シークレット・エンパイア #0 

シークレット・エンパイア #0 
(作:ニック・スペンサー、画:ダニエル・アクーニャ)

今回は、マーベルの夏の大型イベント『シークレット・エンパイア』と、その直前に刊行された『キャプテン・アメリカ:スティーブ・ロジャース』から気になったシーンを紹介。

【スティーブの一番長い日】
英雄スティーブ・ロジャースを長官に迎えたSHEILDとヒーローコミュニティは、かつてない苦境に立たされていた。
地球の内外に2つの戦場を同時に抱えることになったからだ。

1つ目の戦場は成層圏の外。
侵略宇宙人チタウリの大軍団が、なぜか地球にその進路をとったのだ。
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チタウリを迎え撃つのはキャプテン・マーベルに率いられた地球防衛軍アルファ・フライトや、宇宙船を壊され地球への滞在を余儀なくされていたガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシーなどの宇宙系ヒーローたち。

次々と惑星軌道へと到着するチタウリの群れに圧倒的な戦力差を感じるキャプテン・マーベルであったが、実は彼女には1つ秘策があった。その秘策とは地球を囲う全方位バリアー、通称"ザ・シールド"。
シールドの前長官であるマリア・ヒルが、自身の弾劾裁判の時に人気取りのためにぶちあげた荒唐無稽な計画を、キャプテン・マーベルは密かに実用段階に移していたのだ。

スティーブ・ロジャースからは再三「地球をバリアーで囲いその中に身をひそめることは、地球の可能性をつぶし孤立を深める」と計画の中止を忠告されたザ・シールドであったが、キャプテン・マーベルはスティーブへの反発心もあり、その開発を自らの権限で進めていた。

ヒドラのテロリストによる妨害もあり、チタウリの襲来にはまにあわなかったザ・シールドの構築だが、その実用化は既に最終段階。
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当代きってのエンジニアであるリリ・ウィリアムス(アイアンハート)と、トニー・スターク(のAI)による復旧を待つばかりであった…

もう一つの戦場はニューヨーク。"平和な牢獄"プレザントヴィルから脱走したヴィラン達をバロン・ジーモがまとめ上げた新生マスターズ・オブ・イービルが、大規模な破壊活動を開始していた。
しかしニューヨークと言えば世界中でもっともヒーローがたくさんいる街。
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すぐさまルーク・ケイジやアイアンフィスト、Dr.ストレンジなどニューヨークをホームグラウンドとするヒーローたちが立ち上がり、ニューヨークでは大乱戦が勃発する。

宇宙/マンハッタンと未曽有の危機を2つ抱えながらも、ヘリキャリアの上から懸命に指揮をつづけるスティーブ・ロジャース。しかし、彼と対照的に米軍の最高司令官であるアメリカ大統領は早々にその任務を放棄。
スティーブ・ロジャースに全権をゆだね、自らは安全なシェルターへと引き籠ったのだ。

これはつまり、SHIELD長官とアメリカ軍最高司令官という地球最高の軍隊の指揮権を握るかつてない権力者が生まれた瞬間であり、これこそがスティーブが兼ねてより狙っていた"勝機"であった…
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スティーブは完成したばかりの"ザ・シールド"を起動し、次から次へと襲来するチタウリをキャプテン・マーベルたちと共にシャットアウト。
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※余談ですが、チタウリが地球に襲来するのはスティーブが密かにチタウリの女王の卵を育てているから。
 そしてもちろんキャプテン・マーベルに訳知り顔でザ・シールドの愚かさを説教したのは、
 そうすることが彼女にザ・シールドを建造させる一番簡単な方法であることを知っていたからです。

続いてヒーローたちが集結したマンハッタン島を、密かに手に入れていた魔導書を用いてダークディメンションの底に沈める。
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かくして、地球の護り手であるヒーローたちを難なく盤上から追い出したヒドラキャップとヒドラは、世界征服へと打って出る…
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【戦闘前夜】
世界の統一という難行を前にしたスティーブが行ったこと。それは歴戦の勇士でありヒーローたちの中心人物であったキャプテン・アメリカが苦難を前にして何度も行ってきたこと、戦地へと赴く仲間を勇気づけることであった。

