャスティス]
今年になって始まった新タイトルの主人公たち。

ウォーリー同様スピードフォースの中から脱出したインパルス(バート・アレン)と、訳あってDCにおけるファンタジー世界ジェム・ワールドに飛ばされていたスーパーボーイ(コン・エル)の2人は、そもそもNew52世界での人生を持たないリブート前の世界の住人です。
しかしNew52世界のキャラとして今まで活躍していたレッドロビン(ティム・ドレイク)とワンダーガール(キャシー・サンドマーク)も、リブート前にインパルスたちと結成したチーム、ヤングジャスティスの記憶を何故か持っています。
この記憶の混乱については、ティムも自覚しており、「なぜ自分たちが、歩んでいない人生の記憶を持っているのか?」はヤングジャスティス誌の重大な謎となっています。
[アイリス・ウエスト]
バリー・アレンの恋人、アイリスも未来世界のフラッシュ博物館を訪問したことを切っ掛けにリブート前の記憶を取り戻しました。

しかし、自分とバリーが結婚していたことを思い出したことが、かえって悪い方向に作用してしまい、現在、アイリスとバリーの関係はどこかギクシャクしたものに…
[二人のクエスチョン]
無貌の仮面をかぶったDCを代表する探偵であるクエスチョン。
実は現在のDC世界では、ヴィク・セイジによる男クエスチョンと、レニー・モントーヤが名乗る女クエスチョンの2人のクエスチョンが存在していました。

リブート前の世界では言わば初代と2代目の関係にあった2人ですが、New52世界での2人の関係は不明。
しかし、『ロイス・レーン』誌で初めて出会った二人は、初対面の筈なのに互いの事を知っているばかりか、「吹雪の中、命を落としたヴィクとそれを看取るモントーヤ」という、リブート前の世界における初代クエスチョンの死亡の瞬間の記憶すら共有していることに驚きます。
【"過去"の復活】
そして、こうした微かな予兆だけではなく、今までその存在を匂わせる程度であったリブート前の歴史が、New52世界で実際に復活を遂げました。
その舞台となったのは、DC世界の創世神パーペチュアとヒーローたちの戦いを描く『ジャスティスリーグ』誌の中でした。
パーペチュアの使徒となったルーサーたちとの最終戦争に備えるために、二手に分かれてこの世界の過去と未来に跳んだヒーローたち。
歴史を遡ったバリー・アレンとジョン・スチュワートは、ハイパータイムを超えたその先で、自分たち同様未来からやってきたゴリラグロッドらと戦う、ヒーローたちと出会います。
初めて出会った謎のヒーローたちに、助力を乞うフラッシュとグリーンランタン。
しかし、彼らの名前を聞いた謎のヒーローたちの反応は予想外なものでした。
ヘルメットの男:君たちがフラッシュとグリーンランタンだって?失礼ながら、君らはなにか勘違いをしているようだ。
フラッシュとは私の事。そしてグリーンランタンとは隣にいる彼の事だ。
どうやら、我々も自己紹介をしなければいけないようだ。

ジャスティス・ソサエティ・オブ・アメリカと!

(余談ですが、未来に行ったチームも、なんだかんだあってDCの様々な未来世界のヒーローが一堂に会する胸躍る事態に。)
(さらに余談ですが、よくみるとこれらの"未来ヒーロー"の中にとんでもないキャラが…)
【DC世界のこれから】
というわけで、今まで長々と
・2020年にDCは大規模なクライシスをやるらしい
・そして、この新たなクライシスでは、"ダークマルチバース"と"DCの歴史"がキーワードとなるらしい
という話をしてきました。
そして、これらの視点に従うならば、DCが12月より開始するミニシリーズ『イヤー・オブ・ザ・ヴィラン:ヘル・アリズン』は重要な作品となると思われます。

何故なら、本作では嗤うバットマンとレックス・ルーサーが激突、
つまりは、"ダークマルチバース"をテーマとした物語と、"DCの歴史"をテーマとした物語が遂に交錯するのですから。
今までの情報から考えるに、この激突が"クライシス"につながることは、疑いないでしょう。
(少なくとも管理人は疑っていません)
このクライシスがどのようなものになるのかは、わかりません。
しかし、その結果何が起こるのかについては、1つはっきりしていることがあります。
このクライシスをもって、現在のDCの時代"4G"は終了。
次なる時代"5G"が始まるのです。
ニューヨークコミコンのパネルにて名前のみが発表された5G。
この内容については、
・現在のNew52は既に過去のものとなり、多くのヒーローは既に代替わりしている。
・スーパーマンの名を継いだのは、ジョン・ケントだ。
・バットマンは、ルーク・フォックスだ。
・グリーンランタンは…
など、正直出所の怪しい眉唾物も含めて様々な噂が飛び交っています。

仮にそれらの噂が真実でもガセでも、「DC世界にとんでもないことが起きる」ということは紛れもない事実。
新しい時代の誕生に立ち会い、歴史の転換点の目撃者となることを楽しみにアメコミを読んでいる管理人は、あらたなクライシスが楽しみでなりません。
【宣伝】
今回の記事で語った「ダークマルチバース」と「DCの歴史」という2つのストーリーライン。
これらの物語は既に、翻訳本で語られ始めています。
『バットマン・メタル』で始まったダークマルチバースの物語は、先日『ザ・バットマン・フー・ラフズ』の刊行予定が発表。
また、DCの歴史の部分を語る『ジャスティスリーグ』も着々と翻訳が進んでいます。
今回の記事を読んで興味を持った方は、ここら辺から読み始めてみるのも良いと思います。
続いて近刊ですが、これまたトピックが多くて困ってしまいます。
まずは個人的にうれしいのが、"ヒーローたちのメンタルヘルス"というアメコミのタブーを扱った名作『ヒーローズ・イン・クライシス』の翻訳決定。
個人的には今年のベストに上げたい作品ですので、未読の方は是非。
同じ作者が手掛けているバットマン誌も順調に翻訳が継続。
遂に中盤の山場ともいえる『バットマン:ウェディング』までが刊行リストに載りました。
そしてこれまた嬉しいニュースが、角川のアメコミ翻訳参入。
不動の人気を誇るTRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の各種コミカライズ作品を、TRPGのシナリオ付きという面白い形態で刊行するとのこと。個人的には非常に評判の高い『バルダーズゲートの伝説』から読み始めてみようかと思っています。
また最後にぜひ皆さんに紹介したいのが、管理人の大好きな『アメコミ・ヒーロー スーパーグラフィック インフォグラフィックで拡がる 海外コミックの世界』の翻訳決定!
「5人のロビンの在任期間」、「バットマンのテーマの歌詞における"Da!"と"バットマ~ン♪"の割合」、「パニッシャーが悪人を前にした時のフローチャート」など、アメコミ界の様々なデータをインフォグラフィックの手法で提示する愉快な統計集です。
疲れた時に拾い読みするだけでも楽しめる管理人の愛読書なので、未読の方は是非!
また、同じ出版社から『ジャック・カービー アメコミの"キング"と呼ばれた男』の翻訳も決定。
こちらは、マーベルとDCを股にかけ、今日のヒーローユニバースの礎を築いたアメコミ界の"キング"ジャック・カービーの伝記となります。
伝記と言いながらも、当時のコミックやラフスケッチを多数収録したヴィジュアル的にも見どころの多い本のようなので、こちらも楽しみです。
ついでにスタン・リーの伝記も読んで、皆さんも「スタンとキング、マーベルユニバースを真に生み出したといえるのはどちらなのか」という、マニアたちの不毛な百年戦争に参加しましょう!(笑)
スポンサーサイト