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俺ズナー賞2021 (2021年ベストコミック)

管理人は年末になると、Twitter上で"俺ズナー賞"と称してその年のベストコミックを発表する遊びをやっているのですが、せっかくなので今回はブログ上で発表してみます。

【ベスト・アーティスト賞】
グレッグ・スモールウッド

(ヒューマンターゲット)


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ベスト・アーティストは秋から始まった新シリーズ『ヒューマンターゲット』の本編とカバーを担当するこの方。
この賞に関しては、アートを見れば一目瞭然。
ヒーローコミック、フィルムノワール、ポップアートの融合が見事。

【ベスト・ライター賞】
ドニー・ケイツ

(ソー[紹介記事]、ハルク[紹介記事]、クロスオーバー[紹介記事]、キング・イン・ブラック他)



今年のベストライターはいまやすっかりマーベルの中心となったライター、ドニー・ケイツ。
唖然とするくらいスケールの大きい話を、王道の英雄譚に仕立て上げ、それにぬけぬけとしたジョークを差し込む独特の読後感が好きです。
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(こちらは『クロスオーバー』に登場したドニー・ケイツ。どうみてもアラン・ムーアなのに、「ドニー・ケイツです」と言い切る人を食った態度こそケイツ節。)

ちなみに最近は毎年のようにこの賞にトム・キングを選んでいて、今年も『ロールシャッハ』、『バットマン/キャットウーマン』、『ストレンジアドベンチャーズ』と、順当に選んだらトム・キングなんだけど今年は殿堂入りってことで除外。

【ベスト・ミニシリーズ賞】
ストレンジアドベンチャーズ

(作:トム・キング、画:ミッチ・ゲラッズ&ドク・シャーナー)
紹介記事

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「(誰も知らない)惑星ランで(誰も知らない)大冒険を繰り広げるヒーロー」というアダム・ストレンジの基本設定に潜むあやしさを、陰謀論とポストトゥルース渦巻く現代の物語に仕立て上げた傑作。

そのあやしい出自にも関わらず人々から愛されるアダム・ストレンジと、卓越した実績を持ちながらも人々から「どこかいけ好かない二線級ヒーロー」とみなされるMr.テリフィクスの対比も鮮やか。

【ベスト・シングルイシュー賞】
スーパーマン:ワールズ・オブ・ウォー

(作:フィリップ・K・ジョンソン、画:ミケル・ハニン)


2021年のDC各誌の展開を、"実現することのない未来"という形で予告するイベント『フューチャーステイト』の中の一編。

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スーパーマンが地球を去った近未来。そこではスーパーマン/クラーク・ケントは信仰の対象となり、学生時代に提出したレポートすら予言書として扱われる始末。
そんな中、スーパーマンに救われた経験のある人々が彼を称える集会に現れた1人の少女は、
「スーパーマンの真の偉大さは、飛行能力でも、超人的に肉体でもない。」と一喝。
懐から1枚の古新聞を取り出し、他愛もない死亡記事を読み上げていく。

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一方そのころ、モンガルによってウォーワールドに囚われ剣闘士となったスーパーマンは、今日も反逆の見せしめとして、勝ち目のない戦いを強いられていた……

ということで、ワールズ・オブ・ウォーという景気のいい名前に反して、非常に落ち着いた抒情的な語り口の物語。
スーパーマンがその"真の力"を発揮し、ウォーワールドの民衆をインスパイアしていく様とクラーク・ケントの新聞記事が重なるシーンは圧巻。

【ベスト・オンゴーイング賞】
アクションコミックス

(作:フィリップ・K・ジョンソン、画:ミゲル・メンドンカ)
(紹介記事)


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今年のオンゴーイングのベストは、なんといってもこちら。
息子であるジョン・ケントがスーパーマンとして個人誌を持ち独り立ちしていくフランチャイズ上の流れを、生まれてきた子供に自らの人生の一部を託し、やがて老いさらばえ子供の下を去っていく父の姿に重ねた本作。
細かい解説は上記の紹介記事に記載しましたが、2児の父である自分には非常に刺さる物語でした。

【特別賞】
スーパーマン:サン・オブ・カル=エル
(作:トム・テイラー、画:ジョン・ティムス)
紹介記事



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最後に、2021年のアメコミ業界を語るうえで外せないのがこちらの作品。
"スーパーマンの息子はバイセクシャルである"というニュースはコミックファンの間だけに留まらず、普段コミックを読まない層にまで広がりました。
多くの人を巻き込みながら人々をインスパイアしていくその様子は、物語上の存在であるジョン・ケントが現実世界に表れたかのようであり、他でもなく"スーパーマン"がLGBTとなることの深い意義を意義を感じさせました。
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今回の更新は以上。来年の面白いコミックに出会えることを期待しつつ筆を置きたいと思います。
みなさん、よいお年を。

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アメコミにおいて「ヒーローは口元を隠さない」「口元を隠すのはだいたい悪」は本当なのか?

