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バットマン翻訳本ガイド(アメコミ放浪記私見版)

(2018年2月13日に更新)
今日はちょっと趣向を変えて、「バットマン翻訳本ガイド(アメコミ放浪記私見版)」をお送りします。
今回の企画を思いついた理由はただ一つ
「バットマン関連の翻訳本ですぎで、これから読み始めようという人が混乱しない?」
という思いからです。

とりあえず、今回の記事では
 ・続き物⇔読み切り
 ・正統派⇔変化球
という2つの軸で、翻訳本を分類していこうと思います。
まずは各軸の紹介から。

【続き物⇔読み切り 】
「連載物の一部を切り取った作品なのか、単体で完結している作品なのか」という軸です。

"続き物"にカテゴライズされる作品は、本国で連載物としてい続いている作品の一部を切り取ったものになっています。
このため翻訳分では回収されない伏線や、前のお話に関する言及が含まれています。
(とはいえ基本的に日本で出版された翻訳本は、それ自体である程度商品として完結するように解説などで配慮がされているため、そこまで困ることはありません(多分))

一方"読み切り"のカテゴライズは、元々単体で成り立つ作品として作られているため、上記のような心配はありません。


【正統派⇔変化球】
「バットマンの基本的な設定や面白さを踏襲したものか、それとも基本をあえて外した変化球なのか?」という軸。
"基本的な設定"はともかく、"基本的な面白さ"ということでひどく主観的な評価軸なのですが、そこは今回は「管理人の考えるバットマンの魅力」ということで、勘弁してください。

それでは、上記2つの軸に沿う形で、各翻訳本を紹介させてください。
ちなみに、今回は「何から読むか?」「どういう順番で読み進めるか?」という部分に焦点をあてているため、あえて内容には深入りしません。
(○マークは"管理人おすすめ"、★マークは"読み始めの方に特にお勧め"を意味します)

正統派-続き物
Detective Comics誌やBATMAN誌など、本国で続き物として出ている作品から番外編を抜いたもの。"普段の"バットマンがきになるかたはこのカテゴリがお勧めです。

★バットマン:梟の法廷
★バットマン:梟の街
★バットマン:喪われた絆
★バットマン:ゼロイヤー 陰謀の街
★バットマン:ゼロイヤー 暗黒の街
★バットマン:真夜中の事件簿
★:バットマン:エンドゲーム
★:バットマン:スーパーヘヴィ
★:バットマン:ブルーム
★:バットマン:エピローグ
ダークナイト:姿なき恐怖





2010年にDCで行われた「新規読者獲得のためにいったん全てのコミックをリセットして、1から始めよう。」という企画(リブートと呼んだりします。)によって始まった新しいバットマンの連載作品群。
なので続き物とはいえ初めて読むのにぴったりな内容となっています。("1から始める"といっても細かい伏線を引きずっていないだけで、いわゆる"第一話"とは趣が違います。)
「梟の法廷」→「梟の街」→「喪われた絆」→・・・と言う順番での続き物になっています。
(一応「梟の街」でひと段落つくので、ジョーカーとバットマンの対決だけ読みたければ、「喪われた絆」から読んでも問題ありません。)
米国ではこのシリーズが大ヒットし、事実上、"バットマンの本流"となっていました。
アート&ストーリーともに素晴らしいので、今、読み始めるならばこの作品(もしくは後述する『アイ・アム・ゴッサム』)からがお勧めです。

2017年5月時点で『バットマン:エピローグ』の発売が決定。
これによってリブートによって始まったNew52期のバットマン誌の全話の翻訳がされることになりました。
基本的にアメコミは「1人のライターが担当した最初から最後まで」が日本の漫画における"1作品"に当たるため、New52期のバットマン誌を担当したスコット・スナイダーのバットマンがこれにて完結したわけです。

スナイダーはこのバットマン誌と後述のバットマン:エターナルを通して、バットマンという存在について1つの問いを読者に対して投げかけ、それついて作品内ではっきりとした答えを出しています。
果たしてスナイダーが彼の物語に盛り込んだテーマとは何なのか?
以前の単発作品中心の翻訳体制では味わうことができなかった、こういった大河ドラマとしてアメコミの魅力が日本語で味わうことができる素晴らしさをみなさんもぜひ噛みしめてみてください!

