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アストロシティ:ローカルヒーロズ

アストロシティ:ローカルヒーロズ
(作:カート・ビュシーク、画:ブレント・アンダーソン)

ヒーローたちが集う街アストロシティ。その街で弁護士として働くヴィンスには、「法は美しい」という信念があった。
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法は美しい。司法とはそれに関わる者が真摯に役割を果たすことで機能する、人類が築き上げた概念の中で最も"完璧"という言葉ににじり寄った存在であるのだ。

そんなある日、ヴィンスは厄介としか言いようのない事件を担当することとなる。
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弁護の相手は、マフィアのドラ息子。
父親の経営するバーで女性と口論になったドラ息子は、多くの人が見守る中で女性を殴打。
彼女を死へと至らしめたのだ。

ドラ息子の有罪は明らか。後はその量刑をいかに減らせるかが裁判のポイントとなる筈であった。
しかし、ドラ息子の父親であるマフィアは、無罪以外の判決を認めない態度でヴィンスを脅すのだ。

八方ふさがりの状態で進んでいく裁判。

最愛の家族を人質に取られて望んだ最終弁論の場で、ヴィンスは驚きの法廷戦術にでる。

ヴィンス:検視官。ここにあなたが1967年に担当した事件の調書があります。
これは、あなたのサインですね?
検視官:間違いありません。しかし、その事件は…
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ヴィンス:あなたはこの銀行強盗事件で逮捕された容疑者、ジョンソン大統領、ケネディ大統領、エリザベス・モンゴメリ(女優)の指紋が本人のものであることを認めていますね?
検視官:あれはドッペルギャングの仕業だった。他人に化けるのが、奴らのやり口で……

ヴィンス:1971年の核兵器盗難事件は?あなたは指紋と監視カメラの映像を証拠に、ファースト・ファミリーのリーダーを逮捕していますね?真犯人は誰でしたか?
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検視官:ワースト・ファミリー、別次元からやってきた悪のファースト・ファミリーだ。

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ヴィンス:1966年のスーパーソニックの検死を行ったのもあなたですね?
ご存知の通り、彼はその後、死から復活しました。今回の被害者とされる女性が本当に死亡していたと、あなたは言い切れますか?

アストロシティで起こった過去の事件を次々と引き合いに出しながら、「今回の容疑者が本当に本人だったのか?」、「魔術などで操られていた可能性はないのか?」、「そもそも本当に事件は発生したのか?」を問いかけていくヴィンス。

いずれの証人たちもヴィンスの問いかけに応えられない。
あたりまえである。なんでも起こりえるこの世界で、あらゆる可能性を考慮できるわけはないのだから。

かくして、被告人のドラ息子には推定無罪の原則が適用され、晴れて無罪放免となる。

勝利と引き換えに、自らが信奉する法の穴を突き、世界の司法システムを根底を覆してしまったヴィンス。
しかし、彼にとっての地獄はこれからであった。

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ヴィンスの手腕を気に入ったドラ息子の父親は、彼をマフィアの顧問弁護士に無理やり抜擢。今回の法廷戦術を、ファミリーが抱える全ての裁判に適用するように命じたのだ……

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というわけで、新型コロナの影響で新刊が出ない時期が続いたので、今回はその間に読んだ作品の紹介です。

『スポーン』や『Gen13』などのイメージコミック勢が台頭し、それらの作品に追随する形でマーベルやDCのヒーローたちも、より過激で、より暴力的な方向に路線変更していた90年代半ば。
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しかしそんな"エクスリーム"全盛期において、その方向性に待ったをかけ、現代のコミックシーンにつながるヒーローたちの王道回帰の流れを創った作品群が登場しました。

それは例えば、『ヒーローズリボーン』の終了後に始まったマーク・ウェイドの『キャプテン・アメリカ』やカート・ビュシークの『アベンジャーズ』であり、
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グラント・モリソンの『JLA』であるのですが、
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その中でも欠かすことが出来ない作品が今回紹介した『アストロシティ』です。

