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グレイソン(#1-5)

グレイソン(#1-5)
(作:トム・キング&ティム・シーリィ、画:マイク・ジャニン)

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フォーエバーイービル事件の際、「悪のジャスティスリーグ」クライムシンジケートに捕まり、正体を世界中に公開されてしまったナイトウィング。
その後バットマンとヴィラン連合の活躍によって無事救出された彼であったが、世界中に正体を知られヒーローとしてはもはや死に体となってしまう。
そんな彼にバットマンが頼んだ新たな依頼。
それは「ナイトウィングはシンジケートとの戦いで戦死した」と世間を欺き、バットマンすら全容をつかめない謎の諜報組織スパイラルにエージェントとして潜入し、内情を探って欲しいというもの。
かくしてスパイラルの特殊工作員"エージェント37"として、グレイソンの2重スパイの日々が始まる!

という感じで始まったグレイソン誌。
表紙を見てもらうと分かる通り、ノリとしては「おしゃれ(秘)探偵」や「ナポレオン・ソロ」のような60年代の少しレトロなスパイ物のノリ。
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初めは「なるほどね、人気者のディックでスパイ物をやるんだ」くらいの軽い気持ちで読み始めたのですが、これが抜群に面白い!
特に3話目を過ぎたあたりからは毎回神がかり的な面白さで、個人的には今年はじまったオンゴーイングシリーズのなかではベストですね。

特筆すべきなのはその構成。通常アメコミは4-6話程度の短い物語を繰り返しながら少しずつ伏線を積み上げて、最終的なクライマックスに進んでいく大河ドラマ志向の構成が一般的なのですが、グレイソンは今のところ1話完結の話ばかり。
活劇、ノワール、コメディと毎回お話の雰囲気をガラッと変え、その短いお話の中にテーマを語るためのパーツを一部の隙もなく敷き詰めていく様は、まるで良くできた短編集を読んでいるような興奮を読者に抱かせます。

そんなわけで、今回はそんな管理人一押しの作品『グレイソン』の#1から#5までの各話を、お気に入りのシーンを交えながら簡単に紹介していきたいと思います。

【#1 Grayson(グレイソン)】
新米エージェント・グレイソンは相棒である美女ヘレナと共に、危険な人工臓器を体内に埋め込んだ男性を移動中のシベリア鉄道から誘拐することとなる。しかしそこに「ワイルドストーム版バットマン」であるミッドナイターが現れて・・・
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第一話は基本設定説明を兼ねた『007シリーズ』のようなアクション回。

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こちらが美人エージェント、ヘレナ。リブート前のハントレスに当たるキャラです。

【#2 Gut Feeling(虫の知らせ)】
ミッション中の大怪我で戦線を離脱した同僚の後を継ぎ、イギリスの片田舎に向かったディックとヘレナ。
調査の果てにたどりついた秘密の地下室には、ARGUSやチェックメイトといった世界中の諜報組織の制服と、食人の痕跡が残されていた…
#1とは打って変わって『X-File』風のサスペンス物。

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スパイラルが経営する聖ハドリアヌス女学園の授業風景。
なぜに授業中にクロスボウ?なぜに的がデスストローク?
※ちなみにこの学園がどんなところなのかは、小プロから発売中の『バットマン:インコーポレイテッド 』を読むとわかります

【フューチャーズエンド編 Only a Place For Dying】
グレイソン誌を紹介する上で、欠かすことのできないエピソード。
(というか、この話の紹介がしたくて今回の記事を書いたような面もあります)
5年後の未来を舞台にした週刊タイトル『フューチャーズエンド』のタイインですが、本編とは一切関係がなく独立した短編として読むことが可能です。
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「ヘレナによるディックの絞首刑執行」という衝撃のラストシーンから、1ページずつ時間が遡っていく凝った構成となっており、読者はディック死亡の瞬間から、ディックのエージェントとしての活躍、ナイトウィング/ロビン時代の思い出、そしてロビン誕生のきっかけとなった両親の事故の瞬間と、彼の歴史を逆回しで辿って行くことになります。

