IvX(インヒューマンズ vs X-MEN) #0
IvX #0
(作:チャールズ・ソール、画:ケネス・ロカフォード)
【ニューアティランにて】
ビースト:さて!取り掛かるとしようじゃないか。

インヒューマンズの王都ニューアティランの研究室にて、ビーストは声をあげた。
そのどこか楽し気な姿に、ビーストの助手であるインヒューマンの科学者アイソは思わず質問した。
アイソ:ずいぶん上機嫌ですね。ミュータントが絶滅の危機にあるというのに。
ビースト:しかり。ただ、今回の敵は殺人ロボットでも、不安定な魔女でも、時空の特異点でもない。
ただの化学反応、つまりは科学の領域じゃないか。こと科学に関して言えば、我々人類はどんなことだって可能にしてきた。
アイソ:もう何かアイデアがあるんですね。
ビースト:いや、なにも。ただほら!

ビースト:洞窟の壁に自分たちの姿を刻んだ3万年前の人々にとっては不可能に思えたことも、今ではこの通り、子供の遊びだ。
それもこれもみな、不可能を可能にする科学の力だよ。
インヒューマンズ誕生の引き金であると同時に、ミュータントを殺す疫病M-ポックスの原因となる雲――テリジェンミストを無毒化するために、インヒューマンズのもとで研究する道を選んだミュータントの科学者ビースト。
彼は自分の研究の先に、インヒューマンズとミュータントが手を取りある明るい未来があることを確信していた。
【両種族の現状】
しかしビーストの思い描く理想に反し、インヒューマンズとミュータントの関係は停戦協定の上になりたった不安定なものであった。
今をさかのぼること8か月前、全ミュータントの前でミュータントの平和的団結を説いたサイクロプス。
そんな彼ですが、テリジェンミストのミュータントへの害を知ったとたんに態度を硬化。
テリジェンミストとインヒューマンズの危険性についての憶測まじりの糾弾を、全世界に向けて発信した上に、インヒューマンズたちがミュータントの緊急避難に手を取られているすきに、地球を巡回する2つの巨大なテリジェンミストの1つを破壊したのだ。

自分たちの同胞を増やすテリジェンミストはインヒューマンズにとって、神聖とすらいえる存在。
そんなテリジェンミストが破壊され、怒り心頭のインヒューマンズの前に現れたサイクロプスは、同胞たちを守るために残り一つとなったテリジェンミストも破壊することを宣言。
インヒューマンズの王ブラックボルトの怒りに触れたサイクロプスは、王の力により同胞たちの面前で塵となったのだ、

「理念は死なぬ」という言葉を残して。
この一件により一種即発となったミュータントとインヒューマンズ。しかし両種族のリーダーである2人の女性ストームとメデューサは、争いを由とせず両種族の間で停戦協定を結ぶこととなる。
この協定により、インヒューマンズは残されたテリジェンミストを常に追跡し、その進路にミュータントの反応があれば避難を最優先とすることを約束、事態はひとまずの収束を迎えたかにみえた…
【暗躍するホワイトクイーン】
エマ:理念は死なない…
ビーストが科学の力で、ミュータントたちを救おうとする中、表舞台から姿を消していたホワイトクイーン、エマ・フロストもまたミュータントを救うための、密かな活動を行っていた。
もちろんエマが頼るのは科学の力ではない。
マグニート率いるアンキャニーX-MEN、

過去からやってきたAll-New X-MEN

地獄に作られた避難所に居を構えるエクストラオーディナリーX-MEN

ミュータントの各種勢力に密かにコンタクトをとり、ビーストが失敗した時の"プランB"に向けた協力要請を行っていたのだ。
【一方インヒューマンズも…】
メデューサ:ビーストは信頼に足る人物だわ。でも、全てのミュータントがそうだとは限らない。
いつか、必ずしびれを切らすものが現れる。
我々から戦争の口火を切ることはけしてない。しかし、戦争に勝つ準備は常にしておくように。

ミュータントとインヒューマンズの戦争に向けた準備を進めていたのは、エマだけではなかった。
インヒューマンズ王家もまた、"ミュータントの保護"を理由にテリジェンミストの警護にあたり、ミュータントの戦争に備えていた。
【ビーストの発見】
ビースト:なんということだ!
アイソ:どうかされましたか?