DCでもマーベルでもない、しかし確実にそのエッセンスを感じさせる世界を舞台に、ヒーローがいる世界のリアルを描いた『アストロシティ』。
「ヒーローがいる世界のリアルを描く」というと、ヒーローが酒や薬に溺れたり、社会的立場を利用して暗い欲望を満たすヒーローの裏の顔を描くような、露悪的な物語を想像するかもしれません。(実際にそういう作品も、当時、沢山ありました)

しかし、『アストロシティ』の描く"リアル"はそうではありません。
『アストロシティ』の"リアル"とは、例えば「ヒーロー家族の末っ子として宇宙や別次元を冒険する少女が感じる"学校"という異世界への憧れ」であったり、「刑期を終えて更生を目指すB級ヴィランの溜め息」であったりと、ヒーローコミックの全てを肯定した上で描かれる、パネルとパネルの間に存在する住人たちの日常なのです。

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今回紹介した物語も、けして「アメコミ世界ではまともな司法制度なんて成立しないよね」という意地悪な指摘で終わりではありません。
そうした指摘を踏まえたうえで、「それではアメコミ世界における司法の正義とはどのような形なのか?」を探る物語となっていきます。

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(ちなみに今回の物語で重要な役割を果たすヒーロー、ブルーナイト。
司法プロセスを無視し罪人を射殺する私刑執行人で、パニッシャーとゴーストライダーを合わせたようなキャラクターです。)

残念ながら、国内での翻訳は止まってしまった本作ですが、短編が多い(そしてそれらが皆面白い)作品ですので、原書でもぜひどうぞ。

【宣伝】
『アストロシティ』には複数の翻訳本が出ています。
いずれも現在では入手難ですが、名作ぞろいですので見かけたら是非どうぞ。
また、翻訳された2巻に続く『ファミリーアルバム』と今回紹介した話が収録される『ローカルヒーローズ』は、それぞれ短編集ですので、ここから読み始めるのもおすすめです。
(紹介しておいてあれですが、個人的には『ファミリーアルバム』の方を特にお勧めします)



DCは最近本国で、1冊完結のグラフィックノヴェルに力を入れているのですが、そんな作品群が続々と翻訳される模様。
『ハーレイ・クイン:ガールズ・レボリューション』はいわゆる"学パロ版ゴッサム"!ハーレクインを主人公に、ブルース、ジョーカー、ポイズン・アイヴィがみんな10代の若者として登場。
同じくハーレイが主人公の『ハーリーン』は打って変わって、アダルトな雰囲気が漂うロマンス。ジョーカーがセクシーすぎて鼻血出そう…
『ワンダーウーマン:ウォーブリンガー』は、ワンダーウーマンの少女時代を描いたグラフィックノベル。こちらは"Wonder Woman Warbringer comic"ちょっと検索してほしいのですが、とにかくアートが美麗です。ワンダーウーマンを主人公としたベストセラー小説が原作で、内容も折り紙つきです。




また、最近はヒーローコミック以外のコミックの翻訳も盛んになってきました。
『アメリカン・ボーン・チャイニーズ:アメリカ生まれの中国人』は現在DCで活躍中のライター、ジーン・ルエン・ヤンの出世作。
彼が『スーパーマン』に抜擢されたのは、アメリカ移民2世の悲哀を描いた本作がDC編集部の眼に止まったからではないかと、管理人は思っています。
またピュリッツァー賞を獲得した名著『完全版 マウス――アウシュヴィッツを生きのびた父親の物語』が久しぶりに発売。
こちらも一生モノのコミックですので、未読の方は是非。


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バットマン #86-90

バットマン #86-90
(作:ジェイムス・タイニン4世、画:トニー・S・ダニエル他)

【家族の死】
バットマンの心身の粉砕と屈服を目論んだベインとトーマス・ウェインによるゴッサム侵攻を退けたバットマンたち。
しかしその代償は余りにも大きかった。バットファミリーによるゴッサム奪回作戦の邪魔になることを恐れたアルフレッド・ペニーワースは、自らの命をベインに捧げたのだ。
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父親同然の存在であるアルフレッドの死に打ちひしがれたバットマン。しかし、彼はその悲劇を振り払うかのように、資産家ブルース・ウェインとして、また闇の騎士バットマンとして、ゴッサムシティの再建に没頭していく。

