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デスメタル後のDC世界について

【デスメタル完結!】
世界を改変する力である"クライシス"の力を集め、DCユニバースを思うがままに改変した嗤うバットマン。マルチバース最強の存在となった彼に立ち向かうためにヒーローたちに残された手段、それは"クライシス"とは正反対の力"アンチクライシス"を結集させることであった。

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「自分が存在する時代さえ、自分さえよければ良い」という利己主義の象徴である"クライシス"に対し、"アンチクライシス"とは「例え自分自身はちっぽけな存在に過ぎなくとも、それは歴史という連綿と続いていく偉大な物語の一部であることを受け止める」という利他主義の力。
そんな"アンチクライシス"を集めるため、ヒーローたちは過去にDC世界で起こった歴史改変イベントを消去し、1つの歴史を取り戻す。

そして、全てが終わった後で開催された、悪のバットマン軍団との戦いの勝利を祝うヒーローとヴィランの祝勝会。(メタルシリーズの恒例行事です)
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その最中にバリーの呼び出しを受けたウォーリーは、月の裏側に密かに建造された秘密基地、"ホール・オブ・ジャスティス&ドゥーム"に招かれる。
そこは今回のようなユニバース全体の危機に対抗すべく組織された善と悪の垣根を超えた評議会"トータリティ"の本拠地であった…

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(こちらがトータリティのメンバー。左からホークガール、マーシャンマンハンター、Mr.テリフィック、ヴァンダル・サベッジ、タリア、スーパーマン、バットマン、レックス・ルーサー)
***************

というわけで、先日ついに完結した『ダークナイツ:デスメタル』(翻訳も決定!)。
この物語のエピローグでDCユニバースの構造に相当大きな変更があったので、今回の記事では、その変化の内容を簡単に整理していきます。

【変化1:死者の復活】
まず重要なこととして、ワンダーウーマンによって世界はデスメタル発生前の状態に修復されました。
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このため、デスメタルの中で殉職を遂げたブルービートルや、ゾンビとなりながら最後まで戦い続けたバットマンは無事復活。
さらに、バットマン本人の説明によれば、"デスメタル以前に死亡した者の復活も確認された"とのこと。
先ほどトータリティのメンバーとして登場したヴァンダル・サベッジなんかはその典型なのですが、他に誰が復活したのかは不明です。

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パッと思いつく候補は、デスメタルの最終決戦にバットマンによって復活させられたゾンビとして参戦したアーセナルと、

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同じくゾンビで登場したアルフレッドあたりでしょうか?

現在進行中のバットマンの物語にいきなりアルフレッドが登場するとも思えませんが、ほとぼりが冷めたあたりで、デスメタルでのこの一件を理由に再登場することもありそうです。


【変化2:過去の歴史の復活】
先述の通り、クライシスの度にリセットされてきたDCの歴史が統合され1つのものになりました。
とはいえ、どうもこの"歴史の統合"というのは、「DCの過去の物語が全て1つの年表に収まるようにヒーローたちの人生が書き換えられた」というわけではなく、どちらかといえば、「New52世界での人生を歩むヒーローたちが、クライシス前の記憶を取り戻した」と言った形で実現されるようです。

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とはいえ、『デスメタル』のラストでは、第二次世界大戦中にサージェント・ロックに率いられるJSAの姿も確認されており、
ここら辺、正史世界の歴史が実際にどのような形になったのかは、今後の展開待ちですね。


【変化3:無限のアースの復活】
『ファイナルクライシス』以降、DCの世界観は「全てのアースの中心である正史世界(アース-0/プライムアース)と、それを取り巻く51のアース」という形で統一されていました。
そしてそれら52のアースで構成されるマルチーバースの外側には、"ソースウォール"という隔壁が存在していたのですが、『デスメタル』のラストでこの壁は完全に消失。その向こうに存在する無数のマルチバースが観測可能となりました。
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ちなみにこの複数のマルチバースからなる世界の総称を"オムニバース"と呼ぶようです。
数式で言えば「オムニバース > マルチバース > アース」と言ったところでしょうか?
(厳密には">"じゃなくて"⊃"ですが……と注釈を入れてしまう数学専攻の拘り)


【変化4:"世界の中心"の変移】

冒頭で紹介したようにトータリティの会合に招かれたバリーは、メンバーから衝撃の報告を受けます。
それは「"世界の中心"が変わった」という事でした。
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DCの世界観では、マルチバースの中には常にその中心となるアースが存在し、残りのアースは全てその中心を基準とした変奏曲であることになっています。
そして今までのDCにおいて、世界の中心はつまりアース-0やプライムアースと呼ばれる世界――その時々で読者が"正史世界"として慣れ親しんでいるアースでした。
ところが、今回の事件により、我々の知る正史世界ではない、新たな"世界の中心"が生まれたのです。
それも2つも!

