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ワンダーウーマン#800

ワンダーウーマン#800
(作:トム・キング他、画:ダニエル・サンペーレ他)

今から20年後の未来。
アマゾン達の暮らすパラダイス、セミッシラの浜辺に、2人のヒーローはいた。
スーパーマンことジョン・ケントと、バットマンことダミアン・ウェインである。

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偉大なる父の名前のみならず、父たちが果たしていたヒーローコミュニティの中心としての役割を担うまでに成長した2人は、何をするでもなく、浜辺に佇んでいた。

ダミアン:遅いな
ジョン:彼女が遅いのはいつものことだろ。いま月面まで確認したけど何処にいるのやら……


???:やらなきゃいけないことは山積みなのに、なんで空を眺めてぼさっとしてるの?
まったく、男の子に何かさせるのって、これだから大変。

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突然の現れたのは19歳になるワンダーウーマンの娘、トリニティ。
あっけにとられるジョンとダミアンを尻目に、トリニティはつかつかと先を進み始める。

トリニティ:目的地の洞窟は、太陽の光の反射で開く魔法がかけられてるの。
2人が知ってるか知らないけれど、実は太陽ってのは動いてて、そうなると時間は限られているってこと。
それとも、そうやって浜辺で待ってる?
別に怖気づいても恥じゃないよ? ただ2人が隠れるための穴を掘ってあげる時間はないから、それは自分たちでお願いね。
大丈夫!2人ならそれくらい自分でできるって。


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息つく間もなくまくしたてるトリニティにあっけを取られ、顔を見合わせる"ワールドファイネスト"。
ダミアンはやっとの思いで愚痴をこぼす。

ダミアン:彼女がこうなったのは、お前が甘やかしたからだからな。
ジョン:キラークロックとの戦いに5歳の彼女を連れて行くのを止めたことをいってるならば、それは"甘やかし"じゃない。
ダミアン:じゃあ何か? 一晩中、家でベビーシッターをするべきだったって言いたいのか?
ジョン:それがまさに、君の父さんとの約束だっただろ!


3人が集まった目的、それはセミッシラに存在するアマゾンたちの監獄であった。
痛み、技、名誉。侵入者を拒むための3つの試練を、1つずつ乗り越えていく、3人の新世代ヒーロー。

その最深にたどり着いたトリニティは、この監獄の唯一の囚人との面会を果たす。
"陛下"と呼ばれるその男に、話しかけるトリニティ。
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トリニティ「あなたが、良いことを知っているって聞いたんだけど。」
謎の男「余は確かにあの場にいた。戦争のさなか、軍隊に囲まれ、そなたの母君と……そして父君もいた。そなたが生まれるまさにその瞬間に。」
トリニティ「話しなさい。もう謎や仄めかしにはうんざり。母さんは私には決して話さないと決めてる。だからあなたに話させることにしたの」
謎の男「そうしゃちほこ張るな、トリニティよ。そなたの母君には恨みがある。この悲劇を話すこと以上の復讐が他にあろうか?」
謎の男「それでは始めるとしよう。アメリカが死に、驚異(Wonder)が生まれる物語……すなわち彼女が私を打ち倒す物語を」
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というわけで、久しぶりの更新は今度始まるトム・キングの『ワンダーウーマン』誌のプロローグとなる物語の紹介でした。
トム・キングの談話によれば、今回の物語は、DC世界の"現在"から20年後の物語で、この時点でトリニティは19歳になっているとのこと。
つまり、トム・キングの『ワンダーウーマン』は、ダイアナの妊娠と出産に関する物語といえそうです。
(とはいえ、トリニティがダイアナの実子ではなかったり、聖なる泥をこねて作られた存在の可能性も十分にありますが)

またSNSでの同氏の投稿から察するに、大人になったジョンやダミアンの出番もこれだけではなさそうなので、物語は現在と20年後を行き来するような形式になりそうで、かなり"いい性格"に育ったトリニティの活躍もまだまだ読めそうなので一安心です。

既に明かされている『ワンダーウーマン』の粗筋によれば、物語は謎のアマゾン族が起こした大事件が原因で、アメリカ国内でのアマゾン排斥運動が高まっていくとのこと。
その流れの中で、ダイアナ以外のアマゾンの戦いを描くスピンオフ『アマゾンズ・アタック』も予告されています。
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物語がアメリカvsアマゾンの構図になるとすると気になってくるのが、プロローグに登場した謎の男の正体ですよね。