そんなある日、「世界最高の職業暗殺者たちが何者かによって雇われ、ゴッサム入りした」という情報が、裏社会に流れる。

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チェシャ、マーリン、ガンスミス、Mr.ティース、一人また一人と雇い主が指定した酒場に現れるDC世界最高の暗殺者たち。
そして最後に現れたのは、当然"世界最高の傭兵"であった…
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【ヴィランたちの動揺】
5人の暗殺者の噂を聞き、その身柄の確保のために動き出したバットマン。
しかし動き出しのたのは彼だけではなかった。
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ペンギン、リドラー、キャットウーマン。
バットマンの最古参の敵である彼らもまた、それぞれ独自の動きを見せ始める。
そう、彼らは知っていたのである、「5人の暗殺者の到来」は、彼らが忘れようとしていた過去の亡霊の復活を意味することを…

ヴィラン達があわただしい動きを見せる中、バットマンの内縁の妻となったキャットウーマンは、バットマンに彼女たちの"完全犯罪計画"を告白する。

【デザイナー登場】
キャットウーマンの告白は、バットマンが活動を始めて間もないころの時代に遡る。
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それは物事が今よりもずっとシンプルで大らかな時代であった。颯爽とゴッサムに現れたバットマンとその相棒である"驚異の少年"ロビンはゴッサムの屋上を駆けまわり、彼らとの知恵比べを楽しむかのように、カラフルなコスチュームに身を包んだ悪人たちは、より大仰でより奇妙な犯罪の準備にいそしむ。

そんなある日、ゴッサムを代表する4人のヴィランに招待状が届く。
差出人の名として書かれているのは、"D"の飾り文字。その頭文字は、ヴィラン達に犯罪界に伝わるある都市伝説を思い起こさせるのであった。

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ジョーカー:はてなマークの杖の男と一緒なんて笑えるぜ。
キャットウーマン:ジョーカーも呼ばれたなんて心外だわ。TV局の事件の時なんて、本当に犠牲者がでたのよ?

軽口へと交わし、招待状の示す館へと向かうヴィラン達。
そして、館のドアをあけ、一人の男が彼らを出迎える。

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デザイナー:ようこそ。私が今宵の晩餐の招待者、デザイナーと呼んでくれたまえ。

彼の名はデザイナー。
「そんなわけでデザイナーはまんまと犯罪をやり遂げたってわけさ」、「そのブツなら20年前にデザイナーが盗んで、今あるのは贋物だぜ」…
ゴッサムの犯罪者たちの間で交わされる法螺話にしか登場しない、伝説の犯罪プランナーである。

ジョーカー:はっ!
ペンギン:少しは敬意を見せんか、ジョーカー。我々はいま、生ける伝説を目の当たりにしてるだぞ。

その名を聞いてせせら笑うジョーカーをいさめるペンギン。

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デザイナー:"犯罪界の道化王子"。君の名声はいささか独り歩きが過ぎるようだ。
ジョーカー:勝手に独り歩きするから名声っていうのさ。お前さんの名声だって、まだその裏付けを見せてもらってないんだぜ?


ジョーカーの愚弄を悠然と交わし、4人の若きヴィランを晩餐の席に座らせたデザイナーは、自身の過去の物語と4人を呼び寄せた目的を語りだす。

【デザイナーの過去】
彼がまだデザイナーと呼ばれる前の時代、既に凄腕の犯罪者として知られていた彼には1人の宿敵がいた。
その宿敵とは、バットマンが登場するずっと前に"世界最高の探偵"と呼ばれた男。

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犯罪者と探偵との戦いはまるで永遠のいたちごっこのようであった。
敗北の度により周到を計画立てる犯罪者と、そのたびに一歩先をいく捜査術で犯罪者を捕まえる探偵。
再戦を重ねるたびにその複雑さを増していく彼らの戦いはしかし、いずれも犯罪者の敗北で終わった。