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(2つの世界の中心の内の1つは既に発見され"エルスワールド"と名付けられました。
そして2つ目の中心については謎のまま)

今まで読者にとって"世界の中心"とは、すなわち毎週の新刊の舞台であり、普段慣れ親しんでいる正史世界の事でした。
そのため「世界の中心とはなんなのか?」について、読者は深く考える必要はなく、「我々が正史として読んでる世界が、全ての基準になっているんだな」というふんわりとした理解でよかったのですが、これからは違います。

果たしてマルチバースにおける世界の中心とは何を意味するのか?
DC世界開始以降初めて"辺境"となった正史世界にとって、世界の中心とはどのような存在なのか?

おそらく今後のDC世界はこれらの謎を中心に物語が進んでいくのではと思います。

最後に、この世界の中心について某ニュースサイトが挙げていた面白い予想の紹介。
今回、所在地が観測された世界の中心の一つ、通称"エルスワールド"の事をマーシャンマンハンターは"アルファワールド"と呼んでいました。
もし、世界の中心が"アルファワールド"であるならば、その対極となるもう一つの中心は"オメガワールド"であると言えます。

そして『デスメタル』のエピローグでは、修復後の世界からダークサイドの存在が消えていることが判明しています。
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もしダークサイドがマルチバースの何処かに潜んでいるのだとしたら、この"オメガワールド"以上に相応しい名前がの場所があるでしょうか?

【今後のDCについて】
というわけで、DC世界の変化について簡単にまとめてきたのですが、続いてはDCの今後の出版予定について紹介していきましょう。
まず『デスメタル』の完結を機に、5年間続いた『DCリバース』のブランドは終了。
3月より新たに『インフィニットフロンティア』のブランドが立ち上がり、このタイミングで多くのタイトルが新たにライターを迎えて再スタートを切ることになります。
(誤解を呼びたくないので明言をすると、この『インフィニットフロンティア』で今までの展開がリセットされるわけではありません。
あくまで"新シーズン"的な扱いです。)

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そしてそんな新シーズン到来の号砲となる作品が、3月の第1週に発売される読み切り『インフィニットフロンティア#0』です。
この作品は、DCリバースにおける『DCユニバース:リバース』のような作品となり、3月より刊行される各タイトルの展開を紹介するとともに、今後のDCユニバース全体をけん引する大きな事件が起きることが予告されています。

先述の"世界の中心"に関する物語が展開されるとしたら、おそらくはここでしょう。

余談ですが公開済みの『インフィニットフロンティア#0』の表紙は
 ・New52世界では登場しなかったアラン・スコットの2人の子供、ジェイドとオブシディアンがいる
 ・アニメ『ティーンタイタンズ』の人気キャラ、レッドXがいる
 ・『デスメタル』のラストで時の彼方に旅立ったワンダーウーマンの不在
など、非常に示唆に富んだものとなっています。
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そしてDC世界の今後の展開を予告するものは、これだけではありません。
『デスメタル』が完結した12月から、『インフィニットフロンティア』が開始する3月の間にDCで展開するイベント『フューチャーステイト』もまた、DC世界の今後を占う上で外せない作品となりそうです。

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『フューチャーステイト』を刊行する1-2月の間、DCは正史世界を舞台とした全タイトルの刊行を停止、全てのタイトルが『フューチャーステイト』傘下の物語に置き換わります。

そして「デスメタルによる世界改編の余波として、垣間見えた"DC世界の描かれない未来"」という体で語られる『フューチャーステイト』の物語は、イベントが終了した3月以降もDC世界にこだまのように響き続け、物語を読み進める読者もその存在を忘れることが出来ない、面白い趣向が凝らされています。

その趣向は何か?
……ということは、次回の更新で語らせてください。
(すみません、時間切れです。)