また「ダークナイト」には他とは前後関係はなく独力した話になっています。

バットマン:梟の夜
ジョーカー:失われた絆


こちらは、「『梟の法廷』と『喪われた絆』事件の最中、ナイトウィングやキャットウーマンなど、ゴッサムをホームとする他のヒーロー達は何をしていたか?」を描く番外編となります。
バットマンの影に隠れて、なかなか翻訳の機会の恵まれないヒーロー達メインとなりますので、興味のある方はどうぞ。

バットマン:エターナル(上)
バットマン:エターナル(下)

"バットマン誕生75周年記念"として、1年間にわたって週刊で刊行され続けた記念碑的作品。
そのお祭り的コンセプトにふさわしく、バットマンの75年間を彩ったキャラクターたちが総登場する賑やかな物語。
そのうえで、全体のディレクションを現在のバットマンの立役者であるスコット・スナイダーが担当しているため、先の読めなく豊かなテーマ性を持った非常に手堅い作りになっています。




NEW52:バットマン


上でも記載したとおり、2010年に行われたDC世界の設定リセットであるリブート。
このイベントを境に、DCは自らが発行するコミックの号数を全て#1にリセットし、文字通り1からの再スタートを切りました。
そんなアメコミ史に残る大イベントを記念し、この時発売された各タイトルの1号だけを集めた百科事典のような分厚さの本が米国では発売されました。
この「NEW52:バットマン」は、その分厚い本からバットマン関連のタイトルを切り取ったものとなっています。
もちろん1話目だけを集めた本なので、全ての話が途中で終わっていますが、どの作品も「これからもこのタイトルを読み続けろ!」という熱い気持ちに溢れた内容となっております。

★バットマン:アイ・アム・ゴッサム
★バットマン:アイ・アム・スーサイド



今までは、2010年に行われた世界観のリセットを伴う新規コミックの立ち上げ、いわゆる"New52"期のコミックを紹介してきましたが、2016年に再びDCは新規読者獲得のために今度は"DCリバース"と銘打って、全てのコミックを再立ち上げします(今回は世界観のリセットはなし。あくまで同じ世界の中で新しいスタートを切る形)。
そして、好評のうちに終了したスコット・スダイダーによるバットマンの後を引き継いだのが、その才能をマーベルとDCが奪い合った新進気鋭のライター、トム・キングです。
『アイ・アム・ゴッサム』から始まる彼の一連のストーリーは、スナイダーの『梟の法廷』がそうであったように、新規読者の獲得を強く意識しており、細かい伏線などは引き継いでいないので、こちらも読み初めにはぴったりです。

「『梟の法廷』と『アイ・アム・ゴッサム』のどちらがお勧めか?」
という質問に対しては答えるのは難しいのですが、強いて違いを上げるとするならば、「既存のキャラの登場を極力絞りより新規読者に配慮した『梟の法廷』」と、「キャットウーマンやスーサイドスクワッドなどのゲストキャラが多数登場し"DC世界の一部としてのバットマン"にこだわった『アイ・アム・ゴッサム』」といったところでしょうか。


★HUSH


人気アーティスト、ジム・リーが担当し大ヒットとなったストーリー。
バットマンの敵や味方が次々登場する幕の内弁当みたいな構成で非常にお勧めです。
現在は絶版でプレ値がついているため、本稿の趣旨からは外れるのですが、小プロから復刊の予定がでてますので紹介
遂に発売が正式に決まりました。ジョーカー、キラークロック、ポイズン・アイヴィ、スーパーマン、ナイトウィング、ハントレスなど、ヴィラン勢もヒーロー勢も共に出演キャラが豪勢ですので、バットマンを取り巻くキャラ達を1人でも多く楽しみたいのであれば、この本が最適です。

○バットマン:アンダー・ザ・レッドフード

突如ゴッサムにあらわれ、バットマン以上に過激なやり口でゴッサムの裏社会を掌握している謎の男レッドフードにまつわる物語。
HUSHを読んでるとにやりとできるシーンがあるので、HUSHの後で読むことを推奨。

バットマン・アンド・サン
バットマン:ラーズ・アル・グールの復活
バットマン:ブラックグローブ
バットマン:R.I.P.