ヒドラの戦闘員を前にして、スティーブはいつも通りの真摯な口調で語る。
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これからの戦いが今までにない苦しい戦いとなること。
そして戦いの中で犠牲となる者もあらわれるであろうこと。
それでもなお"全人類を一つにする"という理想を信じ、自分についてきてほしいこと。

そして、演説はやがて戦闘員への問いかけで終わる

スティーブ:…そして全てが終わり戦塵が収まるとき、世界はこう声を上げるだろう
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【スティーブの記憶】
時は戻って、ヒドラキャップの脳内歴史の回想シーン。
米国に侵入したヒドラのスパイとして第2次世界大戦を戦うキャプテン・アメリカですが、そんな彼に「敗色濃厚な連合軍が戦争の趨勢を激変させる新兵器の開発を完了させた」という情報がはいる。
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新兵器の名前はコズミックキューブ。

世界のありようを書き換える力を秘めたその立方体の力によって、連合軍は「連合軍がナチスを破った世界」に変えようとしているというのだ。

そんな突拍子もない情報を聞かされたスティーブは、彼の"最後のミッション"のために日本に呼び出されることとなる。
ヒドラの士官学校時代の恩師クラーケンに連れ添われ、ヒドラ発祥の地とされる遺跡に招き入れられたスティーブ。
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今まさに連合軍による世界改変が行われようとしているその瞬間、彼はそこで秘密の儀式を受けることとなる。

クラーケン:次に君が目を覚ました時、君は経験したことのない過去を記憶し、歩んだことのない人生を歩んでいるだろう。
しかし何が在ろうと忘れるな。君はヒドラだ、我々の戦士なのだ。

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スティーブの前には、コズミックキューブによって書き換え始められた新たな歴史のヴィジョンが立ち上る。
スティーブ:これは!?
クラーケン:これが我々に与えられる牢獄、ただのまやかしだ。
いいか。君だけは真実を胸に刻み、我々を解放するんだ。それこそが君に与えられた宿命だ。


そして起こる世界改編。
かくしてスティーブ・ロジャースは、この世界で唯一本当の歴史を知る男。"Man out of Time"となったのだ…

******************
というわけで、遂にヒドラの信奉者としての正体を白日のものにさらしたスティーブ。

スパイとしての暗闘を1年間付き合ってきた読者としては、何とも言えない"裏のカタルシス"に溢れた展開でした。
誰よりも信頼されていたキャップの裏切りを知ったヒーローたちの反応が本作の一番の見どころとなっていますが、それについては現物を読んでいただくとして、管理人が思わずうなったのはスティーブの回想の終着点。

読者としてはスティーブの回想は全て彼の脳内にのみ存在するものとして語られてきたのですが、ここにきてこれこそがこの世界の真の歴史である可能性が提示されました。

じつは今まで「スティーブだけが自分の脳内歴史に基づいて行動している」という本作のセッティングは、度々ユーモラスな会話のすれ違いを生む装置として活用されてきました。
しかし今回改めてスティーブの現実認識を知ったうえでそういったやり取りを読み返すと、彼が自分の歴史と相手の歴史が違うことをはっきりと理解したうえで、時にはその違いに苛立ち、またある時は悲しみながら孤独な戦いを強いられてきたことがはっきりと読み取れる構成となっており、ライターであるスペンサーの巧みな構成に舌を巻くばかりです。


【宣伝】
まずは最近翻訳が発表された新刊の紹介。まずはアベンジャー系列の映画の重要なキーアイテムとなっているインフィニティガントレットを手に入れたサノスとヒーロー連合の激突を描いた『インフィニティ・ガントレット』。
そして、同じくサノスによる地球侵攻を描いた2013年のイベント『インフィニティ Vol.1』の翻訳も決定しました。
DCからリブート前に刊行されたハーレイ・クインの個人誌『ハーレイ・クイン:ビッグ・トラブル、ビッグ・バルダ』が発売(今では表紙しか書かないことが多いテリー・ドットソンが本編も描いてる!)