【宣伝】
アメコミとはあまり関係ないのですが、先日、フランスの漫画であるBDの翻訳版を紹介する雑誌『ユーロマンガ』が、電子マガジンとして再創刊されました。
これが、新旧10作品も収録されながらお値段880円という衝撃の値段!
昔からのBDファンのみならず、海外のコミック文化を知りたい方にとっても最適な雑誌なので、ぜひどうぞ!
(管理人は迷わず買いました)



また新たな新刊の情報として、マーベルの「もしもの世界」を追求する名物企画『ホワット・イフ』の翻訳が決定。
こちらも、最新シリーズから3編、過去のシリーズから3編を収録したオムニバス形式の作品となっています。


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バットマン#101

バットマン#101
(作:ジェイスム・タイニン4世、画:ギレン・マーチ)

ブルース・ウェインの資産を合法的に我がものとし、ゴッサムの財力・権力・暴力の全てを支配したジョーカーによる統治。
イベント『ジョーカーウォー』で描かれたその事件を終えたゴッサム市は、ジョーカーの残した爪痕からの復興の道を辿っていた。

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そしてそんなゴッサムの全てを見下ろす高層ビルのペントハウスには、謎の人影と戦うバットマンの姿が。
闘いの相手はコール・キャッシュ。生身の人間ながらこの世界有数の傭兵"グリフター"として恐れられる男である。

互いの体術の限りを尽くして死闘を続ける"世界一の探偵"と"世界一の傭兵"。

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ルーシャス・フォックス:キャッシュ、止めたまえ。彼が来るかもしれないことは伝えておいたはずだ!
グリフター:すまねぇ、忘れてた。というか、「奴とやりあったことあるぜ」っていう武勇伝が欲しくてな。


ルーシャスの制止に悪びれる様子もなく、構えを解くキャッシュ。

バットマン:あの男をボディガードを雇ったのか?
ルーシャス:知合いですか?
バットマン:自分自身をグリフター(詐欺師)と名乗る様な男だ。
ルーシャス:彼に払っている額を考えれば、納得の名前だ。
ただボディーガードの1人も雇いたくなりますよ、あなたの彼女が私にしでかしたことを考えれば。


バットマンを連れて愚痴りながら階段を降りていくルーシャス。
階段を下りた先は、豪勢なペントハウスの一部を改築したゴッサム最新鋭にして最高層の研究室であった。
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実は『ジョーカーウォー』で奪われたウェイン家の資産がキャットウーマンの手で取り返された時、複雑な事情により、その資産はブルースではなくルーシャスに振り込まれ、フォックス家はゴッサム1の資産家となったのだ。

研究室に腰を落ち着かせたルーシャスは、ブルースに現在の状況を淡々と説明する。
・バットマンが密かに街中に配備していた(そしてジョーカーに奪われた)武装の出資者がブルースであることを、世間は重く見ていること。
・そのため、ゴッサム再建計画をウェイン社が進めるためには、ウェイン社がブルース・ウェインと手を切ったことを世間に示す必要があること。
・ウェイン社の役員会は、十分な金額と引き換えにブルースから経営権をはく奪する方向で検討が進んでいること。
・今回の事件で、(いまやルーシャスの物となった)ウェイン家の資産には金融の専門家たちの厳しい目が注がれるようになり、仮に資産がブルースの手に戻ったとしても、今までのようにバットマンの活動に注ぎ込むのは実質不可能になること。
・上記の事を認識したうえで、それでも資産と経営権を取り戻したいならば、ルーシャスは協力を惜しまないこと。

つまり、ブルースに提示された選択肢は2つ。
1つ目は「ルーシャスから資産と経営権を返してもらい、ゴッサムの復興支援とバットマンとしての活動を諦めること」、
2つ目は「ルーシャスに資産をあずけゴッサム復興支援につくしてもらい、自分はバットマンとして活動すること」。

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ルーシャス:これはあなたの家族の会社と未来についての選択です。どちらを選ぶにせよ、私は全力でサポートします。
ただよく考えてください。確かに資産を受け取らなければあなたに向けられる監視の目も和らぎ、バットマンとして活動できる。
でもそれは"よりスリムなバットマン"としてです。
宇宙船も人工衛星もなし、バットモービルをウェイン社の最新3Dプリンタから出力することもできません。
もし車を壊したならば、その時は自分で直す必要があるんですよ?