「バットマンに子供がいた?」という衝撃の事実の暴露から始まるストーリー。グラント・モリソンという人気ライターが話を担当し、非常に評価の高い作品。上記の順番の続き物。
「70年代にバットマンがやっていた荒唐無稽な冒険を”全て事実”と見なした上で、現代的な解釈をこじつける」というマニアックな事をしており、かつそのマニアックさが面白さの源泉なので、はじめに読むのはお勧めしません。
ちなみにBlack GroveとRIPを読むときの注意として、
「絶対に先に巻末の"黒の事件簿"から読むこと」
を挙げさせてもらいます。

バットマン:バトル・フォー・ザ・カウル
○バットマン&ロビン
バットマン:ブルース・ウェインの帰還
バットマン:ブルース・ウェインの選択


上記のRIPの直後に、ゴッサムから姿を消したブルース・ウェイン。
バットマン無きゴッサムにおける後継者争いとを扱ったのが「バトル・フォー・ザ・カウル」、
その結果として新たにバットマンの名を襲名した"2代目"とロビンの活躍を描いた作品が「バットマン&ロビン」、
その間に繰り広げられていた、ブルース・ウェインの時空を超えた冒険を扱ったのが「ブルース・ウェインの帰還」となっています。
「ブルース・ウェインの選択」は、現代に復活したブルースによるバットファミリーの実力試験という体で、当時のバットファミリーを紹介していく連作集となっています。

○バットマン:インコーポレイテッド
○バットマン・インコーポレイテッド:デーモンスターの曙光
○バットマン・インコーポレイテッド:ゴッサムの黄昏



"死"を体験したブルース・ウェインが復活後にぶち上げた「バットマンをフランチャイズ化し世界中の都市にバットマンを配備する」という驚天動地のプロジェクトを描いた作品。
「80年の歴史を持つバットマンの物語が、現在の"闇の騎士"像とは異なる別の方向に進化していたら?」という事をテーマにし喝采を浴びた非常に評価の高い作品で、管理人もお勧め。
流れとしては、上記の「バットマン・アンド・サン」~「R.I.P.」と「バットマン&ロビン」の流れを継承しており、この順番で読むのが吉。
バットマンと仮面ライダーを足して2で割ったような"日本のバットマン"オサム・ジローが登場するのもこの作品

○バットマン:ブラックミラー
○バットマン:ゲート・オブ・ゴッサム


こちらも、ディック・グレイソンがバットマンを務めていた時期の作品。
『梟の法廷』などと同じライターが話を書いており、かつ話も比較的独立しているためお勧めです。
特にブラックミラーは、ゴードン署長の息子、ゴードンJrが登場するサイコスリラーで、お勧めです。

バットマン:ノーマンズ・ランド

度重なる災害により、連邦政府から切り離された無法地帯となったゴッサム。
ヴィラン達が独自の法の下で"国"を管理し、食糧やエネルギーを巡って互いに争う戦国時代のような街に、ヒーロー達は秩序を取り戻せるのか!?