(以下は使いまわし)
気になる邦訳作品、まずはDCですがなんといっても嬉しいのがスナイダーバットマンのつるべ打ち。
先日は発売されたばかりの『スーパーヘヴィ』とその続刊の『ブルーム』で、ゴードン本部長による"ロボバットバニー"版バットマン編は終了。
またバットマン75周年を記念したお祭り企画『バットマン:エターナル』の下巻も7月に発売され、その後の『エピローグ』でNew52を完走したスナイダーの物語の大団円と、スナイダーからバトンを受け渡されDCリバースでバットマンを描くこととなった2人の橋渡し的な物語が描かれます。
管理人的には、スコット・スナイダーのバットマンのテーマを理解するうえで重要な補助線となる『エターナル(下巻)』と『エピローグ』が特にお勧めです。


またマーベルでは今後のMCUの映画において重要な意味を持つことになるであろう作品「インフィニティ・ガントレット」、Dr.オクトパスが成りすましたピーターの物語『スーペリア・スパイダーマン:トラブル・マインド』、そして映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー Remix』のスタッフロールにてはっきりと"原作"と明記された『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:レガシー』あたりが気になるところです。

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キャプテン・アメリカ:スティーブ・ロジャース #14-15

キャプテン・アメリカ:スティーブ・ロジャース #14-15
(作:ニック・スペンサー、画:ヘスース・サイズ)

当ブログで何回か紹介してきたヒドラキャップを主人公としたキャプテン・アメリカ:スティーブ・ロジャース誌。
コズミックキューブによって歴史を改変されたスティーブの物語は、夏のイベント『シークレットエンパイア』に向けて1つの転機を迎えます。
(過去の記事は、こちらこちらを参照)
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【真ヒドラの復活】
卓越した人心掌握術と、プロフェッサーXから奪い取ったテレパシー能力でレッドスカルが築き上げた新たなヒドラ。
その勢いは留まることを知らず、SHIELDの長官へと上り詰めたキャプテン・アメリカによる密かな後方支援に下支えされ、いまや東欧の小国を乗っ取り、核武装した主権国家として国際社会に堂々と自らの要求を主張するまでになっていた。

しかし"ヒドラ"の名を自らの私兵集団につかうレッドスカルの陰で、"真のヒドラ"が復活しつつあった。
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その立役者は幼いスティーブがヒドラとなるきっかけを作った人物であるエリサ・シンクレア。
スティーブの脳内歴史にしか存在しないはずの彼女はマダム・ヒドラを名乗り、世界中をまわり真ヒドラの評議会を結成する。

そのメンバーは

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忍者集団ザ・ハンドの首領ゴーゴン

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ヒドラの理念を体現した群体生物ハイヴ

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洗脳と催眠術で人々を自在に操る心理学者Dr.ファウスタス

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かつてはヒドラの指導者も務めたテロリスト、ヴァイパー

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その精神を機械に移し、異次元世界ディメンジョンZで歪んだ実験を繰り返すマッドサイエンティスト、アーニム・ゾラ

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そして、ヒドラキャップの恩人のアーマーを継いだ謎の人物クラーケン
(どうもその正体はキャップの知り合いで、キャップは彼の事を死んだと思っているらしい)

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ちなみにタスクマスターとブラックアント("度し難い"3代目アントマン)は、色々あって現在はエリサの付き人。

【レッドスカルの末路】
東欧の小国を核兵器と共に乗っ取ったレッドスカル。
しかし彼の野望は、ローグやデッドプール、ヒューマントーチなどで構成されたアベンジャーズ・ユニティ・スクワッド、通称"アンキャニーアベンジャーズ"の活躍によって潰えた。
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レッドスカルを捕まえたローグは友人ビーストに依頼し、レッドスカルの体からチャールズ・エグゼビアの脳を切除。
レッドスカルはその力を失い、SHIELDの収容施設に収容されることになる。

ところが現在のSHIELDのトップはレッドスカルの部下であるキャプテン・アメリカ。
彼はその権力を使って、レッドスカルの部下であるクロスボーンとシンの脱出計画を支援。レッドスカルはまんまと収容施設を脱走し、隠れ家へ向かう。

