マルチバーシティ:ソサエティ・オブ・スーパーヒーローズ
マルチバーシティ:ソサエティ・オブ・スーパーヒーローズ
(作:グラント・モリソン、画:クリス・スプラウス)
今回は鬼才グラント・モリソンのマルチバーシティの第2話「The Multiversity: The Society of Super-Heroes: Conquerors of the Counter-World」を紹介します。
まずはこの物語の主人公となるヒーロー側の登場人物を紹介。
イモータルマン

世界を股に掛ける伝説的冒険家にして、マンハッタン島の大部分の土地を保持する資産家。
イメージ的にはパルプ小説が生んだ最高のヒーロー、"シャーロック・ホームズの頭脳、ターザンの身体能力、アブラハム・リンカーンの人格的長所を併せ持つ男"ドク・サヴェッジでしょうか?
時と場所を問わず事件あるところに颯爽と現れる彼の正体は、原始時代から生き続けるDC世界の最初のヒーロー「アンスロ」

…なのですが、作中では明言されませんが、物語を丁寧に読んでいくと彼のもう一つの正体が読者にだけわかる仕掛けになっています。
管理人も始めに通読した時は「このイモータルマンってあのキャラっぽいな」と思っただけだったのですが、本作のスタッフ・クレジットをみて、その予想は確信に変わりました。
レディ・ブラックホーク

女性だけで構成される精鋭飛行隊ブラックホークスのリーダーにして、同隊のエースパイロット。
イモータルマンとは過去の事件でロマンスがあった模様。
ドク・フェイト

世界最高の魔術師。異次元世界の衝突現象"インカージョン"と、それに伴う次元の征服者ヴァンダルサペッジの侵攻を予見し、ヒーローたちの招集をかける。
ちなみに、本名はイブン・アル・グールでこれは、『キングダム・カム』に登場したバットマンとタリア・アル・グールの間にできた子供と同じ名前。
グリーンランタン(アビン・サー)

地球を含む近隣星域の守護者。自らの外見が地球人に恐怖を呼び起こすことを知っており、陰から地球を守ってきた。
アトム

"もう一人のスーパーマン"アイアン・ムンロを師匠に持つ少年ヒーロー。
不注意にもフェイトの執務室に安置された呪われたコミック「ウルトラ・コミックス」を読んでしまう。
フェイトによって集められた彼らは、悪神ニクズオタンの復活と世界征服を企てるヴァンダルサベッジと、その悪の軍団に対抗するためヒーロー結社「Society of Super-Heroes」を結成する!

…とここまで読んで、「あれ?前回の続きは?」と思われた方も多いのではないでしょうか?
確かに前回紹介した#1では、ニクス・ウォタンを救出するためにユニバースを超えて集められたヒーローたちの物語が繰り広げられましたが、続きにあたる今号では、前号とは打って変わって、パルプ小説風世界を舞台にした冒険活劇が繰り広げられます。
実はここら辺の当惑は、マルチバーシティの物語が持つ特異な構造に起因します。
マルチバーシティは「6話の独立した短編を、プロローグである#1と、エピローグである#2で挟んだ構造」になっているのです。
簡単に刊行順を示すと以下のような感じでしょうか?
Multiversity#1 ←前回紹介した話。プロローグ。
・Muliversity:The Society of Super-Heroes ←今回紹介した話。独立した短編。
・Muliversity:The Just ←別の世界を舞台にした短編(以下同様)
・Mulivercity:Pax Americana: In Which We Burn
・Mulivercity:Thunderworld Adventures
・Mulivercity:Mastermen
・Mulivercity:Ultraa Comics
Multivercity#2 ←(おそらく)#1の続き。エピローグ。
では"話の筋を追う"という意味では、今回紹介した話を読む必要はないのでしょうか?
管理人はそうは思いません。
今回の物語で、ヴァンダルサベッジが復活させようとする悪神ニクズオタンとは明らかに"スーパージャッジ"ニクス・ウオタンの事ですし、前号のラスト以降、ニクスがどのような末路を辿ったのかもフェイトが語る神話からおぼろげながら知ることができます。
(「物語は別世界における現実だ」という前号のキャプテン・キャロットのセリフを思い返してください)