90年代末期に大ヒットした記念碑的イベントの翻訳版。(全4巻)
バットマンの関係者がヒーロー/ヴィラン問わず総登場する作品。
大作ですのでいきなり読むのはお勧めできませんが、これを読めば一通りの主要キャラの活躍をみる事が出来るのが魅力。

バットマン/スーパーマン:クロスワールド

リブート後の世界を舞台にしたバットマンとスーパーマンのチームアップ誌。
話が『ジャスティスリーグ:誕生』や『EARTH2(未邦訳)』の内容を踏まえたものなので、少しお勧めしがたいところもありますが、ストーリーもアートも折り紙つきの内容。

○スーパーマン/バットマン:パブリック・エネミー
スーパーマン/バットマン:スーパーガール


一方こちらはリブート前の作品ですが、バットマンファミリーとスーパンマンファミリーが入り乱れる活劇主体の物語。
DC社の2大ヒーローの魅力が余すことなく盛り込まれた作品ですので、「映画に合わせて2人の活躍が楽しみたい」ということであれば、こちらがお勧め。

バットマン VS. スーパーマン:ベストバウト(仮)

様々な時代のバットマンとスーパーマンの対決回を集めたオムニバス。
『バットマン:ハッシュ』や『ジャスティスリーグ:誕生』に収録された話の再収録もありますが、この価格は魅力的。


バットマン:デス・イン・ザ・ファミリー

「二代目ロビンの死亡」というバットマンにおいて非常に重要な事件の翻訳。
バットマンを語る上で外せない事件ですが、話も画も少し古めなので、初めから無理に読む必要はありません。

バットマンvs.ベイン

映画「ダークナイト ライジング」の悪役ベインに焦点を当てたオムニバス作品。
これも少し古めですし尻切れトンボで終わってるので、強くはお勧めしません。

【正統派:読み切り】
バットマンの基本設定に忠実ながら、それ単体で独立している作品。はじめはこれら作品から入るのがお勧めです。

〇オールスター・バットマン:ワースト・エネミー


New52期のバットマン人気の立役者となったスコット・スナイダー。
未だに根強い人気を誇る彼の功績を称えると同時に、"スナイダーによるバットマン"を熱望する読者の期待に応えるために立ち上げられた番外編。
「New52期には見られなかったスナイダーのバットマンを!」というテーマの下、1冊ごとに異なるヴィラン、異なるアーティストをスナイダーが料理する趣向となっています。
その第一弾となる『ワースト・エネミー』の悪役はツーフェイス。バットマン屈指の人気悪役とバットマンの憎しみと友情に満ちた旅を、"Mr.マーベル"として名をはせながらもDCへの電撃移籍を果たしファンの度肝を抜いたジョン・ロミータJr.が描きます


バットマン イヤーワン/イヤーツー

タイトルの通り活動を始めたばかりのバットマンの活躍とその誕生秘話を描いた作品。
このため世間的には「最初にバットマンを読むならこれ!」という声が支配的ですが、"第一話"というよりは"前日譚"という位置付けですし、とにかく地味で渋い雰囲気なので、管理人的にはそれほどお勧めしません。
(とはいえ、超ド級の名作なのでいつかは読んで欲しい、というか読みたくなる筈です。)
本当は"変化球"のカテゴリーに入れたかったのですが、訳あってこちらに入れました。その訳とは…

★バットマン : ロング・ハロウィーン

…こちらの作品に直接続いているから。
バットマンの活躍開始の2年目を扱った作品で、映画「ダークナイト」の原作のひとつといわれる作品です。と言ってもストーリーが似ているわけではなく、「バットマン、ゴードン、デントの友情とその崩壊」という大枠のみですが。
ダークナイトでトゥーフェイスが気に入った人はこの作品から読むのがお勧め。
いちおう上記のとおりイヤーワンの続きとなっていますが、いきなりここから読み始めても大丈夫のはずです。(むしろ管理人はそういう読み方を押したい。)
こちらも、有名ヴィランが続々登場するので、そういう意味でもお勧めです。
20130217_01.jpg
ちなみにアートはティム・セールで、いわゆるアメコミ風の画から離れた"おしゃれ感"のある画風が魅力となっています。

バットマン:ダークビクトリー

ロングハロウィーンの続編。
こちらもロングハロウィーンと同様、「ミステリー仕立てのストーリーを続々登場する有名ヴィラン達が彩る」という形式ですので、ロングハロウィーンが気に入った人には素直にお勧めできます。
(ストーリー&アートともロングハロウィーンと同じ人)