隠れ家でレッドスカルを待っていたのは、今回の脱走劇の立役者であるキャプテン・アメリカであった。
しかしレッドスカルは、自分の脱獄を成功に導いた部下を激しく叱責する。
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レッドスカル:ユニティ・スクワッドはお前のチームの筈、なぜ今回のような失態が起きる!
スティーブ:今の状況は全て私が招いたこと。私は長い間、私のすべてを捧げて…
レッドスカル:そうだお前は私に仕えてきた。
スティーブ:どうも勘違いがあるようだ。私がすべてを捧げたのはヒドラであって、お前はそれを盗み取っただけだ。
私の知るヒドラは、誇り高くそして強くかった。
お前はヒドラのためにいったい何を犠牲に捧げたというのだ?
お前がヒドラを捻じ曲げ、堕落させたのだ!


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キャップはかねてよりレッドスカルがプロフェッサーXの脳を失う瞬間を狙っていたのだ。

レッドスカル:馬鹿め。私がお前を作ったのだ。お前の信念は全てまやかしだ。ただの夢(Dream)にすぎないのだ!

自分を裏切ったキャップに、全ての事実を話そうとするレッドスカル。
しかしスティーブは聞く耳を持たずに、レッドスカルを殺害する。

スティーブ:その通り、私が忠誠を誓うのは"理想(Dream)"だけだ。

全てを終えたスティーブ。
そんな彼を迎えに来たのは・・・
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【宣伝】
近刊予定で気になっているのは映画『ローガン』に合せて刊行される『ウルヴァリン:オールドマン・ローガン』と『ウルヴァリン:バック・イン・ジャパン』。特に前者は、荒廃した近未来のアメリカを舞台にし傑作の名をほしいままにした作品で、今回の映画に強く影響を与えた作品です。
またマーベルではDr.オクトパスに乗っ取られたスパイダーマンの続編『スーペリア・スパイダーマン:トラブル・マインド』とデッドプールがスパイダーマンの歴史的瞬間にひょっこり現れて暴れまわるの『デッドプール:バック・イン・ブラック』あたりも気になるところ。



またDCでは、「ゴードン警部が官製バットマンとなる」というダイナミックな展開を、独自の"バットマン論"へと昇華させた傑作『バットマン:スーパーヘヴィ』とその完結編『バットマン:ブルーム』が連続刊行。
また人気者ハーレークインの新刊『ハーレイ・クイン:ジョーカーズ・ラスト・ラフ』と、彼女が同じく人気者のデスストロークと地獄の鬼ごっこを繰り広げる『デスストローク:スーサイド・ラン』も発売決定です。

ヒドラキャップの少年時代(キャプテン・アメリカ:スティーブ・ロジャース)

キャプテン・アメリカ:スティーブ・ロジャース
(作:ニック・スペンサー、画:ヘスース・サイズ)

"キャップの正体はヒドラの工作員であった"という衝撃のカミングアウトで始まった本作。
単なる客寄せの路線変更に留まらない本作のセッティングの妙は、以前当ブログでお伝えしたとおりです。

本作では、ヒーロー/ヒドラいずれにも背を向け密かに自身の理想を追求するスティーブの姿が描かれているわけですが、実はそんなスティーブの陰謀劇と同量のページを割きながら展開されているもうひとつの物語があります。
それは新たなスティーブの少年時代。

無邪気で危険な生けるコズミックキューブの少女コビックによって、書き換えられたスティーブの過去。
スティーブの脳内にしかないその歴史において、彼に何があったのか?

