マルチバーシティ #1
マルチバーシティ#1
(作:グラント・モリソン、画:アイヴァン・リース)
"鬼才"グラント・モリソンがその構想を発表して5年。
年末年始に各ニュースサイトが「来年のコミック業界の重大トピック」的な記事を書くと、高確率で「来年こそ『マルチバーシティ』は出版されるのか?」と書かれオチ扱いされていた"未刊の"名作がついに刊行されました!

「我々は自らの作った物語を生きるという意味でフィクション世界の住人であり、物語のヒーロー達は人々の心に影響を与えるという意味で現実世界の住人である」と公言し、『バットマン:R.I.P.』や『アクションコミック』、『ファイナルクライシス』など、奇想の限りを尽くしながらもヒーローコミックとしても優れた作品を数多く手がけた彼の集大成ともいえる本作は、その触れ込みに恥じない素晴らしい物でした。
【ニクス・ウオタン】
家賃を滞納したボロアパートの一室で、今日も早売りコミックのレビューをネットで配信する少年、ニクス・ウオタン。
しかし、そんなコミックオタクとしての彼はあくまで世を忍ぶ仮の姿。その正体は「あらゆるユニバースを監視する存在"モニター"の最後の生き残り。マルチバースの守護者」スーパージャッジなのである。

いつも通り、彼がDCコミックスが「呪われコミック」という触れ込みで出版する新刊ウルトラコミックスのレビューをしようとしたところ、アース7(Marvel Comicのパロディ世界)からのSOSを受け取る。
すぐさま相棒のチンパンジー、スタブと共に、救援に駆けつけたニクスが見たもの。
それは、荒廃しきったアース7とその最期の生き残りサンダラー、そして全ての存在を否定する"世界の破壊者"Gentryであった。

ニクス・ウオタンは、Gentryに立ち向かうために各ユニバースからヒーローたちを集めるようサンダラーに言い残し、単身Gentryに向かっていく。

ちなみにこれがサンダラー。一言でいうとアボリジニー版マイティ・ソー。
【ヒーローの館】
マルチバースの観測所ヴァル=ハラに辿り着いたサンダラーは、ニクスの言葉にしたがい全マルチバースからヒーローたちを集める。
ここでは半ば強引な手段で呼び寄せられたヒーローの一部を以下に紹介。
[プレジデント・スーパーマン]
アクションコミックスにも登場した黒人スーパーマン。
現在のシークレットアイデンティティは、アメリカ合衆国大統領。

ちなみにこれが彼が住む世界のジャスティスリーグ。
ワンダーウーマンがFrickin' Hot!
[ダイノコップ]
名前の通り恐竜刑事。ぶっちゃけラーセン描くシカゴのご当地ヒーロー、サヴェッジ・ドラゴンなんじゃ?

ちなみにこちらがサヴェッジ・ドラゴン。

[アクアウーマン]
性転換世界アース11から呼ばれた女アクアマン。やたらと好戦的。

[レッドレーサー]
アース36から来たコミックギークのフラッシュ。

「僕も付いて行くよ。君たちじゃDCコミックとMajorコミック(Marvel Comicsのことと思われる)の区別すらつかなさそうだからね!」
[キャプテンキャロット]
カートゥーン風世界のスーパーマン。こう見えて異様に強い。

ベヒーモス(ぶっちゃけハルクです)に襲われたときもこの通り。

「カートゥーン世界の物理法則を試したい奴はかかってきな!」
余談ですが、彼らはけして全くの初対面ではありません。
あるものは『ファイナルクライシス』にて全マルチバーシティのスーパーマン(に相当するヒーローの象徴)が集まった際にあっていますし、またあるものは相手の活躍をコミックブックを通して知っています。
このお話の(そしてモリソン自身の)世界観では、コミックというものは異世界で実際にあった事実そのものであり、各世界で起こった事件は、瓶詰めの手紙のように別世界の人々の脳裏に辿り着き、コミックという形で出版されているのです。
始めは戸惑う彼らですが、サンダラーの説得を受けて一致団結。ニクス救出へ向けてアース7へと向かう!
・・・というわけで、ついに始まったマルチバーシティ。
ここまでの紹介を読んでいかがだったでしょうか?
プレビューで公開された最初の数ページは、読んでいて頭がおかしくなりそうな内容であったため「あれっ?意外に普通に読めそう?」と思った方も多いのではないでしょうか?
実は管理人もその一人なのですが、思えば、「普通のヒーローコミックを読んでいたはずの読者を、いつの間にか常人には想像もつかない奇想の世界に連れて行く」のがグラント・モリソンのいつもの手口。
本編も「やたらと"この本を読むな!"と語りかけてくる地の文」、「背景にそれとなく書かれた"君の助けが必要だ"というメッセージ」、「呪われたコミック"ウルトラコミックス"」など、#1にして、面白い要素がてんこ盛り。
いったい今回はどんなところに連れて行かれるのか、今から楽しみです。
以下は気に入ったシーン。
【アース8】
ニクス救出に向かった一行がたどりついたのは、サンダラーの出身ユニバース、アース7ではなくお隣のアース8。
もちろんこちらもマーベルコミックのパロディ世界です。

