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ストレンジ・アドベンチャーズ#1-2

ストレンジ・アドベンチャーズ#1-2
(作:トム・キング、画:ミッチ・ゲラッズ&ドク・シャーナー)

【ヒーローの凱旋】

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女性キャスター:今日のゲストは、アメリカの……やだ、彼ってまだアメリカ人だったかしら?
男性キャスター:もちろんさ、彼が"あっち"で何を成し遂げようがね。
女性キャスター:そのとおりね。それでは改めまして。
今日のゲストはアメリカのヒーローでもあり、世界のヒーローでもあり、もちろん宇宙のヒーローでもあるこの方。
アダム・ストレンジさんの登場です!


ラーン星での冒険を終え、地球に帰還したアダム・ストレンジはヒーローとして文化人として忙しい日々を送っていた。
自身が体験したラーン星での日々を胸躍る冒険譚として描きつつ、ラーン星を襲った侵略種族ピクットの脅威に警鐘を鳴らす彼の自伝が大ヒットしたのだ。

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読者:あの、先ずはお礼を言わせてください。あなたが娘さんへの思いを綴られた箇所、私にとって本当に救いになったんです。
私も、大事な人を亡くしたばかりだったから…
アダム:ありがとう。サインしても良いかな?


サイン会のために全国の書店を精力的に回るストレンジ。
そんなある日、サイン会に1人の男が現れる。

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男:俺はこのピクットって奴らも、オマエのあそこでの所業も知ってんだぞ、この嘘つき野郎め。
オマエのせいで何人死んだ?何人が拷問された?いったいオマエは何人分の墓穴を掘り腐ったんだ!?


大声でアダム・ストレンジの異星での蛮行を騒ぎ立てる男。
その様子はサイン会の参加者によってネットに流され、多くの人が男の告発の内容を知ることとなる。
しかし、だれも男の発言を気にも留めなかった。
……その男が何者かによって殺害され、その死因が地球には存在しない技術によって発せられた熱線、例えば光線銃によるものだと断定されるまでは。

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ひとたびアダム・ストレンジに疑いの目が向け始めたられると、世間は容赦がなかった。
彼の殺人容疑だけではなく、彼がラーン星で行ったと主張する英雄的行為そのものの真偽すら、人々は疑問を抱き始めたのだ。
事態を重く見たジャスティスリーグは、アダム・ストレンジと面識のない第三者による調査を始めることを決定する。

リーグが調査を依頼した男とは、"世界で三番目に賢い男"、"フェアプレイの信奉者"、Mr.テリフィックであった。

【Mr.テリフィック登場】

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Tスフィア:トルクメニスタンの2015年の国民貯蓄率は?
Mr.テリフィック:GDPベースで18.9%
Tスフィア:正解

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Tスフィア:三角法の考案者と、彼の名がつけられた算術理論とは?
Mr.テリフィック:ナスィールッディーン・トゥースィー。彼は"トゥースィーの対円"と呼ばれるモデルを用いて、天動説における惑星運動を計算した。
Tスフィア:正解

自身の知性の限界を探るように、行住坐臥いかなる時でも、自身の開発した万能装置Tスフィアからの問題に答え続けるテリフィック。
しかし、彼はアダム・ストレンジの調査依頼に悩んでいた。

人々はアダム・ストレンジを愛している。赤と白に輝くコスチュームを、背中に背負ったジェットパックを。
子供たちだって彼の笑顔がプリントされたランチボックスを買い求める。彼は完璧なヒーローだ。
一方、自分は違う、彼が金メダルを何個獲得しようが、大発明を何回しようが、世界を何回救おうが、人々は決して彼を愛さない。彼の顔をランチボックスにプリントしたりしない。
Mr.テリフィックが彼を有罪と言おうが、無罪と言おうが、世間はそれを快く思わないだろう。
人々は、テリフィックのような人間がストレンジのような人間を裁くことなど求めていないのだ。

バットマン:その通りだ。でもそれが真実以上に大事な事か?