ビースト:・・・いや、なんでもない。そろそろ昼食でも取ろうか?ワシは腹が減って仕方がないよ。
サヴェッジランドに設置した計測器の測定結果を見たビーストは、ミュータントの同胞たちに連絡を取ることを決意する。
それもインヒューマンズには決して知られるように、ひっそりと・・・
************
というわけで、今回はマーベルの冬のクロスオーバー『IvX(インヒューマンズvsX-MEN)』のプレリュードの紹介でした。
ただ実はこの物語には#0とは別にもう一つのプレリュードが存在します。
そのタイトルは『デス・オブ・X』。

昨年のイベント『シークレットウォーズ』終了から、『オールニュー・オールディファレント・マーベル』によるリランチ開始までの間、作中時間で流れた8か月間の空白期間を埋める物語として、人々の口を通してしか語られなかったサイクロプスの最後とインヒューマンズとの確執を描く物語です。
オールニュー・オールディファレント・マーベル開始以降、意図的にその詳細がぼやかされてきたサイクロプスの最後とは、いったいどのようなものであったのか?
実は、物語は事前に明かされていた内容通りに進んでいき、正直管理人は読みながら「わざわざもったいぶってこの内容?」と若干不満でした。
…最後の数ページを読むまでは。
「ブラックボルトとメデューサを襲撃して返り討ちに合う」という物語をなぞっていく『デス・オブ・X』は、最後の数ページに明かされた事実でその意味合いをがらりと変えます。
そして、その影響は本作『IvX』にも色濃く出ており、同じセリフを読んでいても、『デス・オブ・X』を読んだ読者と未読の読者では、そのニュアンスが大きく違って感じることでしょう。
果たして、マーベル世界の2大種族の対立はどこに着地するのか?
この世界に残されたサイクロプスの理念はどうなるのか?
ここ数年のX-MEN系列の大団円としての本作をみなさんもぜひ読んでみてください。
【宣伝(使いまわし)】
久しぶりの更新となると、書くのが大変なのがこのコーナー。
特にこの一か月は、とんでもないタイトルが数多く発表されました。
まずは『バットマン:エターナル<上>』! バットマンに訪れた最大の危機をかつてないスケールで描いた超大作がまさかの翻訳!
通常のTPBで8冊ほどの分量となる内容の前半部分を1冊にまとめての刊行になります。
個人的にも初めて完走した週刊タイトルで、毎週その展開に悶絶しながら読んだ思い入れたっぷりの作品なので、翻訳は嬉しいところです。
続いての驚きは『Y:THE LAST MAN 1』。「謎の伝染病により世界中の男性が死滅。この地球に残された最後の雄となった主人公は…」という、比較的ベタな設定を"今世紀最高のコミック"の1つへと引き上げた作品。
普段はヒーローコミック以外は読まない管理人ですが、アメコミの情報を仕入れていると常に大絶賛と共に耳に入ってくるこの作品が日本語で読める日が来るとは思いませんでした。
そして、こちらも驚きの『BATMAN LOBO / LOBO AUTHORITY:HOLIDAY HELL』!
英国コミックの雄、サイモン・ビズレーの描くバットマンとロボの大騒動が翻訳!
最後に管理人がお勧めしたいのが『アクアマン:王の遺産』と『アクアマン:王の最期』の2冊。
不人気キャラの代名詞であったアクアマンを、一気にDCのトップタイトルへと帰りづかせたジェフ・ジョーンズのアクアマン。
第一巻が発売された時にもちろん期待していましたが、完結編まで一気に刊行されることになりました!
またマーベルで楽しみなのは、『ドクター・ストレンジ:ウェイ・オブ・ウィアード』。昨年より始まったオールニュー・オールディファレント・マーベル路線の初翻訳は、映画の公開が待たれるDr.ストレンジ!
本国でも映画化を控えた時期に始まった企画ということもあり、マーベルのトップクリエーターの共演となっています。
またDr.ストレンジでいえばその誕生譚を再構成した『ドクター・ストレンジ:シーズンワン』も、映画の予習にはぴったりの作品となっております。
また、翻訳作品の続刊となる『ジャスティス Vol.2』『ジャスティス・リーグ:ダークサイド・ウォー 1』も近日発売となっています。
(作:チャールズ・ソール、画:ケネス・ロカフォード)
【ニューアティランにて】
ビースト:さて!取り掛かるとしようじゃないか。