アメリカという存在自体の象徴として登場した彼のことをトリニティが"陛下(Your Majesty)"と呼んだときは、冗談めかして大仰な言葉遣いを選んだだけで、その正体は大統領となったルーサーやトレバーあたりなのかなと思っていたのですが、この記事を書くために再読していると、そうではないことに気が付きました。
この男性は一人称として”I”ではなく"We"、いわゆるRoyal Weを使っており、自らも王であることを自認してるんですよね。

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(他はともかく、ここで"We see."と発言するのは、Royal We以外ではありえない。……と私は理解しました)

そうなると、サンドマンにも登場した実在の(自称)アメリカ初代皇帝ジョシュア・ノートンくらいしか思い浮かばないのですが……
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いずれにせよ、元CIAの対テロ担当としてイラク入りをした経験を持ち、『シェリフ・オブ・バビロン』や『オメガメン』などでアメリカによる力の支配、いわゆるパクス・アメリカーナの裏側を描くような物語を書いてきたトム・キングの本領を発揮するような物語になる予感がビンビンしますね。


【宣伝】
前回、前々回の更新でも書きましたが、最近ポッドキャストを始めました。
大体、毎週更新で、その週の新刊やアメコミ関連のニュースをネタに15分前後の雑談をしていますので、よければ聞いてみてください。


邦訳の紹介ですが、マーベルでは『スパイダーマン:フルサークル』が刊行。様々なクリエーター陣がリレー形式で話をつないでいくお祭り企画なのですが、特筆すべきはその作家陣。
ライターで言えば、ジョナサン・ヒックマン(ハウス・オブ・X)、ニック・スペンサー(ヒドラキャップ)、ジェリー・ダガン(X-MEN)、アーティストでいばクリス・バチャロ、グレッグ・スモールウッド(ヒューマンターゲット)など、綺羅星のようなスターたちが参加しています。
また他には、最近はすっかりDCの顔となった感のあるトム・テイラーが描いた、電力を失い科学技術の基盤を失ったマーベル世界を描く『マーベル:ダークエイジス』や、名作との呼び声も高いチップ・ズダースキーの『デアデビル:ノウ・フィアー』なども販売予定です。



続いてDC関連では、ジョーカーウォー後の世界を描くバットマンの最新作『バットマン:カワードリー・ロット』と、ジェイソン・トッド率いるスーサイドスクワッドによるジョーカー狩りを描いた『スーサイド・スクワッド:ゲット・ジョーカー!』が発売。後者は英語がとにかく難しいブライアン・アザレロがライターという事で、原書で読むのをためらっていたので、ちょうどいい機会ですね。




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ポッドキャスト『スターガール:ロストチルドレン』

スターガール:ロストチルドレン
(作:ジェフ・ジョーンズ、画:トッド・ナック)

ポッドキャスト版『アメコミ放浪記』を更新しました。
今回は、【第4回】『スターガール:ロストチルドレン』はDCらしさの再定義を試みると題して、先日完結した『スターガール:ロストチルドレン』の紹介をしています。

ちなみに、前回が第1回、今回が第4回と番号が跳んでいるのですが、実はブログで紹介している個別タイトルの紹介とは別に、その週の新刊とアメコミニュースの紹介を行うポッドキャストを毎週配信しています。
そちらの方もこちらのリンクから聴けますので、よろしければぜひ。

話は戻って今回の更新ですが、
・『スターガール:ロストチルドレン』の粗筋
・DC世界のゴールドエイジを再定義する試み『ニューゴールデンエイジ』とは?
・"マーベルらしさ"とは何か? "DCらしさ"とは何か?
みたいな話をしています。



以下は、配信では伝えられなかったことを補足。

【ゴールデンエイジのサイドキックたち】
配信の中でもお伝えしたのですが、本作の見どころは何といっても大量に復活した(体の)サイドキック達のデザイン。
非常に可愛らしく、しかし微妙に野暮ったいデザインはまさにゴールデンエイジのサイドキックそのもの。

音声コンテンツでは伝えることができない、その絶妙なデザインをぜひご覧ください。
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ちなみにそれぞれ結構細かい設定まで決まっており、ベテランDCヒーローお決まりのWho's Whoスタイルの紹介ページもあり、彼らを新キャラではなくあくまで「読者たちが忘れていたゴールデンエイジからのヒーロー」として扱おうというDCの心意気を感じます。
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本作は5月で完結しましたが、彼らの活躍の場はこれで終わりではありません。