自らの懸念を一笑に付すバットマンの一言に、アダム・ストレンジの調査を受けることを決意するMr.テリフィック。
そして、調査の第一歩としてアダム・ストレンジの自伝を読み終えたMr.テリフィックは、自伝の序文に立ち返る。

彼はそこに、この本に存在するただ一つの嘘を見つけたのだ。

「戦争で失った娘に捧ぐ。僕の人生は哀しみと共にある」

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【対決の朝】
アダム・ストレンジとの初対面の日の朝。身づくろいをしながらテリフィックはTスフィアに命令する。

テリフィック:私の知らない事を聞いてみろ。
いつものように忠実にテリフィックの命令を実行するTスフィアは、彼が知らない、知ることを拒否した知識を問いかける。
Tスフィア:あなたの妻と共に死んだ胎児の性別は?


Tスフィアの質問を初めて無視したテリフィックは、変わらず様子で対面の準備を進める。

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やがて、ストレンジの自宅の前でがっちりと握手を交わす2人。そしてそれは真実と"ポスト真実"を巡る現代の戦争の始まりを意味していた……

******************
というわけで、今回は数年でトップライターの座に駆け上った鬼才トム・キングによる『ストレンジ・アドベンチャーズ』の紹介でした。

今回の主人公であるアダム・ストレンジは、長い歴史を誇るDCのSFヒーロー。
しかし、アダム・ストレンジの源流となる「突如、異世界に身を置くことになった主人公が、その異世界で英雄になっていく」というパルプ小説の王道パターンは、近年"西側諸国による植民地支配のメタファー"とも捉えられる事も多いのもまた事実。
本作では、そういった理想と現実のギャップを描くべく、アダム・ストレンジの自伝に描かれている惑星ラーンでの物語はドク・シャーナーの陽性のアートで、
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一方、地球を舞台にした物語はミッチ・ゲラッズによるどこか陰鬱なアートで描かれることになります。
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始まったばかりですが、既に名作のにおいのぷんぷんする本作。
内容に反して意外にも英語は簡単ですので、翻訳まで待てない方は是非どうぞ!
(いや、この時点では翻訳の発表は一切ないですが、自分は確信しています)

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今回紹介した作品の電子版はこちら。


翻訳本では『バットマン:ラストナイト・オン・アース』の予約が開始。
「バットマンがジョーカーの生首をお供に荒廃した未来のDC世界を巡る」という眩暈がしそうな粗筋ながら、『梟の法廷』から開始したスナイダー&カプロのバットマンの集大成となる作品。
また映画に合せて『ブラック・ウィドウ:イッツィ・ビッツィ・スパイダー』の予約も開始。こちらは映画に登場する"2代目ブラックウィドウ"エレーナ・ベロワとナターシャの対決を描いた中編2作が収録。
発表後に発売日が延び延びになっていた『マーベル・エンサイクロペディア』も遂に8月に発売。前回発売された同様の事典は、速攻で完売しプレミア本になってしまったので、欲しい方はお見逃しなく。



また、マーベル初の大型イベント『マーベルスーパーヒーローズ:シークレット・ウォーズ 2』も第二巻の予約が開始。
今月末発売の1巻とあわせてどうぞ。
『トランスフォーマー:モア・ザン・ミーツ・ジ・アイ』も順調に刊行が進み、来月には3巻が発売する予定。


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サベッジ・アベンジャーズ #1-6

(今回は軽くいかせてもらいます。)

サベッジ・アベンジャーズ
(作:ゲリー・デュガン、画:マイク・デオダートJr.)
"SAVAGE(野蛮な)"という形容詞がぴったりなこのタイトル。
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メンバーは上から、Dr.ブードゥー、パニッシャー、エレクトラ、ヴェノム、ウルヴァリン、コナン。
「コナン?」と疑問に思われた方、想像の通りです。
このコナンは、映画『コナン・ザ・グレート』や『コナン・ザ・バーバリアン』で知られるあの蛮人コナンです。

