マーベル・スナップショット:キャプテン・アメリカ
マーベル・スナップショット:キャプテン・アメリカ
(作:マーク・ラッセル/カート・ビュシーク、画:ラモン・ペレス)

おばあさん:なんだって?もう一回言っとくれ。
フェリックス:"ワイヤレス・リモート・コントローラー"ですよ。僕が作ったんです。
これでTVのチャンネルを変えるのに、いちいち立ち上がる必要はなくなりますよ。
おばあさん:おやまぁ! まるでフランスの女王様にでもなっちまった気分だよ。
ありがとう、フェリックス。あんたが大学に行っちまうと寂しくなるねぇ。
フェリックス少年にとって、サウスブロンクスで父が営む電気屋を手伝うことは、平穏な日常の象徴であった。
しかし、その日常は脆くも崩れ去った。

彼の自宅から十数ブロック離れたニューヨークの中心街で、キャプテン・アメリカがマッドサイエンティスト集団A.I.M.と交戦。
A.I.M.が人々の破壊衝動を増幅させる悪魔の爆弾"マッドボム"を起動したのだ。
爆心地から離れたサウスブロンクスの被害は軽微なものであった。
しかし、その"軽微な被害"は確実にフェリックスの人生を破壊したのだ。

マッドボムの影響を受け母の手で殺害された、産まれたばかりの弟。
息子を殺した罪の意識で塞ぎこみ、以前の快活さを失ってしまった母。
医療費でかさむ出費と経済の落ち込みで、大学進学の道も絶たれた。
閉塞感に包まれたフェリックスの店のTVでは、キャプテン・アメリカが晴れ晴れした表情で事件のあらましを語る。

キャプテン・アメリカ:…かくしてマッドボム事件は無事解決されました。もう心配はいりません。アメリカよ壮健たれ!
無事解決?フェリックスの人生は今も破壊されたっきりなのに!

そんなある日、彼の店に1人の男が現れる。さる研究機関の採用担当だと名乗るその男は、フェリックスに研究所への参加を条件に大学の学費の援助を申し出る。
その時フェリックスの選ぶ道は一つしかなかった。たとえその研究所が、先進Advanced Idea Mechanics…A.I.M.だとわかっていても!

**************************
というわけで、今回はマーベルの連作短編シリーズ『マーベル・スナップショット』の紹介でした。
この連作のテーマはずばり、"マーベルコミックのページとページの間の物語"と言えるでしょう。

つまり本作は、普段のコミックで描かれような派手な大事件ではなく、もっと日常的な物語に光をあて、世界から見れば小さなその物語が、1人の人生の中で大きく輝く瞬間を描く作品なのです!
……と、実体の伴わない言葉を重ねるよりも、この作品を端的に表す言葉があります。
つまりこの作品は『マーベル版アストロシティ』なのです。

90-00年代にかけて「ヒーロー世界のリアル」を描き、ヒーローコミックを暗い闇から引き揚げた記念碑的作品『アストロシティ』。
そのテーマと歴史上の意味合いは以前このブログで紹介した通りです。
今回紹介した『マーベル・スナップショット』は、そんな『アストロシティ』の作者であるカート・ビュシークを迎え入れ、アストロシティ的観点でマーベルの歴史を再構築する試みなわけです。