(ファンタスティック・フォーの一コマじゃないですよ!)
ちなみにこちらが、向こうの世界のアベンジャーズ。中央がリーダーのAMERICAN CRUSADER。

【見えてるの?】
ヴァル=ハラに着いたプレジデント・スーパーマンを案内するキャプテン・キャロット。

プレジデント:すまんが、あの向こうに見える物はいったい?一種の空間充填元素のような…
キャロット:(コマとコマの)余白さ!
どうやらモニターの基地の中では、みんなに見えるみたいです。
【宣伝】
鬼才モリソンの作品は日本語にも多数訳されています。
なかでも是非読んで欲しいのが、自伝兼アメコミ書評である『スーパーゴッズ』。この本の奇矯な、それでいてなんとなく筋の通った物語観こそが、マルチバーシティをはじめとする彼の作品に底流であるといえるでしょう。
また、アメコミそのものでお勧めはといわれると『バットマン・アンド・サン』から始まる一連のバットマン作品でしょうか。
彼はこの作品群にて「バットマンの活躍した75年もの物語を全て肯定する」という離れ業をやってのけ、その伝説に新たな一ページを加えることに成功しました。
またNew52で彼が担当した『スーパーマン:アクション・コミックス』は、一見、胸躍る冒険譚ですが、実は「75年の歴史においてスーパーマンがたどった全ての"英雄像"を1冊の中に凝縮する」という壮大な実験がその裏に隠されているとされています。
最新の翻訳のめぼしいところは以下のような感じでしょうか。
上述したグラント・モリソンによるバットマン・サーガの集大成ともいえる「バットマン・インコーポレイテッド」は管理人が一番楽しみにしている作品です。
(作:グラント・モリソン、画:アイヴァン・リース)
"鬼才"グラント・モリソンがその構想を発表して5年。
年末年始に各ニュースサイトが「来年のコミック業界の重大トピック」的な記事を書くと、高確率で「来年こそ『マルチバーシティ』は出版されるのか?」と書かれオチ扱いされていた"未刊の"名作がついに刊行されました!

「我々は自らの作った物語を生きるという意味でフィクション世界の住人であり、物語のヒーロー達は人々の心に影響を与えるという意味で現実世界の住人である」と公言し、『バットマン:R.I.P.』や『アクションコミック』、『ファイナルクライシス』など、奇想の限りを尽くしながらもヒーローコミックとしても優れた作品を数多く手がけた彼の集大成ともいえる本作は、その触れ込みに恥じない素晴らしい物でした。
【ニクス・ウオタン】
家賃を滞納したボロアパートの一室で、今日も早売りコミックのレビューをネットで配信する少年、ニクス・ウオタン。
しかし、そんなコミックオタクとしての彼はあくまで世を忍ぶ仮の姿。その正体は「あらゆるユニバースを監視する存在"モニター"の最後の生き残り。マルチバースの守護者」スーパージャッジなのである。

いつも通り、彼がDCコミックスが「呪われコミック」という触れ込みで出版する新刊ウルトラコミックスのレビューをしようとしたところ、アース7(Marvel Comicのパロディ世界)からのSOSを受け取る。
すぐさま相棒のチンパンジー、スタブと共に、救援に駆けつけたニクスが見たもの。
それは、荒廃しきったアース7とその最期の生き残りサンダラー、そして全ての存在を否定する"世界の破壊者"Gentryであった。

ニクス・ウオタンは、Gentryに立ち向かうために各ユニバースからヒーローたちを集めるようサンダラーに言い残し、単身Gentryに向かっていく。

ちなみにこれがサンダラー。一言でいうとアボリジニー版マイティ・ソー。
【ヒーローの館】
マルチバースの観測所ヴァル=ハラに辿り着いたサンダラーは、ニクスの言葉にしたがい全マルチバースからヒーローたちを集める。
ここでは半ば強引な手段で呼び寄せられたヒーローの一部を以下に紹介。
[プレジデント・スーパーマン]
アクションコミックスにも登場した黒人スーパーマン。
現在のシークレットアイデンティティは、アメリカ合衆国大統領。

ちなみにこれが彼が住む世界のジャスティスリーグ。
ワンダーウーマンがFrickin' Hot!
[ダイノコップ]
名前の通り恐竜刑事。ぶっちゃけラーセン描くシカゴのご当地ヒーロー、サヴェッジ・ドラゴンなんじゃ?

