fc2ブログ

ニュー・スーパー・マン #8

ニュー・スーパー・マン #8
(作:ジーン・ルン・ヤン、画:ビリー・タン)

今回は、ジーン・ルン・ヤンの"中華スーパーマン"ことニュー・スーパー・マンの紹介。
このタイトルを紹介するのは初めてですので、まずは簡単に登場人物たちの紹介を。

ちなみに本作は中国を舞台としているため、固有名詞に漢字の意味を逐語訳した英文がつけられています。
記事内ではこれらの名前に適当に漢字名をつけていますが、日本人である管理人による適当訳ですのでご容赦ください。

[スーパー・マン]
本名コン・キーナン(孔克南)。
20170305_07.jpg
上海在住の青年。街で鉢合わせしたヴィランを偶然倒す様がSNS上でバズったところを、「官製ヒーローチームの設立による中国の威信高揚」を目的とする秘密組織"自立省(ミニストリー・オブ・セルフリライアンス)"に目をつけられる。
自立省の秘密施設にて"スーパーマンの気"を注入されたコンは、不安定ながらスーパーマンの能力を身に着け、官製ヒーロー"スーパー・マン・オブ・チャイナ"として活躍することに…

20170305_01.jpg
本人はかなりお調子者で軽薄な性格。
美人レポーターの気を引きたいがために、全世界に自分の正体を発信してしまう。


[ジャスティスリーグ・オブ・チャイナ]
自立省が設立した官製ヒーローチーム。
20170305_05.jpg
スーパー・マンの他には、太っちょな皮肉屋バット・マンと、融通の利かない女戦士ワンダー・ウーマンがいる。
(ちなみに彼らのコードネームは"Super-man"、"Bat-man"のようにハイフンが入っています。けして海賊版ではありませんよ!)

彼らの存在はしばらく秘密にしておくはずであったが、これもコンくんのせいで全世界に発信…

[Dr.オーメン]
自立省を率いる女マッドサイエンティスト。
ファイナルデイズ・オブ・スーパーマン』にて初登場した時からすでに、スーパーマンの体から発せられた気を別人に纏わせる実験を行っていた。


[フリーダム・ファイターズ・オブ・チャイナ]

「正義、真実、そして民主化」を合言葉に、中国の民主化を目論むテロ組織。
人造スタロを用いたマインドコントロールで人民を操ることで民主化を成し遂げようとするも、ジャスティスリーグ・オブ・チャイナに止められる。
20170305_04.jpg
幹部の飛龍将(フライング・ドラゴン・ジェネラル)の正体は、車の整備工として働くコンの父親。

ちなみにリーダーのヒューマン・ファイアクラッカー(人間花火)は、本家フリーダム・ファイターズのヒューマン・ボムとは無関係。


突然ヒーローに仕立てあげられ、イデオロギー闘争に巻き込まれたコンとリーグの面々。
初めはDr.オーメンの命令にただ従っていたリーグだが、やがて彼らはイデオロギーや政治形態とは無関係に営まれる"人々の日常"の重要さを学んでいく…

そんなある日、自立省の海底牢獄に謎の人影が現れる。
20170305_03.jpg
人影は、『ファイナルデイズ・オブ・スーパーマン』に登場した"最初のスーパー・マン"の独房で立ち止まり、彼を解き放つ。

我こそは全ての始まり。我なくしてスーパー・マンはなく、スーパーヒーローそのものも存在しえなかった。
"最初のスーパー・マン"の問いかけに、そう答える人影。
その姿はなんと…
20170305_02.jpg

というわけで、現れたこの男。
コミックファンならば、おそらく1度は目にしたことがあるこの人物ですが、その名前を知る人は少ないでしょう。
彼の名前はチン・ラン。
1937年に発売されたディテクティブ・コミックス第一号の表紙を飾ったキャラクターです。
20170305_06.jpg
同誌が、DC社の前身であるDetective Comics,Inc.が初めて発売したコミックであることを考えると、バットマンもスーパーマンも、ひいては"スーパーヒーロー"という存在そのものがこの男から始まったと言えるわけで、彼のセリフもあながち間違いとは言えないでしょう。

しかし、西側諸国がアジアに対して感じていた不安や蔑視をそのまま体現したようなその姿は"当時の差別主義の象徴"として度々槍玉に上げられる言わば"コミック業界の負の歴史"でした。
そんな彼の再登場について、ニュー・スーパー・マン誌のライターを務めるジーン・ルン・ヤンは、新聞社のインタビューについてこう語っています。