キャットウーマン:ホエン・イン・ローマ

キャットウーマンを主人公にしたロングハロウィーンとダークビクトリーの番外編。
こちらは、本編に比べてコメディ色とセクシーさが強く出ています。

★バットマン:キリングジョーク 完全版

ジョーカーの誕生秘話をテーマに、彼が引き起こした"DC史上最悪の犯行"をあつかった作品。
各種企画で"アメコミのオールタイムベスト"を選ぶと高確率で1位をさらう超傑作です。ジョーカー好きなら絶対に読んでほしい作品ですね。
少し古めの作品なのですが、ストーリー&アートともにまったく古びていないのに驚き。
まさに不朽の名作です。「単行本1冊でバットマンの真髄を味わいたな。」という方に、激お勧め!

バットマン:ラバーズ&マッドメン

ジョーカーの"もう一つの誕生秘話"を扱った作品。
上で紹介した「キリングジョーク」が傑作すぎて、ジョーカーのオリジンといえばキリングジョークのものを指すようになっていたのですが、その名作にあえて立ち向かいまったく別のオリジンをぶち上げた作品。
悪くはないですが、相手が悪かった。。。

◎笑う男

バットマンとジョーカーの初めての対決を描いた作品。ジョーカーの魅力を堪能する意味では悪くない内容。
これまた、後腐れないので、「とりあえず1冊だけ読もう」という方にお勧め。

【変化球:読み切り】
ちょっと変わり種の作品群。もちろん翻訳がでるだけあって名作揃いですので、普通のバットマンに飽きたらどうぞ。

◎ダークナイトリターンズ
イヤーワンのフランク・ミラーの描く"バットマンの最終回"。
これまたアメコミ自体の歴史を変えた超名作。
これもバットマンを読んでるといつか読みたくなる作品です。


オールスター:バットマン&ロビン ザ・ボーイ・ワンダー

フランク・ミラーによるバットマンのオリジン「イヤーワン」と最終回「ダークナイトリターンズ」の間をつなぐ作品。
かなり暴力的でエキセントリックなバットマンが楽しめますが、正直オススメはしません。
ちなみに、アートは大物ジム・リーで非常にかっこいいです。(投げやりな説明すみません。)


◎バットマン:マッドラブ/ハーレイ&アイビー

アニメ版バットマンのコミカライズ。
アニメ版の産んだ人気キャラ、ハーレクインが主役を張る話が多いです。
気楽に楽しめる冒険譚が多いので、アニメ版のノリが嫌いじゃなければ、お勧めです。

ジョーカー

ジョーカーがゴッサムの裏社会を掌握していく様子を手下のチンピラの目線で書いたピカレスクロマン。クリエイターは否定していますが、映画「ダークナイト」の影響を強く受けた作品です。
「ダークナイト」のジョーカーが気に入った方には良いかも。

バットマン:ザ・ラスト・エピソード

バットマンが死んだ!
彼の葬儀に集まった長年の友人と悪役たち、彼らは次々とバットマンの遺体の前で弔文として、彼との思い出と、その最期の瞬間をかたる。。。
アメコミライター出身で、今では売れっ子ファンタジー小説家となったニール・ゲイマンによる短編。
「物語としてのバットマン」をかたった幻想的な作品。

フラッシュポイント:バットマン

人類がワンダーウーマン率いるアマゾン軍とアクアマン率いるアトランティス軍の戦いの間で、ぼろぼろになった世界を舞台にしたイベント「フラッシュポイント」におけるバットマンの活躍。
かなり面白い作品なのですが、あくまで「フラッシュポイント」の番外編なので、先にそちらをよんでから。

バットマン:ノエル

「バットマンでクリスマスキャロルをやる」この一文で全てを語れてしまう作品。
画もセリフ回しもなかなかいいので、上記の説明にぐっと来た人はどうぞ。

BATMANオリジナル・コミック日本語版

80年近い歴史を持つバットマンの(かなり)昔の作品を集めた短編集。
原題&背表紙の「The Greatest Batman Stories Ever Told」から勝手に「傑作選か!」と思って手を出すと痛い目を見ること間違いなし。
なんせ発表年が古いので今の目で見るとかなり厳しいです。
当時の雰囲気そのものを楽しむ気持ちで読むのが吉。