ある日、犯罪者は自分の過ちに気が付く。
このまま、少しずつ自分の計画に改良を加えていっても、更なる敗北を重ねるだけだと。
彼が探偵に勝つためには、「このまま探偵との戦いを20年間続けた末にたどり着くであろう自分の最終形」に、一足飛びでならなければいけないのだ。

かくして自分の犯罪計画を練り直すために自室に引き籠った犯罪者。
一年後、その部屋から出てきたのは今までの彼ではなかった。犯罪者は彼自身の最終形、"デザイナー"となったのだ。

自身の究極の犯罪計画をもって探偵との再戦に臨むデザイナーだが、既に探偵は彼の敵ではなかった。
一度は"世界最高の探偵"として称えられた男は、歴史の影でその生涯を閉じたのであった。


【究極の犯罪計画】
自身の過去を4人のヴィランに語り終えたデザイナーは、本題、つまりは彼が4人を招待した目的を明かす。
バットマンが登場したゴッサムで日夜バットマンとの知恵比べを続ける4人に、かつての自分の姿をみたデザイナーは、彼らを"最終形"へと引き上げるための協力を申し出たのだ。

バットマンを打倒し彼らの最終目的を達成するための"究極の犯罪計画"を授けるため、4人それぞれと順番に面談を始めたデザイナー。
面談相手として最初に選ばれたのはキャットウーマンであった。

デザイナーの執務室の中で、じっくりと語り合う2人。
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その中でデザイナーは、気に入った美術品を狙う盗人であるキャットウーマンに、より大きなスケールで物事を考えることの必要性を説き、彼女が最終的に狙うべき獲物を定義し、それを盗み出すための計画を作り出す。
面談を終え執務室から出てきたキャットウーマンは、新たな獲物と新たな計画のことで頭がいっぱいであった。

彼女の後に続いたリドラーとペンギンも、同様であった。
いずれもデザイナーとの対話で、自分が心の奥底で臨んでいた自分の"最終形"を見出したのだ。

最後に、デザイナーの執務室に招かれたのはジョーカーであった。
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しかし、彼だけは違った。ジョーカーの"最終形"を引き出すデザイナーのセッションはいつまでたっても終わらなかったのだ。
執務室の前で終了を待つ3人。ジョーカーのセッション開始から数時間たったのち、執務室の扉がはね明けられる。


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デザイナー:この者たちを殺せ!
抜き身の剣を持ったデザイナーは、部下たちにそう命令する。
デザイナー:奴は私に、ゴッサムがどのような街なのか、どのような街になろうとしているのかを示した。奴は……
しかし、デザイナーの口からその続きが語られることはなかった。
ジョーカーが隠し持っていた拳銃で、デザイナーを射殺したからである。

ジョーカー:どうも俺のジョークが奴の気に障ったらしい。

燃え落ちるデザイナーの館を尻目に、そそくさとゴッサムへと帰還する4人。
彼らは、この日の事はなかったこととし、バットマンと知恵比べを繰り返す日常に帰っていくことを決めたのだ。

しかし、キャットウーマンは気が付いていた。
あの部屋の中で、ジョーカーは確かに変わったことを
その眼の中で、彼の"最終形"が確かに生まれたことを……
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******************************

というわけで、遂に完結したトム・キングによるバットマン・サーガの後を受けて伝統ある『バットマン』誌のライターに就任したのは、ジェイムス・タイニン4世。
最近で言えば、DCリバース期の『ディテクティブコミックス』や、『ジャスティスリーグ・ダーク』などを担当しており、今回のバットマン誌の起用は名実ともに彼がDCのトップライターであることをDC社が宣言したといっても過言ではないでしょう。
またバットマン誌の前担当であるトム・キングや、その前の担当であるスコット・スナイダーと比べると非常にエンタメ志向の強いライターであるため、そういう意味でも先が楽しみであります。