ちなみに、『X-MEN:マーベル・スナップショット』では、孤児院で暮らす若き日のサイクロプスが、初めてリード・リチャーズに会う話です。
これがまたいい話なんだ…
【宣伝】(使いまわし)
先ず注目なのは先日発売されたばかりの『バットマン:ラストナイト・オン・アース』です。『バットマン:梟の法廷』以降、DCの先頭を走り続けてきたスナイダー&カプロのバットマンの集大成となる作品。陽気に喋り捲るジョーカーの生首とバットマンが、地獄と化した未来のDC世界を巡る強烈なヴィジュアルが最高。
そして地獄といえば、世界の崩壊を書かせたらこの人の右を出る人はいないと思われる地獄コミックの旗手トム・テイラーの『ディシースト』がまさかの翻訳。こちらは反生命方程式によるゾンビ禍に襲われたDC世界を描いた作品。
トム・キングの『Mr.ミラクル』が1冊に全話を詰め込む形で翻訳決定。本国で発売後に熱狂を以てファンから受け入れられた本作は、アイズナー賞を横綱相撲で受賞したのは勿論の事、某大学の教科書にも選定されるなど、まさに"21世紀のマスターピース"の呼び名に恥じない作品となっています。
続いては『スーパーマン:スマッシュ・ザ・クラン』。こちらは「スーパーマンが人種差別団体KKKと戦った」という"実話"をベースとした作品。なぜこれが実話なのかという点は、ぜひ読んで確かめて貰うとして、アイズナー賞受賞の実力派ライターのジーン・ルエン・ヤンの物語が、グリヒルの可愛らしいアートで楽しめる素晴らしい作品ですので、是非!
また『Mr.ミラクル』と同じくDCの大人向けレーベルから発売された『ジョーカー:キラー・スマイル』も翻訳が決定。
ジョーカーを研究していくうちにその狂気に染まっていく精神科医を描いたサイコスリラー。近年様々なヒットを飛ばすクリエーターコンビ、ジェフ・レミーアとアンドレア・ソレンティーノの作品です。(ちなみに当ブログでもこのコンビの初期の名作『グリーンアロー』を紹介してますl)
続いてマーベル関係。管理人的に思い入れが強いのが『キャプテン・アメリカ:スティーブ・ロジャース/サム・ウィルソン ロード・トゥ・シークレット・エンパイア』。「ハイルヒドラ」の一言でネットを賑わせたヒドラキャップの誕生のあらましと、その基本設定を伝えるオムニバスで、その名の通り大型イベント『シークレットエンパイア』の導入的作品です。
『スパイダーマン:ヴェノム・インク』は、シンビオートに侵されたニューヨークの裏社会に立ち向かう、スパイダーマン/ヴェノム/エージェント・ヴェノムの共闘を描く作品。「戦争で両脚を失ったフラッシュがシンビオートの力でスーパースパイへと変身する」という非常にかっこいい設定のエージェント・ヴェノムが翻訳版に初参戦ということで、そこらへんも見どころ。
そして最後は久々の翻訳となるデッドプール出演作『デッドプール VS. パニッシャー』。寡黙な戦士と冗舌な傭兵という水と油の組み合わせが楽しそうな作品
(作:マーク・ラッセル/カート・ビュシーク、画:ラモン・ペレス)

おばあさん:なんだって?もう一回言っとくれ。
フェリックス:"ワイヤレス・リモート・コントローラー"ですよ。僕が作ったんです。
これでTVのチャンネルを変えるのに、いちいち立ち上がる必要はなくなりますよ。
おばあさん:おやまぁ! まるでフランスの女王様にでもなっちまった気分だよ。
ありがとう、フェリックス。あんたが大学に行っちまうと寂しくなるねぇ。
フェリックス少年にとって、サウスブロンクスで父が営む電気屋を手伝うことは、平穏な日常の象徴であった。
しかし、その日常は脆くも崩れ去った。

彼の自宅から十数ブロック離れたニューヨークの中心街で、キャプテン・アメリカがマッドサイエンティスト集団A.I.M.と交戦。
A.I.M.が人々の破壊衝動を増幅させる悪魔の爆弾"マッドボム"を起動したのだ。
爆心地から離れたサウスブロンクスの被害は軽微なものであった。
しかし、その"軽微な被害"は確実にフェリックスの人生を破壊したのだ。

マッドボムの影響を受け母の手で殺害された、産まれたばかりの弟。
息子を殺した罪の意識で塞ぎこみ、以前の快活さを失ってしまった母。
医療費でかさむ出費と経済の落ち込みで、大学進学の道も絶たれた。
閉塞感に包まれたフェリックスの店のTVでは、キャプテン・アメリカが晴れ晴れした表情で事件のあらましを語る。

キャプテン・アメリカ:…かくしてマッドボム事件は無事解決されました。もう心配はいりません。アメリカよ壮健たれ!
無事解決?フェリックスの人生は今も破壊されたっきりなのに!

そんなある日、彼の店に1人の男が現れる。さる研究機関の採用担当だと名乗るその男は、フェリックスに研究所への参加を条件に大学の学費の援助を申し出る。
その時フェリックスの選ぶ道は一つしかなかった。たとえその研究所が、先進Advanced Idea Mechanics…A.I.M.だとわかっていても!