インヒューマンズの王都ニューアティランの研究室にて、ビーストは声をあげた。
そのどこか楽し気な姿に、ビーストの助手であるインヒューマンの科学者アイソは思わず質問した。
アイソ:ずいぶん上機嫌ですね。ミュータントが絶滅の危機にあるというのに。
ビースト:しかり。ただ、今回の敵は殺人ロボットでも、不安定な魔女でも、時空の特異点でもない。
ただの化学反応、つまりは科学の領域じゃないか。こと科学に関して言えば、我々人類はどんなことだって可能にしてきた。
アイソ:もう何かアイデアがあるんですね。
ビースト:いや、なにも。ただほら!

ビースト:洞窟の壁に自分たちの姿を刻んだ3万年前の人々にとっては不可能に思えたことも、今ではこの通り、子供の遊びだ。
それもこれもみな、不可能を可能にする科学の力だよ。
インヒューマンズ誕生の引き金であると同時に、ミュータントを殺す疫病M-ポックスの原因となる雲――テリジェンミストを無毒化するために、インヒューマンズのもとで研究する道を選んだミュータントの科学者ビースト。
彼は自分の研究の先に、インヒューマンズとミュータントが手を取りある明るい未来があることを確信していた。
【両種族の現状】
しかしビーストの思い描く理想に反し、インヒューマンズとミュータントの関係は停戦協定の上になりたった不安定なものであった。
今をさかのぼること8か月前、全ミュータントの前でミュータントの平和的団結を説いたサイクロプス。
そんな彼ですが、テリジェンミストのミュータントへの害を知ったとたんに態度を硬化。
テリジェンミストとインヒューマンズの危険性についての憶測まじりの糾弾を、全世界に向けて発信した上に、インヒューマンズたちがミュータントの緊急避難に手を取られているすきに、地球を巡回する2つの巨大なテリジェンミストの1つを破壊したのだ。

自分たちの同胞を増やすテリジェンミストはインヒューマンズにとって、神聖とすらいえる存在。
そんなテリジェンミストが破壊され、怒り心頭のインヒューマンズの前に現れたサイクロプスは、同胞たちを守るために残り一つとなったテリジェンミストも破壊することを宣言。
インヒューマンズの王ブラックボルトの怒りに触れたサイクロプスは、王の力により同胞たちの面前で塵となったのだ、

「理念は死なぬ」という言葉を残して。
この一件により一種即発となったミュータントとインヒューマンズ。しかし両種族のリーダーである2人の女性ストームとメデューサは、争いを由とせず両種族の間で停戦協定を結ぶこととなる。
この協定により、インヒューマンズは残されたテリジェンミストを常に追跡し、その進路にミュータントの反応があれば避難を最優先とすることを約束、事態はひとまずの収束を迎えたかにみえた…
【暗躍するホワイトクイーン】
エマ:理念は死なない…
ビーストが科学の力で、ミュータントたちを救おうとする中、表舞台から姿を消していたホワイトクイーン、エマ・フロストもまたミュータントを救うための、密かな活動を行っていた。
もちろんエマが頼るのは科学の力ではない。
マグニート率いるアンキャニーX-MEN、

過去からやってきたAll-New X-MEN

地獄に作られた避難所に居を構えるエクストラオーディナリーX-MEN

ミュータントの各種勢力に密かにコンタクトをとり、ビーストが失敗した時の"プランB"に向けた協力要請を行っていたのだ。
【一方インヒューマンズも…】
メデューサ:ビーストは信頼に足る人物だわ。でも、全てのミュータントがそうだとは限らない。
いつか、必ずしびれを切らすものが現れる。
我々から戦争の口火を切ることはけしてない。しかし、戦争に勝つ準備は常にしておくように。

ミュータントとインヒューマンズの戦争に向けた準備を進めていたのは、エマだけではなかった。
インヒューマンズ王家もまた、"ミュータントの保護"を理由にテリジェンミストの警護にあたり、ミュータントの戦争に備えていた。
【ビーストの発見】
ビースト:なんということだ!
アイソ:どうかされましたか?