今回はちょっと趣向を変えて……

【事の発端】
そもそも今回の記事を書こうと思ったきっかけは、Twitterで見かけたこの話題。
アメリカのマスク着用率の低さはアメコミの「ヒーローは口元を隠さない」「口元を隠すのはだいたい悪」にある…?そしてなぜヒーローは隠さないのか?

この主張って、このブログを見に来るようなアメコミ好きの人にとっては、ちょっと引っかかる主張じゃないですか?
少なくとも管理人は、「本当にそうかな?」とかなり引っかかりました。

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そもそもとして挙げられている悪役は(映画版の)ウィンターソルジャーとベインの2人だけで、パッと振り返ってみても他に映画の悪役の中に口元だけを隠すような悪役は見当たらない、強いて言えばクロスボーンくらいでしょうか。
これだけアメコミ映画が製作され、そのたびに新しい悪役が登場する中で、2つの例が根拠というのは少し心元ありません。

そこで今回の記事では、「"アメコミにおいて口元を隠すのはだいたい悪"というのは本当だろうか?」ということを検証していこうと思います。

【口元マスクのキャラを挙げてみる】
先ほど、映画には口元を隠す悪役はそれほどいないのではと述べましたが、それでは、映画ではなくコミックに目を向ければ、「口元を隠すのはだいたい悪」という傾向が見えてくるのでしょうか?
そう思って、頭の中で口元を隠したコミックの悪役を思い出してみましたが、正直、ぱっとは浮かびません。
(ウィンターソルジャーも、ベインもコミックでは基本的に口元マスクではありません。)
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というか、悪役に限らずそもそも口元マスクのキャラクター自体あまり浮かばないのが正直なところ。
そこで、Twitterでお付き合いさせてもらってるコミックファンの人たちの協力を貰った結果、挙がったキャラクターがこちら。

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ニンジャク、チェンバー、ヴィジランテ

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シルク、ファントメックス、エレクトラ。

いずれも超メジャーではないにせよ、それなりに知名度のあるキャラクターですが、いずれもヒーローですし、
コミックファンとしての「そもそも口元にマスクをしているキャラ自体が少ない」という印象は変わらないままでした。

【定量調査】
とはいえ印象だけで語ってもしょうがないので、実際に無作為にアメコミキャラを抽出し、口元マスクのキャラがどれくらいいるのかを定量的に測ってみることにしましょう。
無作為抽出の方法は、手元にあった『DCキャラクター大事典』。
1000人以上のキャラクターが収録されたこの事典から、以下のルールで実際に調査してみました。

[ルール]
・対象のキャラクターは、同誌の中で一番ページ数が多い"S"始まりと"M"始まりのキャラクター
・抽出したキャラを、「ヒーローかヴィランか」と、「マスクの様子」で分類
・「ヒーローかヴィランか」は、事典の"立場"という項の記載に従う
・立場欄に、"協力者"、"不定"などと記載されたキャラやチームは集計から除外
・「マスクの様子」は、"口元マスク"、"目元マスク"、"フルフェイス/素顔"の3種類に分類
 ※区別が面倒くさいので、獣人や宇宙人などの異形顔は全て"フルフェイス/素顔"に分類しました
・スターロなど、そもそも人型をしていないキャラは除外

上記のルールのもと調査した結果がこちら。

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やはり予想通り、276人のキャラの中で、口元マスクを着けたキャラはたったの5人。
さらにはヒーローとヴィランで特にパーセンテージの差はありません。
(というか口マスクのキャラが少なすぎて、この標本数ではあまりパーセンテージに意味がなさそう)
この結果からみても、「そもそも口元にマスクをしているキャラ自体が少なく、特にヒーローとヴィランで偏りはない」という、コミックファンの直感が正しそうなことが見て取れます。

ちなみに、それぞれ口元マスクキャラとして挙がったのは、ヒーロー側では
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マダム44(全然知らない)、ヴィジランテ(セブンソルジャーズ・オブ・ヴィクトリー)、シャドウ(グリーンアローの義母にあたる弓道ヤクザ)の3人。

ヴィラン側の口元マスクは
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スキャンダル・サベッジ(ヴァンダル・サベッジの娘)、シルフ(これまた知らない。ナイトウィングの悪役らしい)の2人。

【"口元マスク"の本当の意味の考察】
というわけで、「アメコミにおいて口元を隠すのは悪役」という説は、感覚的にも実際的にも正しくないことは胸を張って言えそうです。
それでは、アメコミにおいて口元マスクを隠すのはどんなキャラクターなのでしょうか?