○バットマン アンソロジー
ジョーカー アンソロジー

こちらはバットマン生誕75周年を記念して作成されたアンソロジー。
上記の書籍に比べると、75年前から現在までの各時代の作品をバランスよく収録しているのが特徴。
「バットマンの歴史を楽しむ」という観点では、現状、これが一番かも。


バットマン:アーカム・アサイラム 完全版

"バットマンの精神鑑定"をテーマに、ジョーカーによるアーカム立てこもり事件を描いた作品。
特筆すべきはそのアート。一枚一枚が絵画のような作品です。
バットマンのマイナーヴィランたちが美麗な絵で登場するので、管理人はかなり好き。

○バットマン:アースワン


「極限までに現実的な世界でのヒーローのありようを考える」というコンセプトの"アースワン"シリーズからの一品。なのでバットマンは”冷静沈着な闇の騎士”じゃないし、ゴードン警部だって”悪徳の街に生きる最後の正義”とは言い難い。
ただ、だからこそ「そう言う自分でありたい」と覚悟を決める彼らが非常にかっこいい作品。
お勧めです。

○バットマン:リル・ゴッサム


表紙のとおり、水彩画の優しいタッチで描かれたチビキャラたちが、ほんわかした物語を紡ぐ連作集。
表紙にビビっときた方は是非どうぞ。
コマの端にマニアックなキャラクターが隠れてたりするので、そういう意味でもあなどれません。



変化球:続き物
残念ながら(?)翻訳ものではでていません。
きっと未来世界のバットマンを描いたバットマンビヨンドの翻訳がでたらここにカテゴライズするのでしょう?
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アメコミ初心者お勧め翻訳本ガイド(アメコミ放浪記私見版)

今回は"アメコミ初心者お勧め翻訳本ガイド"と銘打ちまして、管理人が「映画・ゲームなどでアメコミに興味が持った人が初めに手を出すのにいいんじゃないか?」と考える、翻訳本を紹介させていただきます。
(本当は上達や優劣の存在しない世界で"初心者"って言葉を使うのには違和感があるのですが、Googleによると頻出検索語句らしいので、あえてこの言葉を使わせてもらいました。)

実は以前、似たような企画で「バットマン翻訳本ガイド(アメコミ放浪記私見版)」という記事を書いたのですが、こちらの方はまだアメコミの翻訳が今ほど活発ではなかったころに書いたため、どちらかというとバットマンの翻訳本を網羅的に分類するようなスタンスで書かれています。(今も密かに更新中)
しかし未曽有の翻訳ブームを迎え、大きな本屋に行けば大量の翻訳本があふれている現状を考えると
「今必要な情報は網羅的な一覧ではなく、そこから厳選・集約した情報では?」と思い、今回の記事を書かせていただきました

ちなみに選定のポイントは以下の4点。
 ①お話の独立性が高くて単体で楽しめる
 ②"別世界”とか"前日譚"のような変化球は避ける
 ③比較的最近の作品で画が今風のもの
 ④"じんわりとした良い話"ではなく、娯楽映画的な活劇やサスペンスを重視する
   ※④は私の趣味です(笑)

「バットマン:梟の法廷」
「バットマン:梟の街」


本国で大ヒットを飛ばし、現在のバットマン世界をけん引している大人気作家スコット・スナイダー氏による作品。
新規読者の取り込みを強く意識した作品の為、事前知識がほとんどいらないのが特徴。
西部開拓時代からゴッサムの歴史を影から操ってきた秘密結社"梟の法廷"とバットマンの対決を描く、サスペンス仕立ての作品となっています。
ちなみに似たタイトルの「バットマン:梟の夜」はあくまで番外編なので、注意が必要です。

また、コンピューターゲーム「バットマン:アーカム・アサイラム」シリーズなどを通して、ジョーカーやトゥーフェイスなど個性豊かな悪役たちに興味がある方には、
HUSH

もおすすめです。

スパイダーマン:ブランニューデイ

スパイダーマンに興味がある方はこちらがお勧め。
名前が示す通り「(細々した伏線を引きずらず)いったん仕切りなおそう!」という意図の下で始まったシリーズであるため、非常に読みやすいです。
映画やアニメでスパイダーマンのボヤキ混じりの軽口を楽しんだかたは是非!