今回、紹介した内容で管理人が気に入っているのは、「バットマンがゴッサムでデビューした当初、バットマンもヴィラン達も、実際のコミック同様に牧歌的な戦いを繰り広げていた」という設定。
実際の出版史とユニバースの歴史を重ねる面白い設定だと思います。

そういう意味で言えば、今回の4人のヴィランの人選にも納得がいきますよね、つまりはこれです。
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今回紹介した作品の単行本はこちら。


続いてマーベルのクロスオーバー『モンスターズ・アンリーシュド』が邦題『マーベル怪獣大進撃』として翻訳決定。
ヒーローたちが登場する以前のマーベル社の顔であった怪獣たちが、日系人の少年"キッド・カイジュウ"を筆頭とするヒーローたちと共に宇宙怪獣に立ち向かう痛快娯楽作です。
日本人漫画家によるマーベル公式コミック『スパイダーマン/偽りの赤』は既に発売済み。映画ではなくコミック版をベースとした、様々なヴィランが登場する物語で、アメコミ読者の評判も上々ですので、気になる方は是非。
また1200人以上のキャラクターを紹介する事典『マーベル・エンサイクロペディア』は発売が8月に延期。
10年前に発売した『マーベル・キャラクター大事典』は、速攻で売り切れてプレミア本になってしまったので、買い逃した方は是非。
この手の事典系の書籍は、翻訳がツボを外した微妙なものになることも多いのですが、本作はアメコミ翻訳の一線で活躍する翻訳者が集結しているので、そういう意味でも安心して手を出せるタイトルですね。



続いてDCからは『スーパーマン:イヤーワン』が翻訳決定。『バットマン:イヤーワン』のフランク・ミラーと巨匠ジョン・ロミータJr.によるダークナイト・リターンズ世界におけるスーパーマンのオリジンです。
『ハーレイ・クイン:ブレイキング・ガラス』は、若者向けレーベルから発売された"学園パロディ版ゴッサム"ともいえる作品。
『バットマン/ミュータント タートルズ 2』は今回紹介したジェイムス・タイニン4世による企業間クロスオーバー。非常に評価の高い作品で、本国では既に3度目のクロスオーバーが刊行済み
そして最後は、翻訳コミックに新規参入したワイズ・パブリッシングさんの参入第一弾『ソニック・ザ・ヘッジホッグ①フォールアウト!』。その名の通り、ゲーム、『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』のコミックとなります。
管理人は門外漢なので詳しくないのですが、ソニックのアメコミは米国では非常に人気があり、既にゲームを離れコミック独自のユニバースを形成していると聞いているので、そんな作品が遂に日本に上陸するのは非常に喜ばしいところです。


ホークアイ:フリーフォール #1-4

ホークアイ:フリーフォール #1-4
(作:マシュー・ローゼンバーグ、画:オットー・シュミット)

【フードvsホークアイ】
ホークアイ:人が馬鹿げたことをするのには、いろんな理由がある。
悪いツレに誘われた奴、やけっぱちの奴、スリルを求めてるだけの奴、そしてそれしか生き方を知らない奴…
おっと、最後の"奴"とは俺の事だった。


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ニューヨークのうらびれた倉庫で行われた麻薬売買の現場に、何の変装もせずに飄々と現れたホークアイ。
彼が狙うターゲットはただ1人。ニューヨークの裏社会で裸一貫から暗黒街の顔役にのし上がった男、フードである。

チンピラ時代に手に入れた悪魔の頭巾によって世界最強クラスの魔力を持ちながらも、その力を「裏社会での勢力拡大」というひたすら世俗的な目的のために使うフード。
単身で立ち向かうにはいささか強大過ぎるこの男を相手に大立ち回りを演じたホークアイは、見事フードとその部下たちを逮捕することに成功する。

しかし、よかったのはそこまでであった。
政財界への太いパイプを持ち、腕利きの弁護士を雇う資産を持つフードは、裁判であっさりと無罪となる。

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結局、ホークアイのしたことは、フードのような犯罪者の下で働くしか生きる術を持たない食い詰め者を、更なるどん底へと送り込んだだけであったのだ。