資産家としての生活と、クライムファイターとしての生活。2つの選択を突きつけられたブルースは、事も無げに答える。
バットマン:ならばもう答えは出てる。


ルーシャスとの会話を終え、再び屋上から立ち去ろうとするバットマン。そんな彼にグリフターが声をかける。

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グリフター:さっきの件、恨んでないよな?スパーリングだったとでも思ってくれや。
バットマン:……お前のボスに言伝がある。
グリフター:おいおい、俺のボスとはいま話してきたばかりだろ?


とぼけるグリフターを無視し、バットマンはグリフターの"本当のボス"への伝言を残す。

バットマン:私はHALO社の正体を知っている。
そしてもう1つ。何が変わろうとこの街は私の街だ。いつでもお前たちの事は見張っているぞ。


*******************************

というわけで、今回はイベント『ジョーカーウォー』終了後のバットマンの状況を整理してみました。
一番最後に名前の挙がったHALO社とは、イメージコミック設立当時の看板チーム『ワイルドキャッツ』の出資会社の名前。
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今回のグリフター登場からも見て取れるように、どうやら来年はDCユニバースに編入以降いまいち影の薄かったワイルドストーム勢が次々と登場する雰囲気です。

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ちなみに、スーパーマン系列には、"ワイルドストーム版バットマン"ことミッドナイターが登場予定で、スーパーマンが"ワイルドストーム版ジャスティスリーグ"ともいえるヒーローチーム、オーソリティのリーダーとなるなんていう噂もあったりします。

またバットマン誌の今後を占う上で、もう一つの重要なキャラが、今号に登場したルーシャス・フォックスの3人の子供たち。
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フォックステック社の若き天才社長であるルークは、バットウィングとして活動中で、DCファンにはお馴染みのキャラ。
そしてその妹であるタムも、兄のサポート役としてよくに目にする名前なのですが、注目なのが長兄のティム・フォックスです。
ルーシャスの息子として1970年代に登場するもその後数回しか登場していない忘れられたキャラであるティムですが、2021年1-2月で行われるイベント『フューチャーステイト』では、近未来のゴッサムのバットマンとして登場することが確定。

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『フューチャーステイト』というイベントは、今後のDC各誌の展開(の方向性)を予告するような内容であるため、今後のバットマン誌においてもティム・フォックスが台風の目となっていくことが予見できます。
ここら辺、あえて読者にとって馴染みのあるルークではなく新キャラに等しいティムにその役割を与えるあたり、DCの自信を感じさせますね。
余談ですが、「フォックス家のメンバーを黒人初のバットマンとするという展開の脚本の出来が素晴らしいらしい」という噂は、昨年の冬あたりから様々なメディアで囁かれており、そういう意味でも楽しみです。


【宣伝】
今回した物語の直前となるバットマン誌のイベント『ジョーカーウォー』の単行本がこちら。
1冊目はバットマン誌で繰り広げられた本編、2-3冊目はその関連誌となっています。


続いて最近の翻訳本ですが、米国での大ヒットをうけすっかり"ホワイトナイト・ユニバース"を形成しつつある『バットマン:ホワイトナイト』の続編である『バットマン:カース・オブ・ホワイトナイト』が1月に発売。今回はアズラエルやバットガールが登場!!
そして現在のDC正史世界の旗艦タイトルであるジャスティス・リーグ誌関連では、そのクライマックスである『ジャスティス・リーグ:ドゥーム・ウォー』が発売。『ダークナイツ:デスメタル』へと繋がる重要タイトルでDC世界の未来と過去のヒーローたちが集結するさまは一見の価値あり。
そして先日発表された嬉しいサプライズが『ゴッサム・セントラル』の翻訳。なんの特殊能力も持たず、職業的倫理観だけに突き動かされてゴッサムの狂人たちと戦うゴッサム市警の活躍を描いた本作。グレッグ・ルッカ(ワンダーウーマン)や、ブルベイカー(ウィンターソルジャー)といったハードボイルドな作風で知られる人気ライターが手掛け、非常に高評価な作品なのですが、とにかく地味なタイトルであるのでまさか翻訳されるとは。