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現在、刊行中の『ジャスティス・ソサエティ・オブ・アメリカ』誌に、このサイドキック達が"ヤング・ジャスティスソサエティ"として登場することは予告されていますし、先日発表されたゴールデンエイジのヒーローの当時の活躍を描くミニシリーズにも登場しそうです。
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"DCらしさ"の体現者である彼らの活躍が、今後も楽しみです。

【宣伝】(使いまわし)
続いて翻訳本の紹介です。
マーベルからは映画『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』の公開に合わせて別アースのスパイダーマンたちのコミックが多数邦訳。
個人的には未読の『スパイダーマン・ノアール』が気になったりしています。


またマーベルについては、X-men系列の特大イベント『X・オブ・ソーズ』が発売になります。異世界からやってきたアポカリプスの血族とミュータントが、マーベル世界の20本の名剣/妖刀を携えて団体戦を行うという燃えるイベントです。
特大イベントといえばスパイダーマンの歴史を語るうえで外すことのできない『スパイダーマン:クローン・サーガ』が美味しいところをピックアップした日本独自編集で発売。
『インビンシブル・アイアンマン:ザ・サーチ・フォー・トニー・スターク』は、シヴィルウォー2の展開を受けたアイアンマン誌でリリが主人公。


続いてDCからは映画に合わせてバリー・アレンの現在のオリジンを描く『フラッシュ:イヤーワン』が邦訳。
そしてなんといってもここ数年のコミック業界でトップクラスの話題作『スーパーマン:サン・オブ・カル゠エル/ザ・トゥルース』も日本上陸!


フラッシュポイント・ビヨンド

フラッシュポイント・ビヨンド
(作:ジェフ・ジョーンズ/ティム・シェリダン/ジェレミー・アダム、画:サーマニコ/ミケル・ハニン)

トーマス・ウェイン、"世界最速の男"の過ちによって生まれた悪夢のような世界からやってきたもう1人のバットマン。

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正史世界にやってきた彼は、妻を娶り、子を育て、幸せな人生を送るべきである息子のブルースが、その幸せに背を向けてバットマンとして活動していることを憂い、息子をバットマンとしての生活から引きずり出すことに血道を開ける。

しかし、別アースからやってきたスーパーマン大統領と共にマルチバースを股に掛けた戦いに駆り出されたトーマスは、そこで目にした光景で自らの過ちに気が付く。
トーマスが見たものは、多次元世界のバットマンたち。様々な世界で名前や姿、時には種族すら変えながら、人々のために戦い続ける息子とその"ファミリー"の姿であった。
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「子供自身の生き方や幸せの形を、親が勝手に定義することはできない」
そんな、人の親であればいつか知ることになる平凡な気づきを、マルチバースの中心で遂に学んだトーマスは、自らも息子と同様に世界を守る戦いの戦列に加わる。

しかし、トーマスの戦いは長くは続かなかった。
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マルチバースのヒーローたちを集めたチーム"ジャスティスインカネート"に加わったトーマスは、真のダークサイドとの戦いに敗れ、この世から消滅したのである。

その次の瞬間、トーマスが目を覚ましたのはカジノの重役室であった。
トーマスは自身の出身アース、人類とアマゾンとアトランティスが血で血を洗う戦いを繰り広げる悪夢の世界に逆戻りしたのである。
息子であるブルースを救うためにバリーと共に消し去ったはずの世界が、なぜまだ存在するのか?
そしてその世界に自分を閉じ込めたのは誰なのか?
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この狂ったアースにも自分の命にも何の未練も持たないトーマスは、再び世界を歪めた黒幕を探し始める。

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……というわけで久しぶりの更新は、新しく始まったジェフ・ジョーンズによるサーガの開幕となったミニシリーズ『フラッシュポイント・ビヨンド』の紹介。
以降は、気になったシーンなどをつらつらと。

【世界最速の男の復活】
再びこの世界を消し去り、息子が活躍する世界を復活させる術を模索するトーマスは、前回の協力者バリー・アレンに再び協力を求める。
しかし、この世界のバリーは母親と共に平穏な暮らしを送るただの鑑識官。
この世界の全ての事柄に対して何の価値も感じないトーマスは、そんなことをお構いなしにバリーを誘拐。
彼を化学薬品を設置した避雷針に縛り付け、バリーを世界最速の男に仕立て上げた事故の再現を行う。
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嵐の真っただ中で雷を持つトーマス。しかし、雷が避雷針を直撃するその直前、どこからともなく飛んできた銛が化学薬品を入れた容器を木っ端みじんに破壊する。
薬品をかぶることなく雷をその身に受けたバリーは黒焦げの死体に。時空を超える力を持った世界最速の男の復活を目論んだトーマスの試みは、無残にも失敗したのである……
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【クロックワークキラー】
一方、セントラルシティのアパートの一室では、猟奇的な殺人事件が発生していた。
被害者の身元は不明。奇妙な黄色いコスチュームを着こんだ男は、IDも指紋登録もないまさにこの世界に存在しないはずの男であった。