今回の記事ではその歴史を追っていくことにします。

【狂騒の20年代】
1926年アメリカ、第一次世界大戦を終え"狂騒の20年代"と呼ばれる黄金期を迎えたアメリカはブルックリンにて、スティーブ少年は働き者の母親と身を寄せ合って暮らしていた。
毎日を慎ましく、勤勉に暮らす親子の一番の悩みは、父親であるジョセフ。職を失いアメリカ経済の発展から乗り残されたジョセフは酒に逃避し、度々スティーブと母サラを殴るのだ。

重労働を終えくたくたになって帰路につく母子を、今日も路上で殴るジョセフ。
しかし、そんな蛮行を見かねた1人の女性が、2人の間に割って入り、スティーブとサラを助ける。

彼女の名前はエリサ・シンクレア。上品な衣装を身にまとい洗練された立ち振る舞いを見せる彼女は、サラと話すうちにサラの真面目で勤勉な性根を気に入り、彼女に自らの所属する市民団体に誘う。

その市民団体とは…
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【友愛団体ヒドラ婦人部】
恩人エリサの強い勧めを断れずヒドラの婦人部に入ったスティーブの母サラ。
彼女はそこでも持ち前の勤勉さを発揮し、地域のボランティア活動に精を出していた。
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(婦人部の会合の締め)

暴力を振るう夫の待つ家庭とつらい職場以外に自身の居場所を見つけ、心の安寧を得ていくサラとスティーブ。
しかし、そんな生き生きとした妻を面白く思わないジョセフは、その暴力をエスカレート。
夫からのDVを黙って耐えるサラだが、その様子を見かねたエリサは、ヒドラの"青年部"に問題の解決を命じる。
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しかし、ジョセフの死亡をエリサと結びつけたサラは、エリサの期待とは裏腹に、エリサとヒドラの行いに恐怖を覚える。
深夜のスティーブ宅で繰り広げられた押し問答の末、ヒドラ青年部のゴロツキは、勢いあまってサラを殺害してしまう。
ベッドの下で一部始終を目撃したスティーブ少年も口封じのために手をかけようとするヒドラ青年部だが、エリサはそれを制止。
一夜にして身寄りを失ったスティーブ少年を、自身の庇護の下、ヒドラの養成施設に引き取ることを宣言する。
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【ヒドラ養成所】
ヒドラの養成施設で待っていたのは、病弱なスティーブ少年にとっては厳しい"兵士候補生"としての生活であった。
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問題解決/戦略立案の面では卓越した才能を見せたスティーブ少年だが、肉体面では散々な評価。

養成施設に連れてこられて8年。スティーブは遂に施設からの脱走を決意する。
警備員の監視の目をかいくぐり何とか施設の外にある森へと逃げ込んだスティーブ。しかしそこで彼の前にヒドラ最高のスパイ、クラーケンが立ちふさがる。
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スティーブ:すみません、僕はただ…その…
クラーケン:「ただ、脱走しようとしていた」そうだろ?


思わぬ大物の登場に言葉を失うスティーブ少年に対しクラーケンは優しく声をかける。

クラーケン:逃げたくなるその気持ち、私にもわかるよ。
自由への憧れ、それは人間ならだれでも持つ本能みたいなものだ。
だが君には覚えておいてほしい。それは本当の本能じゃない、私たちが子供のころからそう吹き込まれてきただけだ。

君の祖国では、それを"自由"や"自立"と呼んで貴ぶが、それは違う。そんなものはただの"孤立"だ。
私たち人間は1つに団結することで初めて強くなれる。
"団結"それこそが人間の目指す道なんだ。

いつか我々人類に真の脅威が現れた時のため、私たちは強くあらねばならない。
そのためには、我々人類を率いる強いリーダーが必要だ。
スティーブ、私は君こそがそのリーダーなんじゃないかと思っている。

…さぁ私の話はここまで。後は君次第だ。こののまま逃げ出すのも君の自由だ。
しかしこれだけは知っておいてほしい。私は君となら世界を救えるんじゃないかと思っているんだ。


【スティーブの親友】
クラーケンの語るヒドラの理想に共鳴し、再び養成施設に戻ったスティーブは、軍事戦略の分野でメキメキと頭角を現し、教授陣も一目置く存在となっていく。
(余談ですが、この前後でクラーケンを含むヒドラの幹部たちは「近年ドイツで台頭してきたナチスと活動を共にするべきか?」を議論しています。つまり、ヒドラの思想とナチスの思想はこの時点では別物なのです。)