また嬉しいサプライズといえばマーベルの『スーペリア・フォー・オブ・スパイダーマン1』。シニスターシックスを名乗る5人組のC級ヴィランたちが、マーベルユニバースの底辺で繰り広げるドタバタ劇がまさかの翻訳です。その評判だけ聞いていつか手を出したいと思っていた本作が日本語で読めるとあって、管理人はすぐさま予約しました。

またマーベルからは『チャンピオンズ:チェンジ・ザ・ワールド』と『ウエスト・コースト・アベンジャーズ:ベスト・コースト』の翻訳も発表。前者はカマラ・カーン(Ms.マーベル)やマイルス・モラレス(スパイダーマン)、後者はケイト・ビショップ(ホークアイ)やグウェンプールを中心とした、若手ヒーローたちのチーム誌。明るいキャラ同士の掛け合いが魅力のタイトルですので、そういうのが好きな方は是非!


ストレンジ・アドベンチャーズ#1-2

ストレンジ・アドベンチャーズ#1-2
(作:トム・キング、画:ミッチ・ゲラッズ&ドク・シャーナー)

【ヒーローの凱旋】

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女性キャスター:今日のゲストは、アメリカの……やだ、彼ってまだアメリカ人だったかしら?
男性キャスター:もちろんさ、彼が"あっち"で何を成し遂げようがね。
女性キャスター:そのとおりね。それでは改めまして。
今日のゲストはアメリカのヒーローでもあり、世界のヒーローでもあり、もちろん宇宙のヒーローでもあるこの方。
アダム・ストレンジさんの登場です!


ラーン星での冒険を終え、地球に帰還したアダム・ストレンジはヒーローとして文化人として忙しい日々を送っていた。
自身が体験したラーン星での日々を胸躍る冒険譚として描きつつ、ラーン星を襲った侵略種族ピクットの脅威に警鐘を鳴らす彼の自伝が大ヒットしたのだ。

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読者:あの、先ずはお礼を言わせてください。あなたが娘さんへの思いを綴られた箇所、私にとって本当に救いになったんです。
私も、大事な人を亡くしたばかりだったから…
アダム:ありがとう。サインしても良いかな?


サイン会のために全国の書店を精力的に回るストレンジ。
そんなある日、サイン会に1人の男が現れる。

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男:俺はこのピクットって奴らも、オマエのあそこでの所業も知ってんだぞ、この嘘つき野郎め。
オマエのせいで何人死んだ?何人が拷問された?いったいオマエは何人分の墓穴を掘り腐ったんだ!?


大声でアダム・ストレンジの異星での蛮行を騒ぎ立てる男。
その様子はサイン会の参加者によってネットに流され、多くの人が男の告発の内容を知ることとなる。
しかし、だれも男の発言を気にも留めなかった。
……その男が何者かによって殺害され、その死因が地球には存在しない技術によって発せられた熱線、例えば光線銃によるものだと断定されるまでは。

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ひとたびアダム・ストレンジに疑いの目が向け始めたられると、世間は容赦がなかった。
彼の殺人容疑だけではなく、彼がラーン星で行ったと主張する英雄的行為そのものの真偽すら、人々は疑問を抱き始めたのだ。
事態を重く見たジャスティスリーグは、アダム・ストレンジと面識のない第三者による調査を始めることを決定する。

リーグが調査を依頼した男とは、"世界で三番目に賢い男"、"フェアプレイの信奉者"、Mr.テリフィックであった。

【Mr.テリフィック登場】

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Tスフィア:トルクメニスタンの2015年の国民貯蓄率は?
Mr.テリフィック:GDPベースで18.9%
Tスフィア:正解

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Tスフィア:三角法の考案者と、彼の名がつけられた算術理論とは?
Mr.テリフィック:ナスィールッディーン・トゥースィー。彼は"トゥースィーの対円"と呼ばれるモデルを用いて、天動説における惑星運動を計算した。
Tスフィア:正解

自身の知性の限界を探るように、行住坐臥いかなる時でも、自身の開発した万能装置Tスフィアからの問題に答え続けるテリフィック。
しかし、彼はアダム・ストレンジの調査依頼に悩んでいた。

人々はアダム・ストレンジを愛している。赤と白に輝くコスチュームを、背中に背負ったジェットパックを。
子供たちだって彼の笑顔がプリントされたランチボックスを買い求める。彼は完璧なヒーローだ。
一方、自分は違う、彼が金メダルを何個獲得しようが、大発明を何回しようが、世界を何回救おうが、人々は決して彼を愛さない。彼の顔をランチボックスにプリントしたりしない。
Mr.テリフィックが彼を有罪と言おうが、無罪と言おうが、世間はそれを快く思わないだろう。
人々は、テリフィックのような人間がストレンジのような人間を裁くことなど求めていないのだ。

バットマン:その通りだ。でもそれが真実以上に大事な事か?