その逆回しの時間の中に作者は2重3重ものトリックを施しており、最初は単純であったり意味不明であったりした台詞がページをめくるにつれてその本当の意味を明かしていく様は圧巻の一言です。
そして作者が仕掛けたトリックを全て解きほぐした読者は、コミックには掲載されなかった"0ページ目"の存在をはっきりと感じることとなります。
(余談ですが、本国の某ニュースサイトはこの最後にして最大のトリックを解き明かせずに酷評のレビューを載せたため、多くのファンから失笑を買いました。逆に言うと、それほど最後のトリックは巧妙に隠されているのです。)

20数ページのコミックでありながらよくできた短編小説を読むような興奮を味わえる本作は、個人的には今年読んだコミックの中の"ベストシングルイシュー"と言っても良いかもしれません。
(これまた余談ですが、『マルチバーシティ:パックス・アメリカーナ』とどちらがベストか非常に悩むところです)

【#3 The Gun Goes Off(撃鉄は落とされた)】
ディックは銃口にカメラを仕込みそれを視神経と直結させた盲目の殺し屋オールドガンを追う。
ターゲットとの対決を視野に入れ銃の携帯を命令されるディックだが、本人はバットマンの教えもあり銃の使用に拒否感を隠せない様子。
そして追跡を続ける中で、ディックは血なまぐさい世界に生きるオールドガンに唯一つ残された堅気の世界への未練を知る…
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今回は裏社会に生きる男女の悲哀を描いた『男たちの挽歌』のようなノワール調の物語。
オールドガンの背負う悲しみとその末路には、人生の皮肉を感じずにはいられません。

【#4 The Raid(襲撃)】
学園内に謎のイケメン(ディックのことです)が住んでいることを知った聖ハドリアヌス女学園の女生徒達。
退屈な学園生活に飽き飽きした彼女たちは、パンティレイド(下着泥棒)ならぬ"マン"ティレイド(男性下着泥棒?)を決行する。
ディックの下着に危険が迫る!!
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前号とはうってかわったコメディ回。
この事件のせいで学園の生徒に存在を知られてしまったディックは、カモフラージュの為にゲイのフランス人体育教師として教鞭を振るうはめに・・・

ところで管理人はこの話のオープニングが大好きです。

(新任務のブリーフィングをうけて)
ヘレナ:ディック、前回の事件のことは・・・(前号のオールドガンの事件のこと)
ディック:あれは任務だった、もう忘れたよ。
ヘレナ:でも・・・
ディック:大丈夫、さぁ新しい任務に集中しよう。
僕が集中したってことは任務は終わったも・・・
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ディック:・・・同然だ!


なんと2ページ目にして任務完了。
余計なことを一切省く、グレイソン誌の特徴を象徴するシーンです。

【#5 We All Die at Dawn(全員、夜明けに死す)】
生まれたばかりの赤ん坊と共に砂漠のど真ん中に不時着したディック&ヘレナと、宿敵ミッドナイター。
残された僅かな水を頼りにディックは無謀な砂漠縦断を決意する。赤ん坊の命を救うために!
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アクションシーンや場面転換などが一切なく、ひたすら続く会話劇の中で、小さな命を前にしたディックの強さと優しさが語られる回。
ちなみにタイトルは「バットマン:ブラックグローブ」に収録された60年代の作品『ロビン、夜明けに死す』のパロディとなっており、内容もこの話を踏まえた物となっております。


ヒーローでありながら冷酷に赤ん坊を身捨てることを主張してくるミッドナイターとのやり取りが燃える。
ミッドナイター:だめだ…これ以上は…進めない。
何故だ? 俺は強化人間。お前はただの男のはず・・・
・・・お前、いったい何を隠している!

ディック:ボクにはこの子がいる・・・

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・・・渋い!(それに引き換えこのミッドナイターとかいう90年代野郎は!)

【オマケ】
以上、グレイソン全話紹介なんていう無謀なことをやってしまいましたが、それもこれもグレイソンが(予想外に)面白いせい。
一話完結ですので、気になった話があれば是非その話だけでも手に取ってみてください。(フューチャーズエンドは特にお勧め!)
また駄目押しなのですが。ディックを語る上で避けて通れないのが、その女性人気。
毎号、なんだかんだと理由を付けてはディックのセクシーショットが入るあたり、ライターさんもわかってる!