キャプテン・アメリカ:ウィンターソルジャー

映画などでキャプテンアメリカに興味が出てきたかたにお勧めなのがこちら。
名前が示す通り2作目の映画の原案となった作品の1つですが、あくまでイメージソースの一つであって、ストーリーは大幅に異なります。
映画同様スパイスリラー風の作品となっており、レッドスカル、ウィンターソルジャー、フューリーなど映画でおなじみのキャラがメインのお話なので、映画が気に入った方はすんなり入っていけると思います。
ちなみに、アイアンマン/ファルコンなどゲストキャラも豪華。

ジャスティスリーグ:誕生

色々なヒーローが登場するチーム物が読みたい方は、こちらがお勧め。
バットマンやスーパーマンたちが活躍するDCコミックスのオールスターチーム、ジャスティスリーグの第一巻です。
「突如、始まった異世界からの地球侵攻にたいして、ヒーローたちがひとりまたひとりと結集していく」という趣向になっており、この作品自体がリーグの各メンバーのキャラクター紹介となっています。

ニューアベンジャーズ:ブレイクアウト

「初めてアメコミを読む方向け!」と謳うならば、是非とも入れておきたいのがマーベル映画の中心的作品であるアベンジャーズ。しかし意外にこれが難しい。

実はアベンジャーズの翻訳本はアメコミの翻訳では珍しい「原書の1巻からコツコツと順番に訳している作品」である上に、この時のマーベルユニバースの状況や、過去の経緯を前提としたお話が多いんですよね。
なので、どうしても先ほどあげた選定ポイントのうち「①お話の独立性が高くて単体で楽しめる」という方針に抵触してしまう…

とはいえ、この本に限らずアメコミの翻訳本は、日本の読者が独立した商品として楽しめるように、出版社の方で豊富な脚注をのせているので、おそらく問題ないでしょう。

というわけで、アベンジャーズに興味がある方には「ニューアベンジャーズ:ブレイクアウト」をおすすめさせてもらいます。
このシリーズは、キャプテン・アメリカ、アイアンマンといったアベンジャーズの定番メンバーに、スパイダーマン、ウルヴァリンといったマーベルが誇る超人気キャラを加えることで、アベンジャーズを"真のドリームチーム"へと生まれ変わらせた記念碑的な作品で、このシリーズを順番に読み進めるだけで、2000年代のマーベルユニバースの主要な動きを横断的に網羅できる仕組みになっています。

【ネタバレあり】「JLA:逆転世界」を勝手に解説

先日の記事で「JLA:逆転世界」の事を
『物語の要素の意図的な省略や、メタ要素バリバリのヒーロー観など、モリソンらしさ爆発』
と表現したところ、『もう少し詳しく解説してほしい』とのコメントをいただきました。

これに対して、無い頭を振り絞ってあれこれまとめたのですが、筆の重い自分としてはコメント欄に書くだけでは惜しい分量となったので、独立した記事としてまとめさせてもらいました。
ちなみにネタバレ全開ですので、ご注意ください。


20130430_01.jpg

まず「意図的な省略」の部分ですが、モリソンは「物語の重要な要素をあえて描写せずに読者の想像に任せる」という手法をよく使い、これによって「作劇にスピード感を出す」「読者に"読み解く楽しさ"を提供する」という効果を狙ってるふしがあります。(すいません、予想です。)

「逆転世界」における前者の例を挙げると、冒頭の「正義ルーサーによる、悪ルーサーの地位の乗っ取り」や、クライマックスでの「CSAのメンバーによる正史世界の侵略」の過程がサクッと省略されているのがこれに当たり、それぞれ、その後のセリフから何が起こったかを想像させる構成になっています。