自らの懸念を一笑に付すバットマンの一言に、アダム・ストレンジの調査を受けることを決意するMr.テリフィック。
そして、調査の第一歩としてアダム・ストレンジの自伝を読み終えたMr.テリフィックは、自伝の序文に立ち返る。

彼はそこに、この本に存在するただ一つの嘘を見つけたのだ。

「戦争で失った娘に捧ぐ。僕の人生は哀しみと共にある」

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【対決の朝】
アダム・ストレンジとの初対面の日の朝。身づくろいをしながらテリフィックはTスフィアに命令する。

テリフィック:私の知らない事を聞いてみろ。
いつものように忠実にテリフィックの命令を実行するTスフィアは、彼が知らない、知ることを拒否した知識を問いかける。
Tスフィア:あなたの妻と共に死んだ胎児の性別は?


Tスフィアの質問を初めて無視したテリフィックは、変わらず様子で対面の準備を進める。

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やがて、ストレンジの自宅の前でがっちりと握手を交わす2人。そしてそれは真実と"ポスト真実"を巡る現代の戦争の始まりを意味していた……

******************
というわけで、今回は数年でトップライターの座に駆け上った鬼才トム・キングによる『ストレンジ・アドベンチャーズ』の紹介でした。

今回の主人公であるアダム・ストレンジは、長い歴史を誇るDCのSFヒーロー。
しかし、アダム・ストレンジの源流となる「突如、異世界に身を置くことになった主人公が、その異世界で英雄になっていく」というパルプ小説の王道パターンは、近年"西側諸国による植民地支配のメタファー"とも捉えられる事も多いのもまた事実。
本作では、そういった理想と現実のギャップを描くべく、アダム・ストレンジの自伝に描かれている惑星ラーンでの物語はドク・シャーナーの陽性のアートで、
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一方、地球を舞台にした物語はミッチ・ゲラッズによるどこか陰鬱なアートで描かれることになります。
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始まったばかりですが、既に名作のにおいのぷんぷんする本作。
内容に反して意外にも英語は簡単ですので、翻訳まで待てない方は是非どうぞ!
(いや、この時点では翻訳の発表は一切ないですが、自分は確信しています)

【宣伝】
今回紹介した作品の電子版はこちら。


翻訳本では『バットマン:ラストナイト・オン・アース』の予約が開始。
「バットマンがジョーカーの生首をお供に荒廃した未来のDC世界を巡る」という眩暈がしそうな粗筋ながら、『梟の法廷』から開始したスナイダー&カプロのバットマンの集大成となる作品。
また映画に合せて『ブラック・ウィドウ:イッツィ・ビッツィ・スパイダー』の予約も開始。こちらは映画に登場する"2代目ブラックウィドウ"エレーナ・ベロワとナターシャの対決を描いた中編2作が収録。
発表後に発売日が延び延びになっていた『マーベル・エンサイクロペディア』も遂に8月に発売。前回発売された同様の事典は、速攻で完売しプレミア本になってしまったので、欲しい方はお見逃しなく。



また、マーベル初の大型イベント『マーベルスーパーヒーローズ:シークレット・ウォーズ 2』も第二巻の予約が開始。
今月末発売の1巻とあわせてどうぞ。
『トランスフォーマー:モア・ザン・ミーツ・ジ・アイ』も順調に刊行が進み、来月には3巻が発売する予定。


プロフィール

NOB-BON

Author:NOB-BON
X-men生まれSpawn育ちを地でいく、90年代アメコミバブルの残党。
しばらくの間、アメコミは翻訳本を買う程度だったのが、最近のデジタルコミックの手軽さにひかれ、本格的に復活しました。

基本的にMarvelメインですが、DCのリランチを機に自分の中でDCブームが来てるので、しばらくはDCの話題続くかも。
しばらくどころか完全にDC派に転びました。

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