シークレット・エンパイア #0 

シークレット・エンパイア #0 
(作:ニック・スペンサー、画:ダニエル・アクーニャ)

今回は、マーベルの夏の大型イベント『シークレット・エンパイア』と、その直前に刊行された『キャプテン・アメリカ:スティーブ・ロジャース』から気になったシーンを紹介。

【スティーブの一番長い日】
英雄スティーブ・ロジャースを長官に迎えたSHEILDとヒーローコミュニティは、かつてない苦境に立たされていた。
地球の内外に2つの戦場を同時に抱えることになったからだ。

1つ目の戦場は成層圏の外。
侵略宇宙人チタウリの大軍団が、なぜか地球にその進路をとったのだ。
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チタウリを迎え撃つのはキャプテン・マーベルに率いられた地球防衛軍アルファ・フライトや、宇宙船を壊され地球への滞在を余儀なくされていたガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシーなどの宇宙系ヒーローたち。

次々と惑星軌道へと到着するチタウリの群れに圧倒的な戦力差を感じるキャプテン・マーベルであったが、実は彼女には1つ秘策があった。その秘策とは地球を囲う全方位バリアー、通称"ザ・シールド"。
シールドの前長官であるマリア・ヒルが、自身の弾劾裁判の時に人気取りのためにぶちあげた荒唐無稽な計画を、キャプテン・マーベルは密かに実用段階に移していたのだ。

スティーブ・ロジャースからは再三「地球をバリアーで囲いその中に身をひそめることは、地球の可能性をつぶし孤立を深める」と計画の中止を忠告されたザ・シールドであったが、キャプテン・マーベルはスティーブへの反発心もあり、その開発を自らの権限で進めていた。

ヒドラのテロリストによる妨害もあり、チタウリの襲来にはまにあわなかったザ・シールドの構築だが、その実用化は既に最終段階。
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当代きってのエンジニアであるリリ・ウィリアムス(アイアンハート)と、トニー・スターク(のAI)による復旧を待つばかりであった…

もう一つの戦場はニューヨーク。"平和な牢獄"プレザントヴィルから脱走したヴィラン達をバロン・ジーモがまとめ上げた新生マスターズ・オブ・イービルが、大規模な破壊活動を開始していた。
しかしニューヨークと言えば世界中でもっともヒーローがたくさんいる街。
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すぐさまルーク・ケイジやアイアンフィスト、Dr.ストレンジなどニューヨークをホームグラウンドとするヒーローたちが立ち上がり、ニューヨークでは大乱戦が勃発する。

宇宙/マンハッタンと未曽有の危機を2つ抱えながらも、ヘリキャリアの上から懸命に指揮をつづけるスティーブ・ロジャース。しかし、彼と対照的に米軍の最高司令官であるアメリカ大統領は早々にその任務を放棄。
スティーブ・ロジャースに全権をゆだね、自らは安全なシェルターへと引き籠ったのだ。

これはつまり、SHIELD長官とアメリカ軍最高司令官という地球最高の軍隊の指揮権を握るかつてない権力者が生まれた瞬間であり、これこそがスティーブが兼ねてより狙っていた"勝機"であった…
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スティーブは完成したばかりの"ザ・シールド"を起動し、次から次へと襲来するチタウリをキャプテン・マーベルたちと共にシャットアウト。
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※余談ですが、チタウリが地球に襲来するのはスティーブが密かにチタウリの女王の卵を育てているから。
 そしてもちろんキャプテン・マーベルに訳知り顔でザ・シールドの愚かさを説教したのは、
 そうすることが彼女にザ・シールドを建造させる一番簡単な方法であることを知っていたからです。

続いてヒーローたちが集結したマンハッタン島を、密かに手に入れていた魔導書を用いてダークディメンションの底に沈める。
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かくして、地球の護り手であるヒーローたちを難なく盤上から追い出したヒドラキャップとヒドラは、世界征服へと打って出る…
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【戦闘前夜】
世界の統一という難行を前にしたスティーブが行ったこと。それは歴戦の勇士でありヒーローたちの中心人物であったキャプテン・アメリカが苦難を前にして何度も行ってきたこと、戦地へと赴く仲間を勇気づけることであった。

ヒドラの戦闘員を前にして、スティーブはいつも通りの真摯な口調で語る。
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これからの戦いが今までにない苦しい戦いとなること。
そして戦いの中で犠牲となる者もあらわれるであろうこと。
それでもなお"全人類を一つにする"という理想を信じ、自分についてきてほしいこと。

そして、演説はやがて戦闘員への問いかけで終わる

スティーブ:…そして全てが終わり戦塵が収まるとき、世界はこう声を上げるだろう
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【スティーブの記憶】
時は戻って、ヒドラキャップの脳内歴史の回想シーン。
米国に侵入したヒドラのスパイとして第2次世界大戦を戦うキャプテン・アメリカですが、そんな彼に「敗色濃厚な連合軍が戦争の趨勢を激変させる新兵器の開発を完了させた」という情報がはいる。
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新兵器の名前はコズミックキューブ。

