パワーズ・オブ・X #1 / ハウス・オブ・X #2
パワーズ・オブ・X #1 / ハウス・オブ・X #2
(作:ジョナサン・ヒックマン、画:R.B.シルバ、ペペ・ラルラース)
(前回更新した『ハウス・オブ・X #1』の紹介の続きとなります)
【X-MEN誕生102年目】
ミュータントと人類・機械至上主義との戦争の終結から数十年。
太陽系に浮かぶ"生ける衛星"アステロイドKに残りゲリラ戦を続ける太陽系ミュータントの生き残りは、無謀な潜入作戦に全てを賭けていた

ネクサスに侵入し目的の"ブツ"を手に入れたまではよかったが、その脱出行のなかでセンチネルに追われることとなった一行。
メンバーの1人パーシバルは既に息絶え、人類を裏切った元"対ミュータント用ミュータント兵器"の生き残りサイロベルは捕虜となってしまう。
そんな仲間の様子を物陰からうかがい救出のチャンスをさぐる2人のミュータント。

大戦中にMr.シニスターが培養したキメラ兵であるラスプーチンと、キメラ兵の中から一定確率で産まれる博愛主義者の失敗作の1人プリーストであった。
キッドオメガの遺伝子に由来するテレパシー能力を持つラスプーチンに、サイロベルは脳内で必死に語り掛ける。
サイロベル:こないで!あなたたちまで捕まったら全てが無意味になる。
プリースト:彼女の言うとおりだ。任務を優先しなくちゃ。
いまからポータルの種を植えるから、それを使って脱出しよう。
ラスプーチン:逃げたきゃ勝手に逃げな。私は絶対に諦めない。
せいぜいお前さんは私らの無事を神様にでも祈ってな。
プリースト:もちろん祈るさ。僕はいつだって、生きとし生けるすべての生命のために祈ってるよ。

ラスプーチン:それは見当違いってもんさ。だいいち機械は魂を持たない。
そして人類はずっと前に魂を捨てた!
サイロベルを救うために無謀な戦いに打って出たラスプーチン。
しかし、キッドオメガのテレパシー、コロッサスの金属化、キティ・プライドの非実体化など多数の能力を持つラスプーチンであったが、所詮は多勢に無勢。
サイロベルは本格的な尋問のために連れ去られてしまう。
貴重な仲間2人を失い、アステロイドKに帰還したラスプーチンとプリースト。
彼女たちを待っていたのは太陽系に残されたミュータントの最後の生き残り6人であった…

【X-MEN誕生103年目】
およそ900年前に人類と機械生命によって建造されたミュータント保管庫の中。
保存液に漬けられた、かつてパーシバルと呼ばれた個体の肉体が見守る中で、保管庫の司書官はこの場所を築き上げたAIを慰める。

司書官:キミはよくやったと思うよ。当時キミに与えられた目的は、ミュータントたちの頭脳を収集してデータベース化し、ミュータントとの戦争で戦略的優位を得ることだった。
その時、いったいだれが、ミュータントと機械と人類の戦争自体が無意味なものになるって気が付けたと思う?
AI:人類ね……
司書官:僕たちは過去を保護していかないといけない。
かつて世界がどんな姿であったか、我々が何を克服してきたか、いかなる罪を犯してきたかを記憶しておくためにね。
司書官は眼下に広がる機械都市のドームの中に残された小さな原生林を目をやる。
その中には何も纏わず、野生動物のような姿で暮らす人影が・・・

司書官:あとは二度と奴らがはびこらない事を神に祈るのみさ。
【モイラの人生】
モイラ・マクタガートの人生は幸せな物であった。
スコットランド人の両親の間に生まれた聡明な少女であった彼女は、やがて教師となり、結婚し、3人の子と8人の孫に恵まれた。
そして彼女に穏やかな死が訪れる。

享年74歳。彼女の人生はごく平凡なそれでいて素晴らしいものであった…

次の瞬間、モイラは母の子宮の中で目を覚ます、前回の人生の全ての記憶をもって。
いったい自分の身に何が起こっているのか?
それを探るために、科学者となったモイラは、自分が自分の人生を何度もやり直す能力を持ったミュータントであったことを知る。
そして4度目の人生で、彼女はチャールズ・エグゼビアとの運命の出会いを果たす。
自分がミュータントであることを隠して、学生時代のエグゼビアに近づいたモイラは、彼の掲げる理想"ミュータントと人類の融和"の実現のための人生を歩み始める。

