【ネタバレあり】「JLA:逆転世界」を勝手に解説
先日の記事で「JLA:逆転世界」の事を
『物語の要素の意図的な省略や、メタ要素バリバリのヒーロー観など、モリソンらしさ爆発』
と表現したところ、『もう少し詳しく解説してほしい』とのコメントをいただきました。
これに対して、無い頭を振り絞ってあれこれまとめたのですが、筆の重い自分としてはコメント欄に書くだけでは惜しい分量となったので、独立した記事としてまとめさせてもらいました。
ちなみにネタバレ全開ですので、ご注意ください。

まず「意図的な省略」の部分ですが、モリソンは「物語の重要な要素をあえて描写せずに読者の想像に任せる」という手法をよく使い、これによって「作劇にスピード感を出す」「読者に"読み解く楽しさ"を提供する」という効果を狙ってるふしがあります。(すいません、予想です。)
「逆転世界」における前者の例を挙げると、冒頭の「正義ルーサーによる、悪ルーサーの地位の乗っ取り」や、クライマックスでの「CSAのメンバーによる正史世界の侵略」の過程がサクッと省略されているのがこれに当たり、それぞれ、その後のセリフから何が起こったかを想像させる構成になっています。
後者の例で顕著なのは、ゴッサム警察署長とオウルマンの関係でしょうか。

翻訳版では解説にあっさりと答えが書いてあるので、そう感じない人が多いかもしれませんが、基本的に読者は、一読しただけではこの2人(とバットマン)の関係がよくわからず混乱するように書かれています。
顕著な例でいえば、署長がオウルマンを呼ぶときに使う"トーマス"という呼び方でしょうか。
(自然な流れでいえば"トーマス"ではなく"ジュニア"ですよね?)
また警察署長が常に名字か愛称でしか呼ばれないのも、同様です。
この部分を読者に推理させることで「自分は2人の秘密に気が付いた」という満足感をあたえ、オウルマンの墓前での失意や、最後の活き活きした態度が、より感慨深いものとなるような仕組みとなっています。
また「メタ要素」ですが、これは読まれた方に語るのはいまさらなのですが、逆転世界における"逆転"とは、単純にヒーローが悪人になっているという「善人と悪人の逆転」でもなければ、SF短編でたまにある"善行が悪徳、悪行が美徳"という「倫理の逆転」でもなく、世界の基本理念が"勧善懲悪"ではなく"勧悪懲善"になっているという「物語のルールの逆転」となっている部分です。
そのせいで、CSAの世界ではヒーローであるルーサーが立てた計画にはいつも穴があり、それに漬け込まれてルーサーは失敗ばかりしているのですが、これって裏を返すと「普段のコミックで最後にヒーローが勝つのは、そういう物語世界だからだ」っていうことですよね。
そんなこんなで、「悪のJLA登場」というキャッチーなあらすじの割に、本作品はちょっとクセのある、好き嫌いの別れる作品となっております。
ですので、あまり好みに合わなかったとしても、あまり気にせず、次の作品に行ってしまってもよいのではと思います。
(王道展開の「バベルの塔」は、その点でクセがなく万人受けするものだと思います。)
【宣伝】(使い回し)
遂に小プロからJLAの翻訳本2冊が発売されました。
「バベルの塔」は王道好きのマーク・ウェイドらしい直球展開で万人におすすめ。
「逆転世界」もよくある"異世界物"と思わせておきながら、物語の要素の意図的な省略や、メタ要素バリバリのヒーロー観など、モリソンらしさ爆発の快作となっています。(モリソンといえば、スーパーゴッズを読むと、彼のちょっとキ○○イじみたヒーロー観がよくわかります。)
ところで今回紹介した「バベルの塔」を読んでいて、なんとなく今回紹介したジャスティスリーグを思い出しました。ホントにあの人は懲りないんだから...
後外せないのが、ヴィレッジブックスから先日発売された「ニューアベンジャーズ:トラスト」。
遂に私がMarvelで好きなヴィラン、フッドの登場です。私のフッドへの熱い思いはこちらの記事を参照。
後は、映画「マン・オブ・スティール」の公開に合わせて、スーパーマンの翻訳が盛んになってきました。
管理人は未読ですが、「フォーオールシーズン」は名作と名高いので楽しみです。
後は「アースワン」と「レッドサン」はそれぞれ別世界を舞台にした作品ですが、それゆえにDC世界に馴染が無い方にもお勧めできます。何気に「レッドサン」はバットマン/ワンダーウーマン/グリーンランタンなど、ジャスティスリーグのヒーローが総登場だったりします。
『物語の要素の意図的な省略や、メタ要素バリバリのヒーロー観など、モリソンらしさ爆発』
と表現したところ、『もう少し詳しく解説してほしい』とのコメントをいただきました。
これに対して、無い頭を振り絞ってあれこれまとめたのですが、筆の重い自分としてはコメント欄に書くだけでは惜しい分量となったので、独立した記事としてまとめさせてもらいました。
ちなみにネタバレ全開ですので、ご注意ください。