また「ヒーローがそのヒーロー性を失った結果、悪神が復活する」という意味で、今号と#1の内容との相似性を指摘する声もあり、その観点でいえば前号の悪役ジェンドリーと今号のヴァンダルサベッジは「ヒーローの心を挫く」という共通の目的で動いているともとれます。
これらのことを勘案すると、表面上はそれぞれ独立している6本の短編は、裏側では強固に結びついており、それらを読むことで浮かび上がってくるもう一つの物語もMultivercityを構成する重要な物語であるといえるのではないでしょうか?
何よりも、私が本作を読み続ける理由としてあげたいのが、前号から引き続き読者に向けて送られてくる謎の人物からの救援メッセージ。
今回も主人公たち「Society Of Super-heroes」の頭文字を借りて送られてきたそのメッセージに気が付きながら、その声を無視することは、正義の心を愛するヒーローコミックの愛好者としてできない相談でしょう(笑)

【おまけ】
実は今号について、「同日に発売されたマーベルコミックスのアベンジャーズと密かにクロスオーバーしているのでは?」という面白い噂があります。偶然の一致で片づけるには惜しい内容なので、自分の中ではマーベル世界とDC世界は密かに繋がっていると思うことにします(笑)
【宣伝】(使い回し)
翻訳本でめぼしいものは以下の通り。管理人的にはモリソン・バットマンの集大成である「バットマン:インコーポレーテッド」が何と言っても楽しみです。
またマーベル/DC問わず、ヒーロー物のアメコミが好きな方に是非読んで欲しいのが「アストロシティ:ライフ・イン・ザ・ビッグシティ」。ヒーローがいる世界での日常を活き活きと描いた、超傑作です。是非続刊も翻訳されますように!
(作:グラント・モリソン、画:クリス・スプラウス)
今回は鬼才グラント・モリソンのマルチバーシティの第2話「The Multiversity: The Society of Super-Heroes: Conquerors of the Counter-World」を紹介します。
まずはこの物語の主人公となるヒーロー側の登場人物を紹介。
イモータルマン

世界を股に掛ける伝説的冒険家にして、マンハッタン島の大部分の土地を保持する資産家。
イメージ的にはパルプ小説が生んだ最高のヒーロー、"シャーロック・ホームズの頭脳、ターザンの身体能力、アブラハム・リンカーンの人格的長所を併せ持つ男"ドク・サヴェッジでしょうか?
時と場所を問わず事件あるところに颯爽と現れる彼の正体は、原始時代から生き続けるDC世界の最初のヒーロー「アンスロ」

…なのですが、作中では明言されませんが、物語を丁寧に読んでいくと彼のもう一つの正体が読者にだけわかる仕掛けになっています。
管理人も始めに通読した時は「このイモータルマンってあのキャラっぽいな」と思っただけだったのですが、本作のスタッフ・クレジットをみて、その予想は確信に変わりました。
レディ・ブラックホーク

女性だけで構成される精鋭飛行隊ブラックホークスのリーダーにして、同隊のエースパイロット。
イモータルマンとは過去の事件でロマンスがあった模様。
ドク・フェイト

世界最高の魔術師。異次元世界の衝突現象"インカージョン"と、それに伴う次元の征服者ヴァンダルサペッジの侵攻を予見し、ヒーローたちの招集をかける。
ちなみに、本名はイブン・アル・グールでこれは、『キングダム・カム』に登場したバットマンとタリア・アル・グールの間にできた子供と同じ名前。
グリーンランタン(アビン・サー)

地球を含む近隣星域の守護者。自らの外見が地球人に恐怖を呼び起こすことを知っており、陰から地球を守ってきた。
アトム

"もう一人のスーパーマン"アイアン・ムンロを師匠に持つ少年ヒーロー。
不注意にもフェイトの執務室に安置された呪われたコミック「ウルトラ・コミックス」を読んでしまう。
フェイトによって集められた彼らは、悪神ニクズオタンの復活と世界征服を企てるヴァンダルサベッジと、その悪の軍団に対抗するためヒーロー結社「Society of Super-Heroes」を結成する!