"X-MEN"と呼ばれる彼の教え子たちを中心とした、理想に向けた戦いは、良い時も悪い時もあったが充実したものであった。
しかし、その人生はある日突然終わりを告げる。
科学者ボリバー・トラスクが開発したセンチネルが、彼女もろともミュータントを始末したのだ。

これ以降、彼女はミュータントの繁栄のためにあらゆる手段に打って出る。

人類と完全に関わりを断ちミュータントたちだけの鎖国国家をつくる人生。
…ミュータントの繁栄をねたんだ人類がセンチネル軍団を差し向けることに変わりはなかった。

暗殺者となりセンチネルの開発者となるトラスクの親類縁者を皆殺しにする人生。
…所詮センチネルのコンセプトは、"発明"ではなく"発見"のようなもので、誰かがいつかは開発するものであった。

マグニートと手を組み人類支配に乗り出す人生。

アポカリプスと手を組み、種族の垣根なくただ適者生存のために争い会う人生。
思いつく全ての手段を試したモイラは、再び戻った母の子宮の中で、今回の人生では"真に革命的な手法"を試すことを決意する。
今回の人生で、モイラとエグゼビア教授はあらゆるルールを破るのだ。

【X-MEN誕生100年目】
良く晴れた公園で機嫌よく微笑むチャールズ・エグゼビアの隣に座ったモイラは、チャールズに声をかける。

モイラ:何を笑ってらっしゃるの?
チャールズ:最近、夢ができましてね。より良い世界の実現に向けた私の夢です。
モイラ:チャールズ、実現できるならそれは夢じゃないのよ。
チャールズ:……失礼。どこかでお会いしたことがありましたかな?
モイラ:ええ、もう何度も。
チャールズ:お前は何者だ?
モイラ:気になるなら、私の心を読めばよいのでは?

チャールズ:…なんということだ。
******************
というわけで、ようやく紹介したいところまで紹介できました。
以上が、今月から始まったミュータントの系列の新展開の触りの紹介です。
余談ですが、『パワーズ・オブ・X』のみXを"ten"と読み、Powers of 10で"10のべき乗"という意味になります。
このタイトルが意味することは、今回の紹介記事を読んでいただいた方には説明不要でしょう。
『ハウス・オブ・X』誌で、プロフェッサーXによる人類の支配という大ネタをぶち上げて、『パワーズ・オブ・X』でその行為の空しさを、100年、1000年という時間軸で俯瞰することで描いただけでもそのスケールに唸らせられたのですが、
何と「我々の知るマーベルの歴史は実は10回目のループの途中であった」という爆弾が放り込まれてきました。
ここまでやっておいて、どうやって話を着地させるのかはわかりませんが、すでにこの物語によって様変わりした世界を舞台としたX-MEN系列の作品の内容が、すでに発表されています。
その着地の瞬間を見届けるためにも目が離せない作品ですね。

ちなみに正直、管理人は今までそこまでX-MENが好きだったわけではなく、リランチの度に「たまには読んでみようかな」と手を出して、そのうちフェイドアウトしていくことを繰り返してきましたが、そんな自分が今回の展開にはドハマりですので、気になった方は是非読んでみてください。
【宣伝】(使いまわし)
今回紹介したハウス・オブ・X誌で久しぶりにマーベルに復帰を果たしたジョナサン・ヒックマン。
実は彼の直前の作品である『シークレットウォーズ』の翻訳版が発売予定です。
頭がおかしくなるくらいスケールの大きい"ヒックマン節"は本作でも健在ですので、前哨戦にあたる『タイム・ランズ・アウト』ともども是非どうぞ。
またDCではバットマンとジョーカーが運命共同体となってヨーロッパを旅する短編『バットマン:ヨーロッパ(仮) 』の予約が開始。
こちらは、同じくバットマンとジョーカーの関係性を扱った『バットマン:ダーク・プリンス・チャーミング』と一緒にどうぞ。
またアイズナー賞ベストライター部門を2年連続で受賞したトム・キングのバットマンの続きも、『バットマン:ルール・オブ・エンゲージメント』として発売。
こちらは個人的に一押しの"バットマンとスーパーマンの大人げない野球勝負"も収録されてますんで、ぜひ。
(作:ジョナサン・ヒックマン、画:R.B.シルバ、ペペ・ラルラース)
(前回更新した『ハウス・オブ・X #1』の紹介の続きとなります)
【X-MEN誕生102年目】
ミュータントと人類・機械至上主義との戦争の終結から数十年。
太陽系に浮かぶ"生ける衛星"アステロイドKに残りゲリラ戦を続ける太陽系ミュータントの生き残りは、無謀な潜入作戦に全てを賭けていた