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というわけで、今回はマーベルの連作短編シリーズ『マーベル・スナップショット』の紹介でした。
この連作のテーマはずばり、"マーベルコミックのページとページの間の物語"と言えるでしょう。

つまり本作は、普段のコミックで描かれような派手な大事件ではなく、もっと日常的な物語に光をあて、世界から見れば小さなその物語が、1人の人生の中で大きく輝く瞬間を描く作品なのです!
……と、実体の伴わない言葉を重ねるよりも、この作品を端的に表す言葉があります。
つまりこの作品は『マーベル版アストロシティ』なのです。

90-00年代にかけて「ヒーロー世界のリアル」を描き、ヒーローコミックを暗い闇から引き揚げた記念碑的作品『アストロシティ』。
そのテーマと歴史上の意味合いは以前このブログで紹介した通りです。
今回紹介した『マーベル・スナップショット』は、そんな『アストロシティ』の作者であるカート・ビュシークを迎え入れ、アストロシティ的観点でマーベルの歴史を再構築する試みなわけです。

ちなみに、『X-MEN:マーベル・スナップショット』では、孤児院で暮らす若き日のサイクロプスが、初めてリード・リチャーズに会う話です。
これがまたいい話なんだ…
【宣伝】(使いまわし)
先ず注目なのは先日発売されたばかりの『バットマン:ラストナイト・オン・アース』です。『バットマン:梟の法廷』以降、DCの先頭を走り続けてきたスナイダー&カプロのバットマンの集大成となる作品。陽気に喋り捲るジョーカーの生首とバットマンが、地獄と化した未来のDC世界を巡る強烈なヴィジュアルが最高。
そして地獄といえば、世界の崩壊を書かせたらこの人の右を出る人はいないと思われる地獄コミックの旗手トム・テイラーの『ディシースト』がまさかの翻訳。こちらは反生命方程式によるゾンビ禍に襲われたDC世界を描いた作品。
トム・キングの『Mr.ミラクル』が1冊に全話を詰め込む形で翻訳決定。本国で発売後に熱狂を以てファンから受け入れられた本作は、アイズナー賞を横綱相撲で受賞したのは勿論の事、某大学の教科書にも選定されるなど、まさに"21世紀のマスターピース"の呼び名に恥じない作品となっています。
続いては『スーパーマン:スマッシュ・ザ・クラン』。こちらは「スーパーマンが人種差別団体KKKと戦った」という"実話"をベースとした作品。なぜこれが実話なのかという点は、ぜひ読んで確かめて貰うとして、アイズナー賞受賞の実力派ライターのジーン・ルエン・ヤンの物語が、グリヒルの可愛らしいアートで楽しめる素晴らしい作品ですので、是非!
また『Mr.ミラクル』と同じくDCの大人向けレーベルから発売された『ジョーカー:キラー・スマイル』も翻訳が決定。
ジョーカーを研究していくうちにその狂気に染まっていく精神科医を描いたサイコスリラー。近年様々なヒットを飛ばすクリエーターコンビ、ジェフ・レミーアとアンドレア・ソレンティーノの作品です。(ちなみに当ブログでもこのコンビの初期の名作『グリーンアロー』を紹介してますl)
続いてマーベル関係。管理人的に思い入れが強いのが『キャプテン・アメリカ:スティーブ・ロジャース/サム・ウィルソン ロード・トゥ・シークレット・エンパイア』。「ハイルヒドラ」の一言でネットを賑わせたヒドラキャップの誕生のあらましと、その基本設定を伝えるオムニバスで、その名の通り大型イベント『シークレットエンパイア』の導入的作品です。
『スパイダーマン:ヴェノム・インク』は、シンビオートに侵されたニューヨークの裏社会に立ち向かう、スパイダーマン/ヴェノム/エージェント・ヴェノムの共闘を描く作品。「戦争で両脚を失ったフラッシュがシンビオートの力でスーパースパイへと変身する」という非常にかっこいい設定のエージェント・ヴェノムが翻訳版に初参戦ということで、そこらへんも見どころ。
そして最後は久々の翻訳となるデッドプール出演作『デッドプール VS. パニッシャー』。寡黙な戦士と冗舌な傭兵という水と油の組み合わせが楽しそうな作品
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