実は少し前にマーベルはダークホーク社が持っていた蛮人コナンのコミック化権を再取得。
その後しばらくは大人しくコナンの原作世界であるハイボリアを舞台としたコミックを刊行していたのですが、満を持してマーベル世界に引きずり込んだ作品がこの『サベッジ・アベンジャーズ』となります。
(厳密にはコナンがマーベル世界にやってくる話は『アベンジャーズ:ノーロードホーム』です。ですので、本作ではいきなりマーベル世界に居ついたコナンが登場します。)

というわけでマーベル世界において近代文明にもヒーロー文化にも染まらず、あくまで"蛮人"であることを貫くコナンが本作の見どころ。

ちなみにこれがウルヴァリンとコナンの出会い。
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コナン:キンメリアのコナンだ。
ウルヴァリン:……パブストのローガンだ。

 ※パブストは米国のビール会社
このウルヴァリンのしょうもない軽口のお陰で、この後ずっとウルヴァリンはビール会社の広告塔のような扱いに。

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コナン:戦えローガン。パブストの名に懸けて!

それにしても、今回の悪役。いくら邪神復活のために強者を呼び寄せる必要があるからといって、
シンビオートを瓶詰にし…
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ウルヴァリンの旧友を誘拐し…
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パニッシャーの家族の墓を暴き……
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と虎の尾を踏むような行為のつるべ打ち。
物語序盤から「うわ、こいつ死んだな」と、哀れみすら感じちゃいました。




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DC関連では『ジャスティス・リーグ:シックスス・ディメンション』の予約が開始。DCリバースの集大成として先日開始した『ダークナイツ:デスメタル』に直接つながる物語となります。タイトル名で予想が付くように、Mr.Mxyzptlkとバットマイトというコメディ調の物語にしか登場しないキャラクターが、ジャスティスリーグ誌に大真面目に参戦!
続いては『バットマン:アーカム・アサイラム』が各種設定画を追加した増補改訂版となって刊行。現代コミックの魔術師(本物)グラント・モリソンの物語と、現代美術の世界に片足を突っ込んだようなデイブ・マッキーンの画が融合したまさに不朽の名作ですので、未読の方は是非。



マーベル関連では『マーベルスーパーヒーローズ:シークレット・ウォーズ 1』の予約が開始。
こちらは1984年にマーベルが行った初めての超大型クロスオーバー。「玩具メーカーのハスブロとも提携し、絶対に失敗できない企画となったこの作品の勝算を少しでも上げるため、マーケティング調査の結果割り出された子供たちが大好きな単語を2つを組み合わせて"シークレットウォーズ"という名前を付けた」という逸話は有名。
スパイダーマンのブラックコスチューム登場や、ビヨンダーの紹介など、現代のマーベルでも度々引用される物語なので、そういう意味でも気になるタイトル。
続く『ワスプ』は対照的に、現代のコミックシーンを代表するようなタイトル。
初代アントマンの娘、ナディア・ヴァン・ダインと彼女を取り巻く天才科学少女たちを主人公に据えたポップな物語。
「理系の道を選ぶ女の子をエンパワメントする」というテーマがあり、原書では実在の女性科学者のコラムが載ってるらしいのですが、そこら辺が邦訳版ではどうなるのか?


プロフィール

NOB-BON

Author:NOB-BON
X-men生まれSpawn育ちを地でいく、90年代アメコミバブルの残党。
しばらくの間、アメコミは翻訳本を買う程度だったのが、最近のデジタルコミックの手軽さにひかれ、本格的に復活しました。

基本的にMarvelメインですが、DCのリランチを機に自分の中でDCブームが来てるので、しばらくはDCの話題続くかも。
しばらくどころか完全にDC派に転びました。

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