「DCリバースがDCの全歴史を受け入れる試みだとしたら、その醜い面にも光を当てるべきだ。」
「彼の再登場にあたり、その外見を現代的にリデザインする道もあった。しかし、彼をリデザインするとなれば必然的に現代における黄禍論を取り込む形になるだろう。
それは私の意図するところではない。
私がやりたいのは過去の悪しきステレオタイプをあげつらう事ではなく、コミックの過去を再確認することで、そこから現代のコミックがどれだけ遠くへと進んできたのかを知ることだ。」

"民主主義の拡大は本当に善なのか?"、"コミック界のおける人種差別の現在"と興味深い問題を扱いながらも、どこまでもコメディカルでヒロイックな視点で若者たちの成長を描く本作が、この悪役にどのような役割を割り振り、何を語らせるのか?
管理人は非常に楽しみです。

【宣伝】
今月発売のコミックで一番気になる作品といえばなんといっても『アイデンティティ・クライシス』!
"クライシス"の名を冠したDCの大型クロスオーバーながら、ヒーローコミックのタブーを破り大きく話題となったコミックです。
またワンダーウーマンのオリジンに鬼才グラント・モリソンが挑んだ『ワンダーウーマン:アースワン』や、New52のジャスティスリーグの完結編『ジャスティス・リーグ:ダークサイド・ウォー 2』も今月発売です。
さらには日本での人気をよそになかなか翻訳されなかったトランスフォーマーのオンゴーイング誌『トランスフォーマー:フォー・オール・マンカインド』もついに翻訳開始となりました。





今から飛び込め! 『スーパーマン:リボーン』直前講座

昨年春に刊行された『DCユニバース:リバース』とそれに続くDCの新時代DCリバースは、ファンに熱狂的に迎え入れられました。管理人の周囲でも多くの人がその展開を楽しみ、毎週水曜の新刊発売日には、SNSなどで様々な感想が飛び交っています。

しかし、そんな中、たまに漏れ聞く意見が「『DCユニバース:リバース』は読んだけれど、その続きがいろんな作品に散っていて、とても追いきれない」というもの。
じつはこの認識は大きな誤りです!
何を隠そう、DCリバースの本筋は『DCユニバース:リバース』以降ほとんど進んでいないのです!

確かに本ブログでは、DCリバース開始以降、定期的に各タイトルにて語られた"リバースの謎"に関する情報をまとめてきました。
(参考リンク1参考リンク2)

しかし、これらの情報は各タイトルの本編の隙間にかすかに匂わされたものを必死にかき集めた物であって、実際はDCリバースの本筋ともいえる「ウォッチメン世界のDCユニバースへの介入」に関する物語は殆ど進んでいません。

むしろその物語は今月から始まるのです!

20170204_16.jpg
3月に『スーパーマン』誌と『アクションコミックス』誌にまたがって始まるクロスオーバー『スーパーマン:リボーン』ではヒーローたちを陰から監視する謎の男Mr.オズの正体が語られ、

20170204_15.jpg
4月に『バットマン』誌と『フラッシュ』誌で始まるクロスオーバー『ザ・ボタン』では、2人のヒーローが遂にバットケイブに残された血染めのスマイルマークの謎の解明に乗り出します。

『DCユニバース:リバース』の続きを読みたい方は、これらのクロスオーバーを読めばそれだけで十分なのです!

ここで「あ、やっぱりスーパーマン、アクションコミックス、バットマン、フラッシュの4誌は最初から読まないのだめなのか」と思われた皆さん、それも誤解です。
『ザ・ボタン』を構成しているバットマン誌とフラッシュ誌は、New52の状況から大きな動きはないため、いきなりイベントの開始の号から読んでもおそらく問題はないでしょう。
(勿論まだ発売されていないので確約はできませんが…)

対して『スーパーマン:リバース』ですが、こちらは少しだけ問題があります。
第一に、当ブログでもお伝えしたようにリバース後のスーパーマンは、New52のスーパーマンとは異なる"リブート前のDC世界からやってきたスーパーマン"です。
ですがまぁ、ここら辺の事情につきましては、当ブログのこの記事この記事あたりを読んでいただければ大きな問題とはならないでしょう。

そして第二の問題は、『スーパーマン:リバース』のカギを握る人物の1人である"人間"クラーク・ケント、またの名を"ドッペルクラーク"の存在です。
20170302_01.jpg
主にアクションコミックス誌にて語られた、ドッペル・クラーク。
彼がどんな人物であるかを知らずに、彼の正体が明らかになる物語である『スーパーマン:リバース』を100%楽しむことは難しいでしょう。

そこで今回は、『DCユニバース:リバース』を読んだ人が気兼ねなく、『スーパーマン:リバース』に飛び込めるよう、ドッペル・クラークに関して『スーパーマン:リバース』開始前に分かっていることを紹介していきたいと思います。