そんなサービスシーンの中で一番気に入ったのが#3のこちらのシーン。
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(銃の訓練中)
女スパイ:銃を目標に向けて、そう目標にゆっくり滑りこませるように・・・
銃の事ばかり考えちゃだめ、ちゃんと相手の事を考えるの。
ゆっくり・・・そう!
準備できた?でも発射したいからって、すぐ発射しちゃダメよ。もうちょっと我慢できる?私のために頑張れる?ボクちゃん
グレイソン:僕の名前は…
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女スパイ:ディック!!


はい、アウト!狙ってやってるでしょ(笑)

【宣伝】(使い回し)
気になる翻訳本はいかのとおり。
まずは、なんといっても「ニューアベンジャーズ:パワーロス」。管理人が大好きなヴィラン、フードが再登場します!
また鬼才マイク・ミニョーラによる短編集「驚異の螺子頭と興味深き物事の数々」は、聞くだけでワクワクするそのタイトルに惹かれて購入予定。また、絶好調のデッドプールについても新刊「デッドプール:デッド・ヘッド・リデンプション(仮) 」の発売がアナウンスされました。


またDCでいえば何といっても、鬼才モリソン(鬼才ばっかり・・・)によるバットマンサーガの集大成、「バットマン・インコーポレイテッド:デーモンスターの曙光」と「ゴッサムの黄昏」の2ヶ月連続刊行ですね!
こちらの作品「バットマン:インコーポレイテッド」の直接の続編となります。
バットマンという物語の進化の歴史を真摯にみつめなおし、進化の方向性としてあり得たであろうもう一つバットマン像を提示するモリソンの野心作が遂に完結です。

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初めまして

いつも記事を読ませていただいてます。
いきなりこのような事を質問するのは失礼かもしれませんが、管理人さんはどうやってアメコミを入手しているのか詳しく教えてもらえませんか?
2011年から始まったバットマンが読みたくていろいろ調べたのですが、僕ではいい方法が見つけられませんでした。よろしければご助力お願いします。

ハーレイちゃんかわいい

どもでふ
この前アキバのブリスターでハーレイちゃんのholiday annual買って初めて洋書デビューしました。
セリフは全く分かりませんが、ハーレイちゃんの優しさと可愛さを堪能できました。


グレイソン誌新手のスパイ物ぽくて面白そうですね!
バットマン周辺は長く連載しながらもマンネリしないのは凄いと思います。

No title

グレイソン誌、とても面白いですよね。
新しいことをするだけでなく、ディックの魅力ある人間性を引き出しているのが素晴らしい。いつまでこの路線でいくのかは分かりませんが、いっそティムあたりにこれまでのポジションを代わってもらって、数年くらいスパイ活動をしていてもいいんじゃないでしょうか(笑)

Re: 初めまして

>リッキーさん
はじめまして。
私は原書については、ほぼすべて電子書籍で読んでいます。(Comixologyというサービスです)
紙媒体ではないことさえ割り切れれば、価格、早さとも他の追随を許さないと思っています。
また、2011年からのバットマンであれば小プロから、「梟の法廷」「梟の街」「喪われた絆」と翻訳本が順次発売されているので、それを読むのも良いかもしれませんね。

Re: ハーレイちゃんかわいい

> ガットマンさん
こんにちは。ハーレイクインは現在、大人気のようですね。
実は私は買っていないのですが、部数的にも評価的にも非常に高く興味深々です。

Re: No title

> アイスコーヒーさん
グレイソン面白いですよね!
自分もせっかく「スパイヒーロー」というDC世界唯一といってもいい個性を手に入れたのだから、このまま突き進んで欲しいと思っています。
…が、やはり「元に戻って欲しい」という声も多そうなので、今後の展開をかたずをのんで見守っています(笑)
プロフィール

NOB-BON

Author:NOB-BON
X-men生まれSpawn育ちを地でいく、90年代アメコミバブルの残党。
しばらくの間、アメコミは翻訳本を買う程度だったのが、最近のデジタルコミックの手軽さにひかれ、本格的に復活しました。

基本的にMarvelメインですが、DCのリランチを機に自分の中でDCブームが来てるので、しばらくはDCの話題続くかも。
しばらくどころか完全にDC派に転びました。

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