ビースト:・・・いや、なんでもない。そろそろ昼食でも取ろうか?ワシは腹が減って仕方がないよ。
サヴェッジランドに設置した計測器の測定結果を見たビーストは、ミュータントの同胞たちに連絡を取ることを決意する。
それもインヒューマンズには決して知られるように、ひっそりと・・・
************
というわけで、今回はマーベルの冬のクロスオーバー『IvX(インヒューマンズvsX-MEN)』のプレリュードの紹介でした。
ただ実はこの物語には#0とは別にもう一つのプレリュードが存在します。
そのタイトルは『デス・オブ・X』。

昨年のイベント『シークレットウォーズ』終了から、『オールニュー・オールディファレント・マーベル』によるリランチ開始までの間、作中時間で流れた8か月間の空白期間を埋める物語として、人々の口を通してしか語られなかったサイクロプスの最後とインヒューマンズとの確執を描く物語です。
オールニュー・オールディファレント・マーベル開始以降、意図的にその詳細がぼやかされてきたサイクロプスの最後とは、いったいどのようなものであったのか?
実は、物語は事前に明かされていた内容通りに進んでいき、正直管理人は読みながら「わざわざもったいぶってこの内容?」と若干不満でした。
…最後の数ページを読むまでは。
「ブラックボルトとメデューサを襲撃して返り討ちに合う」という物語をなぞっていく『デス・オブ・X』は、最後の数ページに明かされた事実でその意味合いをがらりと変えます。
そして、その影響は本作『IvX』にも色濃く出ており、同じセリフを読んでいても、『デス・オブ・X』を読んだ読者と未読の読者では、そのニュアンスが大きく違って感じることでしょう。
果たして、マーベル世界の2大種族の対立はどこに着地するのか?
この世界に残されたサイクロプスの理念はどうなるのか?
ここ数年のX-MEN系列の大団円としての本作をみなさんもぜひ読んでみてください。
【宣伝(使いまわし)】
久しぶりの更新となると、書くのが大変なのがこのコーナー。
特にこの一か月は、とんでもないタイトルが数多く発表されました。
まずは『バットマン:エターナル<上>』! バットマンに訪れた最大の危機をかつてないスケールで描いた超大作がまさかの翻訳!
通常のTPBで8冊ほどの分量となる内容の前半部分を1冊にまとめての刊行になります。
個人的にも初めて完走した週刊タイトルで、毎週その展開に悶絶しながら読んだ思い入れたっぷりの作品なので、翻訳は嬉しいところです。
続いての驚きは『Y:THE LAST MAN 1』。「謎の伝染病により世界中の男性が死滅。この地球に残された最後の雄となった主人公は…」という、比較的ベタな設定を"今世紀最高のコミック"の1つへと引き上げた作品。
普段はヒーローコミック以外は読まない管理人ですが、アメコミの情報を仕入れていると常に大絶賛と共に耳に入ってくるこの作品が日本語で読める日が来るとは思いませんでした。
そして、こちらも驚きの『BATMAN LOBO / LOBO AUTHORITY:HOLIDAY HELL』!
英国コミックの雄、サイモン・ビズレーの描くバットマンとロボの大騒動が翻訳!
最後に管理人がお勧めしたいのが『アクアマン:王の遺産』と『アクアマン:王の最期』の2冊。
不人気キャラの代名詞であったアクアマンを、一気にDCのトップタイトルへと帰りづかせたジェフ・ジョーンズのアクアマン。
第一巻が発売された時にもちろん期待していましたが、完結編まで一気に刊行されることになりました!
またマーベルで楽しみなのは、『ドクター・ストレンジ:ウェイ・オブ・ウィアード』。昨年より始まったオールニュー・オールディファレント・マーベル路線の初翻訳は、映画の公開が待たれるDr.ストレンジ!
本国でも映画化を控えた時期に始まった企画ということもあり、マーベルのトップクリエーターの共演となっています。
またDr.ストレンジでいえばその誕生譚を再構成した『ドクター・ストレンジ:シーズンワン』も、映画の予習にはぴったりの作品となっております。
また、翻訳作品の続刊となる『ジャスティス Vol.2』『ジャスティス・リーグ:ダークサイド・ウォー 1』も近日発売となっています。
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