…とここまで読んで、「あれ?前回の続きは?」と思われた方も多いのではないでしょうか?
確かに前回紹介した#1では、ニクス・ウォタンを救出するためにユニバースを超えて集められたヒーローたちの物語が繰り広げられましたが、続きにあたる今号では、前号とは打って変わって、パルプ小説風世界を舞台にした冒険活劇が繰り広げられます。
実はここら辺の当惑は、マルチバーシティの物語が持つ特異な構造に起因します。
マルチバーシティは「6話の独立した短編を、プロローグである#1と、エピローグである#2で挟んだ構造」になっているのです。
簡単に刊行順を示すと以下のような感じでしょうか?
Multiversity#1 ←前回紹介した話。プロローグ。
・Muliversity:The Society of Super-Heroes ←今回紹介した話。独立した短編。
・Muliversity:The Just ←別の世界を舞台にした短編(以下同様)
・Mulivercity:Pax Americana: In Which We Burn
・Mulivercity:Thunderworld Adventures
・Mulivercity:Mastermen
・Mulivercity:Ultraa Comics
Multivercity#2 ←(おそらく)#1の続き。エピローグ。
では"話の筋を追う"という意味では、今回紹介した話を読む必要はないのでしょうか?
管理人はそうは思いません。
今回の物語で、ヴァンダルサベッジが復活させようとする悪神ニクズオタンとは明らかに"スーパージャッジ"ニクス・ウオタンの事ですし、前号のラスト以降、ニクスがどのような末路を辿ったのかもフェイトが語る神話からおぼろげながら知ることができます。
(「物語は別世界における現実だ」という前号のキャプテン・キャロットのセリフを思い返してください)

また「ヒーローがそのヒーロー性を失った結果、悪神が復活する」という意味で、今号と#1の内容との相似性を指摘する声もあり、その観点でいえば前号の悪役ジェンドリーと今号のヴァンダルサベッジは「ヒーローの心を挫く」という共通の目的で動いているともとれます。
これらのことを勘案すると、表面上はそれぞれ独立している6本の短編は、裏側では強固に結びついており、それらを読むことで浮かび上がってくるもう一つの物語もMultivercityを構成する重要な物語であるといえるのではないでしょうか?
何よりも、私が本作を読み続ける理由としてあげたいのが、前号から引き続き読者に向けて送られてくる謎の人物からの救援メッセージ。
今回も主人公たち「Society Of Super-heroes」の頭文字を借りて送られてきたそのメッセージに気が付きながら、その声を無視することは、正義の心を愛するヒーローコミックの愛好者としてできない相談でしょう(笑)

【おまけ】
実は今号について、「同日に発売されたマーベルコミックスのアベンジャーズと密かにクロスオーバーしているのでは?」という面白い噂があります。偶然の一致で片づけるには惜しい内容なので、自分の中ではマーベル世界とDC世界は密かに繋がっていると思うことにします(笑)
【宣伝】(使い回し)
翻訳本でめぼしいものは以下の通り。管理人的にはモリソン・バットマンの集大成である「バットマン:インコーポレーテッド」が何と言っても楽しみです。
またマーベル/DC問わず、ヒーロー物のアメコミが好きな方に是非読んで欲しいのが「アストロシティ:ライフ・イン・ザ・ビッグシティ」。ヒーローがいる世界での日常を活き活きと描いた、超傑作です。是非続刊も翻訳されますように!
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