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奇妙なのはそれだけではない、男の死体からは内臓が抜かれ、その代わりには大量の歯車とクランクが詰め込まれていた。
実は、このような変死体はこの男が初めてではない。これは警察によって"クロックワークキラー"と名付けられたシリアルキラーによって引き起こされた連続猟奇殺人事件の1つなのだ。

元宇宙飛行士ナサニエル・アダム、コソ泥パーシバル・サター、マシュー・ライダーと名乗る男、そして今回見つかった黄色いコスチュームの人物……
互いに何の関りも共通性もない被害者たちを狙った猟奇殺人に、警察は頭を抱える。
しかし、トーマスだけは彼らの共通点を知っていた。

キャプテン・アトム、Dr.タイム、ウェーブライダー、リバース・フラッシュ。
クロックワークキラーの被害者たちは、息子が暮らす世界のヒーローとヴィランたち、それも全て時を超える能力を持った者たちばかりなのだ。
何者かが、この世界で時間旅行者たちを狩っている。それも息子の世界でのみ知りうる知識を使って。
トーマスは、激化するアトランティス/アマゾン/人類の戦いを尻目に、一連の殺人事件の犯人を追い始める。


【一方ブルースは】
一方そのころ、正史世界のバットマン、ブルース・ウェインもまたとある調査を行っていた。

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ブルースの隣にいるのは、マイムとマリオネット。『ウォッチメン』の世界からDCの正史世界へとやってきた2人組の犯罪者である。
何者かの年季のはいった研究室に忍び込んだバットマンは、マリオネットらの助けを借りながら、ジャニー・スレイター(Dr.マンハッタンの元恋人)の腕時計と、その傍らに置かれた小さなスノーボールを盗み出す。

そしてその晩、バットケイヴに1人の少年、コーキー・バクスターが現れる。
DC世界のタイムパトロール、タイムマスターズの1人であるコーキーは、挑戦的な表情でブルースに詰め寄る。
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コーキー:あんたが研究室に押し入ったと知れば、リップ・ハンターはただじゃ置かないぞ。
きっとあの人は僕たちタイムマスターズを集結させて、あんたの人生の改変を命じるはずだ。
おっと、僕はあんたに警告しに来たんじゃない。
あんたはとっくに蛆虫入りの缶詰を開けちまったのさ。あとは僕たちがそれをあんたの口に詰め込むだけだ!




【宣伝】
今回、紹介した『フラッシュポイント・ビヨンド』はこちら。


マーベルからは大型イベント『インフィニティウォーズ』の序章である『インフィニティ・カウントダウン』が発売。
また『X-MEN』は、現在のX-MENブームの火付け役である『ハウス・オブ・X/パワーズ・オブ・X』の直接の続編となるタイトル。今後も続々と続きが発売されそうなので、この機会にぜひ。
『デーモン・デイズ』は、マーベルから次世代を担う大物アーティストの称号"ストームブレイカー"を授与された日本人アーティスト桃桃子による大人気シリーズの第1話。日本の民話風にアレンジしたマーベル世界を舞台にし、米国でも高い評価を与えられた傑作です。



続いてDCからはトム・キングの『ロールシャッハ』が早くも日本到来。『ウォッチメン』から35年たった"今"を舞台に、死亡したはずのロールシャッハによる大統領候補暗殺未遂事件の真相を追う。
『バットマン:ゴッサムに到る運命』は、マイク・ミニョーラ脚本によるバットマンvsクトゥルフ神話という、たまらない趣向のタイトルとなっています。


プロフィール

NOB-BON

Author:NOB-BON
X-men生まれSpawn育ちを地でいく、90年代アメコミバブルの残党。
しばらくの間、アメコミは翻訳本を買う程度だったのが、最近のデジタルコミックの手軽さにひかれ、本格的に復活しました。

基本的にMarvelメインですが、DCのリランチを機に自分の中でDCブームが来てるので、しばらくはDCの話題続くかも。
しばらくどころか完全にDC派に転びました。

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