ドッペル・クラーク秘密その①
ドッペルクラークとはスーパーマンの死後突然現れたクラーク・ケントを名乗る人物。
スーパーマンの正体がクラークだと世間にばれたTruth事件は、取材中の悪徳企業から命を狙われたクラークを救うためにスーパーマンがやってくれた芝居だったと主張。

ドッペル・クラーク秘密その②
20170302_03.jpg
ルーサー、バットマン、スーパーマンがそれぞれドッペル・クラークを調べたが、当人の言葉や記憶に嘘はなく、肉体的にも完全に人間。

ドッペル・クラーク秘密その③
20170302_04.jpg
現在はデイリープラネットに復職。我々の知るクラークのように、“特ダネ”を理由に危険に飛び込んでいくが、人間なので普通に怪我する。

ドッペル・クラーク秘密その④
20170302_02.jpg
最近、急に同僚のロイス(その正体はリブート前世界のロイス)への恋心に気づき、猛烈なアタックを始めるが、ロイスはつれない態度(結婚して子供までいるので当たり前)。

ドッペル・クラーク秘密その⑤
性格はクライシス前のクラークのように、大仰で芝居がかった道化者

ドッペル・クラーク秘密その⑥
住んでいると主張するマンションに部屋が無かったり色々と怪しいところも出てきた

ドッペル・クラーク秘密その⑦
ロイスとの関係について、先週発売のアクションコミックスであれこれあった(自主規制)

いかがでしょうか?
正直「だれだこいつは?」と言ったところではないでしょうか?
管理人も全く同じ感想です。しかし皆さんは多くの読者が1年近く焦らしに焦らされてきたこいつの正体が明かされる様子を、今週発売した『スーパーマン#18』(国内では来週発売)から読むことですぐ知ることができるのです。

さぁここまで読んだんだから、皆さん是非一緒に『スーパーマン:リボーン』を読みましょう。
何といってもここから本格的にDCリバースがはじまるんですから!

【宣伝(使いまわし)】
今回はマーベルから。
人気キャラ、デッドプールは引き続き翻訳予定がてんこ盛り。
一つ目はウルヴァリンと並んで90年代のX-MENの顔であったガンビットとのチームアップ誌『デッドプール VS. ガンビット』、つい最近の作品が早くも翻訳です。
またガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシーのチームアップ誌『ガーディアンズ:チームアップ 2』にもデッドプールが登場。
先日ケーブルとのチームアップ誌『デッドプール&ケーブル:スプリット・セカンド』も翻訳され、図らずもデッドプールのコンビものが一挙に翻訳です。


また、『ゴーストライダー:破滅への道』『イモータル・アイアンフィスト』『ムーンナイト/影』『スパイダーグウェン:モスト・ウォンテッド?』と、比較的マイナーキャラの翻訳が増えてきたこともうれしい限り。
特にアイアンフィストは非常に評価の高い作品なので、個人的に楽しみにしています。


DCについてもNew52の締めくくりとなる『ジャスティス・リーグ:ダークサイド・ウォー 2』や、鬼才グラント・モリソンによるワンダーウーマンの誕生譚『ワンダーウーマン:アースワン』といった定番作品から、トニー・S・ダニエルの美麗アートが魅力の『デスストローク:ゴッド・キラー 』や、コメディタッチの『ハーレイ・クイン:キス・キス・バン・スタブ』といった変化球まで取り揃えており、特定の作品の翻訳にとどまっていた90年代のブームを知る身としては隔世の感が在ります。


そして今回のブームの凄いところは、その範囲がヒーロー物にとどまらないこと。
ジェフ・ダロウによるアイズナー賞受賞のゾンビコミック『少林カウボーイ SHEMP BUFFET』や、料理番組やエッセイなどでお馴染みの料理人アンソニー・ボーデンによるスシコミック『GET JIRO!』といった作家性が強い作品から、映画の脚本家本人によるコミック『バック・トゥ・ザ・フューチャー アントールド・テイルズ』や『スター・ウォーズ:ポー・ダメロン ブラックスコードロン』といった映画関連まで、ジャンルにとらわれない広範なジャンルの翻訳がコンスタントに出ており、"翻訳アメコミ"という世界そのものの円熟を感じます。

プロフィール

NOB-BON

Author:NOB-BON
X-men生まれSpawn育ちを地でいく、90年代アメコミバブルの残党。
しばらくの間、アメコミは翻訳本を買う程度だったのが、最近のデジタルコミックの手軽さにひかれ、本格的に復活しました。

基本的にMarvelメインですが、DCのリランチを機に自分の中でDCブームが来てるので、しばらくはDCの話題続くかも。
しばらくどころか完全にDC派に転びました。

Twitter
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
本・雑誌
19位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
洋書
1位
アクセスランキングを見る>>
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
カウンター