後者の例で顕著なのは、ゴッサム警察署長とオウルマンの関係でしょうか。
20130430_02.jpg

翻訳版では解説にあっさりと答えが書いてあるので、そう感じない人が多いかもしれませんが、基本的に読者は、一読しただけではこの2人(とバットマン)の関係がよくわからず混乱するように書かれています。
顕著な例でいえば、署長がオウルマンを呼ぶときに使う"トーマス"という呼び方でしょうか。
(自然な流れでいえば"トーマス"ではなく"ジュニア"ですよね?)
また警察署長が常に名字か愛称でしか呼ばれないのも、同様です。

この部分を読者に推理させることで「自分は2人の秘密に気が付いた」という満足感をあたえ、オウルマンの墓前での失意や、最後の活き活きした態度が、より感慨深いものとなるような仕組みとなっています。

また「メタ要素」ですが、これは読まれた方に語るのはいまさらなのですが、逆転世界における"逆転"とは、単純にヒーローが悪人になっているという「善人と悪人の逆転」でもなければ、SF短編でたまにある"善行が悪徳、悪行が美徳"という「倫理の逆転」でもなく、世界の基本理念が"勧善懲悪"ではなく"勧悪懲善"になっているという「物語のルールの逆転」となっている部分です。

そのせいで、CSAの世界ではヒーローであるルーサーが立てた計画にはいつも穴があり、それに漬け込まれてルーサーは失敗ばかりしているのですが、これって裏を返すと「普段のコミックで最後にヒーローが勝つのは、そういう物語世界だからだ」っていうことですよね。

そんなこんなで、「悪のJLA登場」というキャッチーなあらすじの割に、本作品はちょっとクセのある、好き嫌いの別れる作品となっております。
ですので、あまり好みに合わなかったとしても、あまり気にせず、次の作品に行ってしまってもよいのではと思います。
(王道展開の「バベルの塔」は、その点でクセがなく万人受けするものだと思います。)

【宣伝】(使い回し)
遂に小プロからJLAの翻訳本2冊が発売されました。
「バベルの塔」は王道好きのマーク・ウェイドらしい直球展開で万人におすすめ。
「逆転世界」もよくある"異世界物"と思わせておきながら、物語の要素の意図的な省略や、メタ要素バリバリのヒーロー観など、モリソンらしさ爆発の快作となっています。(モリソンといえば、スーパーゴッズを読むと、彼のちょっとキ○○イじみたヒーロー観がよくわかります。)
ところで今回紹介した「バベルの塔」を読んでいて、なんとなく今回紹介したジャスティスリーグを思い出しました。ホントにあの人は懲りないんだから...



後外せないのが、ヴィレッジブックスから先日発売された「ニューアベンジャーズ:トラスト」。
遂に私がMarvelで好きなヴィラン、フッドの登場です。私のフッドへの熱い思いはこちらの記事を参照。




後は、映画「マン・オブ・スティール」の公開に合わせて、スーパーマンの翻訳が盛んになってきました。
管理人は未読ですが、「フォーオールシーズン」は名作と名高いので楽しみです。
後は「アースワン」と「レッドサン」はそれぞれ別世界を舞台にした作品ですが、それゆえにDC世界に馴染が無い方にもお勧めできます。何気に「レッドサン」はバットマン/ワンダーウーマン/グリーンランタンなど、ジャスティスリーグのヒーローが総登場だったりします。
プロフィール

NOB-BON

Author:NOB-BON
X-men生まれSpawn育ちを地でいく、90年代アメコミバブルの残党。
しばらくの間、アメコミは翻訳本を買う程度だったのが、最近のデジタルコミックの手軽さにひかれ、本格的に復活しました。

基本的にMarvelメインですが、DCのリランチを機に自分の中でDCブームが来てるので、しばらくはDCの話題続くかも。
しばらくどころか完全にDC派に転びました。

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