ちなみにこちらがサヴェッジ・ドラゴン。

[アクアウーマン]
性転換世界アース11から呼ばれた女アクアマン。やたらと好戦的。

[レッドレーサー]
アース36から来たコミックギークのフラッシュ。

「僕も付いて行くよ。君たちじゃDCコミックとMajorコミック(Marvel Comicsのことと思われる)の区別すらつかなさそうだからね!」
[キャプテンキャロット]
カートゥーン風世界のスーパーマン。こう見えて異様に強い。

ベヒーモス(ぶっちゃけハルクです)に襲われたときもこの通り。

「カートゥーン世界の物理法則を試したい奴はかかってきな!」
余談ですが、彼らはけして全くの初対面ではありません。
あるものは『ファイナルクライシス』にて全マルチバーシティのスーパーマン(に相当するヒーローの象徴)が集まった際にあっていますし、またあるものは相手の活躍をコミックブックを通して知っています。
このお話の(そしてモリソン自身の)世界観では、コミックというものは異世界で実際にあった事実そのものであり、各世界で起こった事件は、瓶詰めの手紙のように別世界の人々の脳裏に辿り着き、コミックという形で出版されているのです。
始めは戸惑う彼らですが、サンダラーの説得を受けて一致団結。ニクス救出へ向けてアース7へと向かう!
・・・というわけで、ついに始まったマルチバーシティ。
ここまでの紹介を読んでいかがだったでしょうか?
プレビューで公開された最初の数ページは、読んでいて頭がおかしくなりそうな内容であったため「あれっ?意外に普通に読めそう?」と思った方も多いのではないでしょうか?
実は管理人もその一人なのですが、思えば、「普通のヒーローコミックを読んでいたはずの読者を、いつの間にか常人には想像もつかない奇想の世界に連れて行く」のがグラント・モリソンのいつもの手口。
本編も「やたらと"この本を読むな!"と語りかけてくる地の文」、「背景にそれとなく書かれた"君の助けが必要だ"というメッセージ」、「呪われたコミック"ウルトラコミックス"」など、#1にして、面白い要素がてんこ盛り。
いったい今回はどんなところに連れて行かれるのか、今から楽しみです。
以下は気に入ったシーン。
【アース8】
ニクス救出に向かった一行がたどりついたのは、サンダラーの出身ユニバース、アース7ではなくお隣のアース8。
もちろんこちらもマーベルコミックのパロディ世界です。

(ファンタスティック・フォーの一コマじゃないですよ!)
ちなみにこちらが、向こうの世界のアベンジャーズ。中央がリーダーのAMERICAN CRUSADER。

【見えてるの?】
ヴァル=ハラに着いたプレジデント・スーパーマンを案内するキャプテン・キャロット。

プレジデント:すまんが、あの向こうに見える物はいったい?一種の空間充填元素のような…
キャロット:(コマとコマの)余白さ!
どうやらモニターの基地の中では、みんなに見えるみたいです。
【宣伝】
鬼才モリソンの作品は日本語にも多数訳されています。
なかでも是非読んで欲しいのが、自伝兼アメコミ書評である『スーパーゴッズ』。この本の奇矯な、それでいてなんとなく筋の通った物語観こそが、マルチバーシティをはじめとする彼の作品に底流であるといえるでしょう。
また、アメコミそのものでお勧めはといわれると『バットマン・アンド・サン』から始まる一連のバットマン作品でしょうか。
彼はこの作品群にて「バットマンの活躍した75年もの物語を全て肯定する」という離れ業をやってのけ、その伝説に新たな一ページを加えることに成功しました。
またNew52で彼が担当した『スーパーマン:アクション・コミックス』は、一見、胸躍る冒険譚ですが、実は「75年の歴史においてスーパーマンがたどった全ての"英雄像"を1冊の中に凝縮する」という壮大な実験がその裏に隠されているとされています。
最新の翻訳のめぼしいところは以下のような感じでしょうか。
上述したグラント・モリソンによるバットマン・サーガの集大成ともいえる「バットマン・インコーポレイテッド」は管理人が一番楽しみにしている作品です。
スポンサーサイト