世界のありようを書き換える力を秘めたその立方体の力によって、連合軍は「連合軍がナチスを破った世界」に変えようとしているというのだ。

そんな突拍子もない情報を聞かされたスティーブは、彼の"最後のミッション"のために日本に呼び出されることとなる。
ヒドラの士官学校時代の恩師クラーケンに連れ添われ、ヒドラ発祥の地とされる遺跡に招き入れられたスティーブ。
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今まさに連合軍による世界改変が行われようとしているその瞬間、彼はそこで秘密の儀式を受けることとなる。

クラーケン:次に君が目を覚ました時、君は経験したことのない過去を記憶し、歩んだことのない人生を歩んでいるだろう。
しかし何が在ろうと忘れるな。君はヒドラだ、我々の戦士なのだ。

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スティーブの前には、コズミックキューブによって書き換え始められた新たな歴史のヴィジョンが立ち上る。
スティーブ:これは!?
クラーケン:これが我々に与えられる牢獄、ただのまやかしだ。
いいか。君だけは真実を胸に刻み、我々を解放するんだ。それこそが君に与えられた宿命だ。


そして起こる世界改編。
かくしてスティーブ・ロジャースは、この世界で唯一本当の歴史を知る男。"Man out of Time"となったのだ…

******************
というわけで、遂にヒドラの信奉者としての正体を白日のものにさらしたスティーブ。

スパイとしての暗闘を1年間付き合ってきた読者としては、何とも言えない"裏のカタルシス"に溢れた展開でした。
誰よりも信頼されていたキャップの裏切りを知ったヒーローたちの反応が本作の一番の見どころとなっていますが、それについては現物を読んでいただくとして、管理人が思わずうなったのはスティーブの回想の終着点。

読者としてはスティーブの回想は全て彼の脳内にのみ存在するものとして語られてきたのですが、ここにきてこれこそがこの世界の真の歴史である可能性が提示されました。

じつは今まで「スティーブだけが自分の脳内歴史に基づいて行動している」という本作のセッティングは、度々ユーモラスな会話のすれ違いを生む装置として活用されてきました。
しかし今回改めてスティーブの現実認識を知ったうえでそういったやり取りを読み返すと、彼が自分の歴史と相手の歴史が違うことをはっきりと理解したうえで、時にはその違いに苛立ち、またある時は悲しみながら孤独な戦いを強いられてきたことがはっきりと読み取れる構成となっており、ライターであるスペンサーの巧みな構成に舌を巻くばかりです。


【宣伝】
まずは最近翻訳が発表された新刊の紹介。まずはアベンジャー系列の映画の重要なキーアイテムとなっているインフィニティガントレットを手に入れたサノスとヒーロー連合の激突を描いた『インフィニティ・ガントレット』。
そして、同じくサノスによる地球侵攻を描いた2013年のイベント『インフィニティ Vol.1』の翻訳も決定しました。
DCからリブート前に刊行されたハーレイ・クインの個人誌『ハーレイ・クイン:ビッグ・トラブル、ビッグ・バルダ』が発売(今では表紙しか書かないことが多いテリー・ドットソンが本編も描いてる!)



(以下は使いまわし)
気になる邦訳作品、まずはDCですがなんといっても嬉しいのがスナイダーバットマンのつるべ打ち。
先日は発売されたばかりの『スーパーヘヴィ』とその続刊の『ブルーム』で、ゴードン本部長による"ロボバットバニー"版バットマン編は終了。
またバットマン75周年を記念したお祭り企画『バットマン:エターナル』の下巻も7月に発売され、その後の『エピローグ』でNew52を完走したスナイダーの物語の大団円と、スナイダーからバトンを受け渡されDCリバースでバットマンを描くこととなった2人の橋渡し的な物語が描かれます。
管理人的には、スコット・スナイダーのバットマンのテーマを理解するうえで重要な補助線となる『エターナル(下巻)』と『エピローグ』が特にお勧めです。


またマーベルでは今後のMCUの映画において重要な意味を持つことになるであろう作品「インフィニティ・ガントレット」、Dr.オクトパスが成りすましたピーターの物語『スーペリア・スパイダーマン:トラブル・マインド』、そして映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー Remix』のスタッフロールにてはっきりと"原作"と明記された『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:レガシー』あたりが気になるところです。

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NOB-BON

Author:NOB-BON
X-men生まれSpawn育ちを地でいく、90年代アメコミバブルの残党。
しばらくの間、アメコミは翻訳本を買う程度だったのが、最近のデジタルコミックの手軽さにひかれ、本格的に復活しました。

基本的にMarvelメインですが、DCのリランチを機に自分の中でDCブームが来てるので、しばらくはDCの話題続くかも。
しばらくどころか完全にDC派に転びました。

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