そんな彼をやっかむ生徒は多く、時には直接的な暴力沙汰になることも増えたが、スティーブにもそんな時に一緒に戦ってくれる親友が生まれていた。
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スティーブに負けない優等生ながら腕っぷしも強く、ヒドラの大幹部として働く父親を何よりも尊敬するスティーブの親友。
彼の名はヘルムート・ジーモ。後にバロン・ジーモと呼ばれる男です。

スティーブとジーモ、深い友情で結ばれた二人にも別れの時が訪れます。
他の同級生同様ナチスと組んだヒドラの戦闘員として戦場へ向かったジーモと異なり、スティーブには個別の任務が与えられます。
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それは故国アメリカに戻り、アメリカが密かに進める超人兵士計画の情報を得ることでした。


【そして現代】
時間はとんで、現在。
今までの回想を、キャプテン・アメリカ――スティーブ・ロジャースはとうとうと目の前の人物に語ります。
語る相手はバロン・ジーモ。#1にてキャップが殺害したかに見えたジーモですが、セルヴィク博士同様に、キャップは密かにその命を救い隠れ家に監禁していたのです。
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キャップは"親友"であるジーモに、如何にジーモが信頼できる友人であったか、如何に二人の友情が素晴らしいものであったのかを滔々と語る。
(思い出してください。コビックによる歴史改変はあくまでキャップ個人の中で完結したもの。ジーモにはとってはちんぷんかんぷんなのです)

キャップ:キミは、きっと私が狂ったか、洗脳でもされたか、はたまたコズミックキューブに何かされたのではないかと疑ってるに違いない。
私自身、キミに真実をみせることが出来ないことがもどかしいが、私の言ったことは事実なんだ。
誰かがキミに何かをしたに違いない。

一番許せないのは、そいつがキミにキミの父上がひどい人物であると思い込ませたことだ。
キミの父上は立派な人物だった、そして何より大事なことにキミのことを深く愛していた…

私はこの世界を転覆させようとしている。しかし私一人では到底そんなことはできない。
キミだ! キミの力が必要なんだ。


真摯にそして情熱的にジーモを説得するキャップ。
そしてジーモは…
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ジーモ:まず何から始める?


【バッキーの死?】
我々の知るマーベル世界の歴史とは、わずかに異なる歴史をたどるキャップの脳内歴史。
しかし、それはある瞬間において、決定的な差を見せます。

大戦の真っ最中。大戦の英雄として各地を転戦しながら、その立場を利用して得た軍事機密をヒドラに流していたキャップの下に、バロン・ジーモ(初代)の秘密基地をつかんだ米国が、相棒のバッキーを含むヒーローチーム"インベーダーズ"を現地に派遣したとの報がはいります。
親友の父親を救うため、矢も楯もたまらず、駆け付けるキャップ。
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キャップた到着したジーモの秘密基地では、米国に狙いを定めた新型無人飛行機を前に、インベーダーズとヒドラ軍が激戦を繰り広げていた。
発射準備にかかった無人飛行機の上で、ジーモと格闘するバッキー。
(我々の知る)本来の歴史では、ミサイルの矛先を変更し米国を救うために、ここでバッキーはその命を散らすはずであった。

しかし、その瞬間、とんでもないことが起こる。
格闘の最中に、バッキーではなくジーモの服が飛行機に引っかかり、ジーモごと離陸したのだ。
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バッキー:これで悲劇を回避することができる!
遠隔操作でミサイルの目的地を大西洋のど真ん中に変更するバッキー。

かくして"バッキーの死"というマーベル史に残る悲劇は、(キャップの脳内歴史において)未然に防がれたのだ。


【再び現代に】
バッキーの死の回避で決定的に分かれた、キャップの脳内歴史と実際の歴史。
しかし、同時期に発売されたサンダーボルツ誌にて、これに関係するやもしれない興味深い事件が展開されていました。

現在のサンダーボルツ誌は、"壁上の男"ウインターソルジャーと彼に懐いて付きまとうコビック、そして『スタンドオフ』
事件でコビックに因縁ができたヴィラン達によるチームなのですが、サンダーボルツ刊行開始20周年記念号となる#10では、オリジナルのサンダーボルツを率いたバロン・ジーモが、新生マスター・オブ・イービルと共に、サンダーボルツの秘密基地を襲う展開となります。