自分の無力さを噛みしめるホークアイ。
そしてその翌日、フードの組織を標的にした過激なヴィジランテがニューヨークに現れる。
その名はローニン…
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【ローニン追跡】
フードの裏金を運ぶ現金輸送車がローニンによって襲われた翌日。
ニューヨークの高級カフェで優雅な朝食を楽しんでいるホークアイの前に2人の男が現れる。
バッキーとファルコンだ。

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ファルコン:$20のオムレツだって?
ホークアイ:ブルックリンの高級住宅地化には、俺も頭を痛めているとこだよ。
で、何の用かね?


急に羽振りがよくなったホークアイを訝しみつつも、要件を切り出すバッキーとファルコン。
2人がホークアイを訪ねた理由は、もちろんローニンであった。
2人は、かつてホークアイが名乗っていた名前を使い、現在ホークアイが住むブルックリンを中心に活動するローニンの正体が、他でもないホークアイその人ではないかと疑っているのである。

自分にかかった嫌疑を晴らすために、バッキー&ファルコンと共に、ローニンの追跡を行うこととなったホークアイ。
そんなある夜、張り込みを続ける3人の前に、ローニンが現れる。
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ローニンを捕まえようと襲い掛かる3人。
ホークアイ:人のコスチュームを盗みやがって、後でじっくりと話を聞かせてもらうぜ。
バッキー:クリント!俺の射線をふさぐな!

急造チームゆえの連携の悪さをつくように、3人を手玉に取るローニン。
ローニンを取り逃した後、クリントはバッキーにつぶやく。

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ホークアイ:…な?俺がローニンじゃなかったろ


【ローニンの正体】
ローニンとの初対決以降も、ホークアイの前には様々なヒーローがやってくる。

スパイダーマン、
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トニー・スターク、
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ブラックウィドウ、
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ルーク・ケイジ…
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言い方は違えど、彼らがホークアイにかける言葉はみな一緒。
「ホークアイこそローニンの正体に違いない。なぜ彼がそんな馬鹿げたマネをするか?それはホークアイが馬鹿げた男だからである。」

しかし、そのたびに絶妙なタイミングでローニンが現れホークアイのアリバイは証明される。

そしてそんなある日、フードのアジトの1つに侵入したローニンは、フードの下でハッカーとして働く1人の少年に刀を突きつける。
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ローニン:パスワードを教えろ。さもなくば…殺ス。
少年:えぇっと殺すわけないよね?
ローニン:何故ダ?
少年:だってお前ホークアイだろ?
ローニン:違ウ…
少年:声色でごまかしてもだめ。これを見てみな。
これがお前のパンチの映像。こちらは1年前のホークアイの映像。
ほらそっくりだ。
同じ背丈、同じスピード、同じ動き。
ってことはお前はホークアイってことだ?

ホークアイ:くそったれ…

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【ホークアイの秘密】
ローニンの正体は勿論ホークアイであった。
フードと対決するための隠れ蓑として、ホークアイが過去のコスチュームを引っ張り出したのである。

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政府から盗み出したカーンの携帯式タイムマシーン、シールドの倉庫から盗み出したポンコツLMD…
あらゆる手段をつかってヒーロー達から向けられる疑惑のまなざしをかわそうとするホークアイは、やがて抜き差しならぬ事態へと追い込まれていく。

デアデビルによって編成されたローニン追撃隊のメンバーに、なし崩し的に加わることとなったホークアイ。
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彼はアリバイ作りのために、地球で大道芸人として暮らすスクラル人を無理やり仲間に引き込み、アリバイ工作を図る。