ネクサスに侵入し目的の"ブツ"を手に入れたまではよかったが、その脱出行のなかでセンチネルに追われることとなった一行。
メンバーの1人パーシバルは既に息絶え、人類を裏切った元"対ミュータント用ミュータント兵器"の生き残りサイロベルは捕虜となってしまう。
そんな仲間の様子を物陰からうかがい救出のチャンスをさぐる2人のミュータント。

大戦中にMr.シニスターが培養したキメラ兵であるラスプーチンと、キメラ兵の中から一定確率で産まれる博愛主義者の失敗作の1人プリーストであった。
キッドオメガの遺伝子に由来するテレパシー能力を持つラスプーチンに、サイロベルは脳内で必死に語り掛ける。
サイロベル:こないで!あなたたちまで捕まったら全てが無意味になる。
プリースト:彼女の言うとおりだ。任務を優先しなくちゃ。
いまからポータルの種を植えるから、それを使って脱出しよう。
ラスプーチン:逃げたきゃ勝手に逃げな。私は絶対に諦めない。
せいぜいお前さんは私らの無事を神様にでも祈ってな。
プリースト:もちろん祈るさ。僕はいつだって、生きとし生けるすべての生命のために祈ってるよ。

ラスプーチン:それは見当違いってもんさ。だいいち機械は魂を持たない。
そして人類はずっと前に魂を捨てた!
サイロベルを救うために無謀な戦いに打って出たラスプーチン。
しかし、キッドオメガのテレパシー、コロッサスの金属化、キティ・プライドの非実体化など多数の能力を持つラスプーチンであったが、所詮は多勢に無勢。
サイロベルは本格的な尋問のために連れ去られてしまう。
貴重な仲間2人を失い、アステロイドKに帰還したラスプーチンとプリースト。
彼女たちを待っていたのは太陽系に残されたミュータントの最後の生き残り6人であった…

【X-MEN誕生103年目】
およそ900年前に人類と機械生命によって建造されたミュータント保管庫の中。
保存液に漬けられた、かつてパーシバルと呼ばれた個体の肉体が見守る中で、保管庫の司書官はこの場所を築き上げたAIを慰める。

司書官:キミはよくやったと思うよ。当時キミに与えられた目的は、ミュータントたちの頭脳を収集してデータベース化し、ミュータントとの戦争で戦略的優位を得ることだった。
その時、いったいだれが、ミュータントと機械と人類の戦争自体が無意味なものになるって気が付けたと思う?
AI:人類ね……
司書官:僕たちは過去を保護していかないといけない。
かつて世界がどんな姿であったか、我々が何を克服してきたか、いかなる罪を犯してきたかを記憶しておくためにね。
司書官は眼下に広がる機械都市のドームの中に残された小さな原生林を目をやる。
その中には何も纏わず、野生動物のような姿で暮らす人影が・・・

司書官:あとは二度と奴らがはびこらない事を神に祈るのみさ。
【モイラの人生】
モイラ・マクタガートの人生は幸せな物であった。
スコットランド人の両親の間に生まれた聡明な少女であった彼女は、やがて教師となり、結婚し、3人の子と8人の孫に恵まれた。
そして彼女に穏やかな死が訪れる。

享年74歳。彼女の人生はごく平凡なそれでいて素晴らしいものであった…

次の瞬間、モイラは母の子宮の中で目を覚ます、前回の人生の全ての記憶をもって。
いったい自分の身に何が起こっているのか?
それを探るために、科学者となったモイラは、自分が自分の人生を何度もやり直す能力を持ったミュータントであったことを知る。
そして4度目の人生で、彼女はチャールズ・エグゼビアとの運命の出会いを果たす。
自分がミュータントであることを隠して、学生時代のエグゼビアに近づいたモイラは、彼の掲げる理想"ミュータントと人類の融和"の実現のための人生を歩み始める。