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(こちらが20周年記念号の表紙。いままで"サンダーボルツ"と名のついたチームに在籍した全キャラクターが集合)

物語の最後、バロン・ジーモの手により重傷を負ったバッキーは、コビックに自身の不手際を詫びます。

バッキー:ごめんな、コビック。俺は良いリーダーじゃなかった。すべて良かれと思ってやったことなのに、結局は君を守れなかった。
コビック:大丈夫。私なら元通りにできる。私に"全て"を直させて。

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その所有権をめぐり様々な陣営が争い会ったコズミックキューブの力をバッキーにそそぐコビック。
気を失ったバッキーが次に見た光景は…
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というわけで、コビックの力で過去へと戻ったバッキー。
しかし、バッキーが戻った過去とは果たしてどの過去なのでしょうか?
キャップの脳内歴史ももとはと言えば、コビックが作り上げたもの。
もしもバッキーが戻った先が、この歴史であるならば、キャップの記憶の中でのバッキーの行動は、また違った意味を持ってきます。
しかし、キャップの脳内歴史はあくまでキャップの脳内のみの現実の筈、そこに戻るという事は可能なのでしょうか?

また自身が経験していないはずの過去を信じ、キャップとの友情を選んだジーモ。
果たして彼の真意は?

何が真実で何が偽りなのか、非常に混沌とした状況の中、マーベルユニバースは夏のイベント『シークレットエンパイア』へと突入します。
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『シークレットエンパイア』では、キャップの作戦が遂に実行に移され、世界にヒドラによる新たな世界秩序がもたらされることが明かされています。
"人類を一つに団結させる"という、ヒドラのそしてキャップの理想は果たしてどこに行きつくのか?

実はこの問いには、すでにマーベルから一つのメッセージが出ています。
今回、クラーケンによって語られた「人類はより強固な存在となるために、1つに団結しなければならない」という思想はつまり、米国において様々な大統領が引用した警句"United we stand, divided we fall(団結すれば我らは立ち、分裂すれば我らは倒れる)"であるといえます。

これに対して、マーベルのリランチプロジェクト、『Marvel Now!』のテーザーイメージには…
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つまりは"多様性こそが人類の力"という、今のマーベルの状況を見事に言い表した方向に展開するのではないかと管理人は予想しています。

【宣伝】
今回は、先日、予約が開始されたタイトルを中心に巻きで。
まず、一番の注目は今や飛ぶ鳥を落とす勢いのケーブル&デッドプールの新刊『ケーブル&デッドプール:銀の衝撃』です。
また映画『ローガン』に合せて、ウルヴァリンの紹介を兼ねたタイトル『ウルヴァリン:シーズンワン』が刊行されます。
お次は、マーベルが誇る最強の魔術系ヒーローと、最凶の魔術系ヴィランのチームアップ『ドクターストレンジ & ドクタードゥーム』。
最後はコミックではキャラクター辞典である『マーベル・アベンジャーズ事典[増補改訂版] 』。今回は増補版ということで、前回発売された内容を最新の状況にリファインしての登場という、移り変わりが激しいアメコミの世界においては嬉しい変更が加えられています。



続いてDC関係で発表されたのは、スナイダーバットマンの新刊『バットマン:スーパーヘヴィ』です。
こちらは「ゴッサム市警による社会インフラとしてバットマン」というかなりトリッキーな設定を、その筆力で正面から描き切った快作となっていますので、興味のある方はぜひ!



プロフィール

NOB-BON

Author:NOB-BON
X-men生まれSpawn育ちを地でいく、90年代アメコミバブルの残党。
しばらくの間、アメコミは翻訳本を買う程度だったのが、最近のデジタルコミックの手軽さにひかれ、本格的に復活しました。

基本的にMarvelメインですが、DCのリランチを機に自分の中でDCブームが来てるので、しばらくはDCの話題続くかも。
しばらくどころか完全にDC派に転びました。

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