しかし、頼りのスクラル人は約束の場に遅刻。
さらには、命令を聞き間違えたポンコツLMDが現場に現れ、計画は一気に破綻を迎える。
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計画を諦めいつも通り行き当たりばったり(ホークアイ曰く"即興")でこの場を切り抜けることを決めたホークアイ。
彼はすかさず、ローニンのコスチュームで自分の顔をさらし続けるLMDを破壊。
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スクラル:マジか!殺しやがった!
ホークアイ:こいつはロボットだ。
スクラル:お前にはロボットの友人だっているだろ?
ホークアイ:…こいつは友達じゃない。こいつを海に沈めたら、コスチュームを交換するぞ。お前がホークアイの振りをしろ。
スクラル:それでお前のお友達の中に紛れ込めって?無理に決まってるだろ!
ホークアイ:じゃあ、お前がローニンになって、世界最高の格闘家4人と戦うか?
いいか、とにかくクールでいろ。それが俺に成りすますコツだ。
スクラル:お前はちっともクールじゃないだろ。
ホークアイ:…奴らはまだそれに気が付いてない。


かくして泥船で激流を渡るような計画を進めることとなったホークアイとスクラル。
しかし、その様子をすべて見ていた男がいた。スパイダーマンである。
ホークアイ扮するローニンと一戦交えたスパイダーマンは、密かにローニンを尾行し、彼の正体がホークアイであることを突き止めていたのだ。
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スパイダーマン:いったいぜんたい、何を考えてこんなことをやってるんだい?
ホークアイ:これは……極秘任務なんだ。俺と……そう、俺とキャプテン・アメリカの。

咄嗟にキャップの名前を持ち出し言い訳するホークアイ。

スパイダーマン:そんな言い訳、信じるとでも?キャップがこんなことをさせる訳ない。盗んだ金はどうした?
ホークアイ:それも言えない。信じてくれ。俺と…キャップを。

それでも信じようとしないスパイダーマンを前に、ホークアイは最後の、そして最低の切り札を切る。

ホークアイ:お願いだ。今日だけは信じてくれ。キャプテン・アメリカをじゃない、お前の友人である俺のことを…

ホークアイが戻ることが出来ない一線を越えたその時、彼の振りをしてパトロールに戻ったスクラル人も別の男に遭遇していた。
その男とは…
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**********************
というわけで、今回は新進気鋭のライター、マシュー・ローゼンバーグによるミニシリーズ『ホークアイ:フリーフォール』の紹介でした。

「ローニンのコスチュームでフードに嫌がらせをする」という軽いノリで始めたジョークのような作戦を進めるうちに、いつしか後戻りできない地点へと追い込まれてしまったホークアイ。
嘘で嘘を塗り固めていった先で彼を待つのは、タイトル通りの"フリーフォール"なのか?

ヒーローたちが次々現れてはホークアイと軽妙な掛け合いを行う展開も面白いし、オットー・シュミットによるアートも最高。
単行本1巻で終わるコンパクトなミニシリーズなので、何かの間違いで翻訳されないかな。

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今回紹介した作品はこちら。(1つ目が単行本、2つ目が該当号の電子書籍となります)



最近の翻訳はこちら。
マーベルからは日系人ヒーローキッド怪獣くんが登場するイベント『Monsters Unleased』が『マーベル怪獣大進撃』として翻訳決定。
また同じくマーベルの大型イベントとしては、アイアンマンとキャプテン・マーベルを筆頭としてヒーロコミュニティが2分する戦いを描いた『シビルウォー2』も翻訳決定。


DC作品では、ワンダーウーマンとバットマンの対決を描く『ワンダーウーマン:ヒケテイア』が発売。こちらは管理人は未読なのですが、ライターを務めるグレッグ・ルッカは『バットウーマン:エレジー』や『ワンダーウーマン:イヤーワン』などを手掛けた超実力派。
同作者の大ファンの管理人としてはマストバイですね。

プロフィール

NOB-BON

Author:NOB-BON
X-men生まれSpawn育ちを地でいく、90年代アメコミバブルの残党。
しばらくの間、アメコミは翻訳本を買う程度だったのが、最近のデジタルコミックの手軽さにひかれ、本格的に復活しました。

基本的にMarvelメインですが、DCのリランチを機に自分の中でDCブームが来てるので、しばらくはDCの話題続くかも。
しばらくどころか完全にDC派に転びました。

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