"X-MEN"と呼ばれる彼の教え子たちを中心とした、理想に向けた戦いは、良い時も悪い時もあったが充実したものであった。
しかし、その人生はある日突然終わりを告げる。
科学者ボリバー・トラスクが開発したセンチネルが、彼女もろともミュータントを始末したのだ。

これ以降、彼女はミュータントの繁栄のためにあらゆる手段に打って出る。

人類と完全に関わりを断ちミュータントたちだけの鎖国国家をつくる人生。
…ミュータントの繁栄をねたんだ人類がセンチネル軍団を差し向けることに変わりはなかった。

暗殺者となりセンチネルの開発者となるトラスクの親類縁者を皆殺しにする人生。
…所詮センチネルのコンセプトは、"発明"ではなく"発見"のようなもので、誰かがいつかは開発するものであった。

マグニートと手を組み人類支配に乗り出す人生。

アポカリプスと手を組み、種族の垣根なくただ適者生存のために争い会う人生。
思いつく全ての手段を試したモイラは、再び戻った母の子宮の中で、今回の人生では"真に革命的な手法"を試すことを決意する。
今回の人生で、モイラとエグゼビア教授はあらゆるルールを破るのだ。

【X-MEN誕生100年目】
良く晴れた公園で機嫌よく微笑むチャールズ・エグゼビアの隣に座ったモイラは、チャールズに声をかける。

モイラ:何を笑ってらっしゃるの?
チャールズ:最近、夢ができましてね。より良い世界の実現に向けた私の夢です。
モイラ:チャールズ、実現できるならそれは夢じゃないのよ。
チャールズ:……失礼。どこかでお会いしたことがありましたかな?
モイラ:ええ、もう何度も。
チャールズ:お前は何者だ?
モイラ:気になるなら、私の心を読めばよいのでは?

チャールズ:…なんということだ。
******************
というわけで、ようやく紹介したいところまで紹介できました。
以上が、今月から始まったミュータントの系列の新展開の触りの紹介です。
余談ですが、『パワーズ・オブ・X』のみXを"ten"と読み、Powers of 10で"10のべき乗"という意味になります。
このタイトルが意味することは、今回の紹介記事を読んでいただいた方には説明不要でしょう。
『ハウス・オブ・X』誌で、プロフェッサーXによる人類の支配という大ネタをぶち上げて、『パワーズ・オブ・X』でその行為の空しさを、100年、1000年という時間軸で俯瞰することで描いただけでもそのスケールに唸らせられたのですが、
何と「我々の知るマーベルの歴史は実は10回目のループの途中であった」という爆弾が放り込まれてきました。
ここまでやっておいて、どうやって話を着地させるのかはわかりませんが、すでにこの物語によって様変わりした世界を舞台としたX-MEN系列の作品の内容が、すでに発表されています。
その着地の瞬間を見届けるためにも目が離せない作品ですね。

ちなみに正直、管理人は今までそこまでX-MENが好きだったわけではなく、リランチの度に「たまには読んでみようかな」と手を出して、そのうちフェイドアウトしていくことを繰り返してきましたが、そんな自分が今回の展開にはドハマりですので、気になった方は是非読んでみてください。
【宣伝】(使いまわし)
今回紹介したハウス・オブ・X誌で久しぶりにマーベルに復帰を果たしたジョナサン・ヒックマン。
実は彼の直前の作品である『シークレットウォーズ』の翻訳版が発売予定です。
頭がおかしくなるくらいスケールの大きい"ヒックマン節"は本作でも健在ですので、前哨戦にあたる『タイム・ランズ・アウト』ともども是非どうぞ。
またDCではバットマンとジョーカーが運命共同体となってヨーロッパを旅する短編『バットマン:ヨーロッパ(仮) 』の予約が開始。
こちらは、同じくバットマンとジョーカーの関係性を扱った『バットマン:ダーク・プリンス・チャーミング』と一緒にどうぞ。
またアイズナー賞ベストライター部門を2年連続で受賞したトム・キングのバットマンの続きも、『バットマン:ルール・オブ・エンゲージメント』として発売。
こちらは個人的に一押しの"バットマンとスーパーマンの大人げない野球勝負"も収録されてますんで、ぜひ。
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