あくまで経験則ですが、アメコミにおいてキャラクターの口元マスクが与えるイメージは大きく2つあります。
1つは、「西部のガンマン」。これは、西部劇などでお馴染みのスタイルなので、説明不要でしょう。
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そしてもう1つは「忍者。またはそれが転じたオリエンタルなキャラ」。
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もちろん、先述のチェンバーなど、この例に当てはまらないキャラクターも多数いますが、少なくとも「口元マスクは悪役の印」よりははっきりと傾向が見て取れます。

【口元マスクのキャラが少ない理由】
続いて、目元マスクのキャラは多いのに、口元マスクのキャラがこれほどまでに少ない理由ですが、これは明確ですね。
まず重要なこととして、コミックの表現において、目と口はキャラクターの感情を描くときに、欠かすことのできない重要な要素です。
そのため、それらを完全に見えなくしてしまうのは、本来は禁じ手の筈。なんですが、実はコミックでは目を隠すのは全然問題ないんですよね。
なぜなら、例え設定的にはマスクに開けられた除き穴であっても、コミック表現においてはマスクの目元は、キャラクターの感情に合せて自在に変形するから。
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つまりは、コミックのデザインにおいては目元をマスクで隠していたとしても、それは隠していないのとまったく一緒なのです。

一方で、口の方はそういうわけにはいきません。
キャラクターをデザインする際に、口元を隠したコスチュームをそのキャラに着けさせるということは、そのキャラクターに感情表現をさせる手段の一つを、アーティストから奪うということなのです。
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こう考えれば、コミックで口元を隠すキャラクターがこれほど少ないのは自明でしょう。


【まとめ】
つらつらとまとまりなく書いてしまいましたが、最後に言いたかったことをもう一度まとめて、本項の結びとしたいと思います。
(あえて断言口調で失礼させてもらいます)

1.アメコミにおいて、"口元を隠すのはだいたい悪"という傾向はみられない
2.口元を隠すのは、"西部のガンマン"や"忍者などオリエンタルな伝統戦士"の雰囲気をキャラに与えるため
3.口元マスクのキャラが、目元マスクのキャラに比べて少ないのは、口元を隠すとキャラに演技をさせづらくなるから



【宣伝】(使いまわし)

最近の翻訳はこちら。
マーベルからは日系人ヒーローキッド怪獣くんが登場するイベント『Monsters Unleased』が『マーベル怪獣大進撃』として翻訳決定。
また同じくマーベルの大型イベントとしては、アイアンマンとキャプテン・マーベルを筆頭としてヒーロコミュニティが2分する戦いを描いた『シビルウォー2』も翻訳決定。


DC作品では、ワンダーウーマンとバットマンの対決を描く『ワンダーウーマン:ヒケテイア』が発売。こちらは管理人は未読なのですが、ライターを務めるグレッグ・ルッカは『バットウーマン:エレジー』や『ワンダーウーマン:イヤーワン』などを手掛けた超実力派。
同作者の大ファンの管理人としてはマストバイですね。


今週のアメコミ 2019/01/23




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今週の一押しは、『シャザム! :魔法の守護者』から6年の沈黙を破り刊行されたジェフ・ジョーンズによるシャザム誌。

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相変わらずシャザム・キッズたちのわちゃわちゃしたやり取りを眺めているだけでも楽しい作品です。

ちなみに前号でウィザード以外のロック・オブ・エタニティの魔術師たちを追う展開が暗示されたのですが、それと同時に登場した彼らの領土の地図がこれ。
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眺めてるだけで魔術師たちの癖の強さが匂い立つような地図に、ワクワクが止まりません。
緑と黄色しかなかったグリーンランタンの世界を、一気に7色に拡張したジェフ・ジョーンズの剛腕がここでも振るわれることを期待!


あとは上のツイートにも書きましたが『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー』も気になるタイトル。
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実はまだ新生ガーディアンズのメンバーが誰になるのかが明かされておらず、この表紙のキャラクターはメンバー候補の段階。
ひねくれ者で、読者を煙に巻くのが大得意なドニー・ケイツがここから誰をピックアップするのかが気になります。
個人的には彼の持ちキャラであるコズミック・ゴーストライダーは入ると思ってるんですけど…

プロフィール

NOB-BON

Author:NOB-BON
X-men生まれSpawn育ちを地でいく、90年代アメコミバブルの残党。
しばらくの間、アメコミは翻訳本を買う程度だったのが、最近のデジタルコミックの手軽さにひかれ、本格的に復活しました。

基本的にMarvelメインですが、DCのリランチを機に自分の中でDCブームが来てるので、しばらくはDCの話題続くかも。
しばらくどころか完全にDC派に転びました。

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