まず「意図的な省略」の部分ですが、モリソンは「物語の重要な要素をあえて描写せずに読者の想像に任せる」という手法をよく使い、これによって「作劇にスピード感を出す」「読者に"読み解く楽しさ"を提供する」という効果を狙ってるふしがあります。(すいません、予想です。)
「逆転世界」における前者の例を挙げると、冒頭の「正義ルーサーによる、悪ルーサーの地位の乗っ取り」や、クライマックスでの「CSAのメンバーによる正史世界の侵略」の過程がサクッと省略されているのがこれに当たり、それぞれ、その後のセリフから何が起こったかを想像させる構成になっています。
後者の例で顕著なのは、ゴッサム警察署長とオウルマンの関係でしょうか。

翻訳版では解説にあっさりと答えが書いてあるので、そう感じない人が多いかもしれませんが、基本的に読者は、一読しただけではこの2人(とバットマン)の関係がよくわからず混乱するように書かれています。
顕著な例でいえば、署長がオウルマンを呼ぶときに使う"トーマス"という呼び方でしょうか。
(自然な流れでいえば"トーマス"ではなく"ジュニア"ですよね?)
また警察署長が常に名字か愛称でしか呼ばれないのも、同様です。
この部分を読者に推理させることで「自分は2人の秘密に気が付いた」という満足感をあたえ、オウルマンの墓前での失意や、最後の活き活きした態度が、より感慨深いものとなるような仕組みとなっています。
また「メタ要素」ですが、これは読まれた方に語るのはいまさらなのですが、逆転世界における"逆転"とは、単純にヒーローが悪人になっているという「善人と悪人の逆転」でもなければ、SF短編でたまにある"善行が悪徳、悪行が美徳"という「倫理の逆転」でもなく、世界の基本理念が"勧善懲悪"ではなく"勧悪懲善"になっているという「物語のルールの逆転」となっている部分です。
そのせいで、CSAの世界ではヒーローであるルーサーが立てた計画にはいつも穴があり、それに漬け込まれてルーサーは失敗ばかりしているのですが、これって裏を返すと「普段のコミックで最後にヒーローが勝つのは、そういう物語世界だからだ」っていうことですよね。
そんなこんなで、「悪のJLA登場」というキャッチーなあらすじの割に、本作品はちょっとクセのある、好き嫌いの別れる作品となっております。
ですので、あまり好みに合わなかったとしても、あまり気にせず、次の作品に行ってしまってもよいのではと思います。
(王道展開の「バベルの塔」は、その点でクセがなく万人受けするものだと思います。)
【宣伝】(使い回し)
遂に小プロからJLAの翻訳本2冊が発売されました。
「バベルの塔」は王道好きのマーク・ウェイドらしい直球展開で万人におすすめ。
「逆転世界」もよくある"異世界物"と思わせておきながら、物語の要素の意図的な省略や、メタ要素バリバリのヒーロー観など、モリソンらしさ爆発の快作となっています。(モリソンといえば、スーパーゴッズを読むと、彼のちょっとキ○○イじみたヒーロー観がよくわかります。)
ところで今回紹介した「バベルの塔」を読んでいて、なんとなく今回紹介したジャスティスリーグを思い出しました。ホントにあの人は懲りないんだから...
後外せないのが、ヴィレッジブックスから先日発売された「ニューアベンジャーズ:トラスト」。
遂に私がMarvelで好きなヴィラン、フッドの登場です。私のフッドへの熱い思いはこちらの記事を参照。
後は、映画「マン・オブ・スティール」の公開に合わせて、スーパーマンの翻訳が盛んになってきました。
管理人は未読ですが、「フォーオールシーズン」は名作と名高いので楽しみです。
後は「アースワン」と「レッドサン」はそれぞれ別世界を舞台にした作品ですが、それゆえにDC世界に馴染が無い方にもお勧めできます。何気に「レッドサン」はバットマン/ワンダーウーマン/グリーンランタンなど、ジャスティスリーグのヒーローが総登場だったりします。
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