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ロビン #1

ロビン #1
(作:ヨシュア・ウィリアムソン、画:グレブ・メルニコフ)

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レン:君は下書きをしないのかい?「職業画家にとって一番大事なのは計画と準備だ」って、パパとママは良く言ってるんだけど…
ハナ:だれがそんなこと決めたの!? 私は計画じゃなくて、心を使って筆を走らすの!

ダミアン:やめるんだ、ハナ。どんな時でも計画は重要だ。
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独り埠頭に佇み、漫画を読みふけるダミアン。

その姿はとてもさっきまで地下格闘場で命を懸けて戦っていたとは思えない、年相応の少年の者であった。

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(その晩のダミアンの対戦相手、盲目の格闘家キングスネーク)

DC世界随一の格闘家の1人であるキングスネークを難なく降したダミアンは、埠頭で何者かを待っていた。
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アルフレッド:それが、お父上から隠れてまでして、やりたかったことですか?ダミアン様。
違法の地下格闘の世界に身を置くことが?
もしや、わざわざキングスネークを敵に選んだのは、彼がベインの父親だからでございましょうか?

ダミアン:俺がキングスネークと戦ったのは私怨じゃない、たまたまだ。
だから消えろ、ペニーワース。お前は俺のやましさが生んだ幻影に過ぎない。

ベインによって目の前でアルフレッドを殺されたトラウマを振り払うように、思わず声をあげるダミアン。

そして、アルフレッドの幻影に替わって、ダミアンの本当の待ち人が姿を現す。
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待ち人とは、リーグ・オブ・ラザラスよりの使者であった。
遥か昔にリーグ・オブ・アサシンズから枝分かれした分派、リーグ・オブ・ラザラスが、数百年ぶりに活動を再開したのだ。

そして彼らの"活動"とはただ一つ、数百年に一度格闘トーナメントを主宰し、"当世最強の格闘家"を選出することである。
自暴自棄のようにもみえたダミアンの地下格闘荒らしは、全てリーグ・オブ・ラザラスの眼にとまり、祖父と母ですらその正体を掴めていない謎の組織を内側から探るためであったのだ。

かくして目論み通り格闘トーナメントへの参加資格を得たダミアン。
そして"蝙蝠の子"のトーナメント参加の報は、裏世界に衝撃をもって広まっていく。

そしてその噂は、リーグ・オブ・アサジンズのもう1つの分派、リーグ・オブ・シャドウズの下にも届いていた。

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???:問題ない。
リーグ・オブ・シャドウズの幹部は、ダミアン参戦の報告を一言で切り捨てる。
???:奴が参加するならば、我々が送り込む戦士と戦うだけだ。
そして"小鳥(ロビン)"を狩るのに、"鷹(ホーク)"に勝る者など、居りはしない!


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(こちらグリーンアローの息子、コナー・ホーク。New52以降では初登場となります。)

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というわけで、今回は父であるバットマンの下を離れ、自分が結成したティーンタイタンズの仲間たちとも距離を置き、独自の道を歩み始めたダミアンを主人公とした『ロビン』誌の紹介でした。

それにしてもダミアンってマンガ、それもべたべたのボーイ・ミーツ・ガール物が好きなんですね……

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今回紹介した作品はこちら(電子版です)。
バットマンやファミリーと完全に袂を分かった状態なので、タイトルは『ダミアン』の方がふさわしいと思うのですが、
それが敢えて『ロビン』となっている辺りで今後の展開が予見出来て、楽しみはいや増すばかり。



先日邦訳が発表されたばかりなのが『マーベル:レガシー』。
"紀元前100万年アベンジャーズ"の紹介と共に、リランチされたマーベル世界を紹介する1冊です。
ちなみに、同作の完結編ともいえる現行の『アベンジャーズ』誌も収録された日本オリジナル編集版です。
またマーベルからは、新時代のヒーローたち主体のチーム誌、『チャンピオンズ:フリーランサー・ライフスタイル(仮) 』と『ウエスト・コースト・アベンジャーズ:シティ・オブ・イービルズ(仮) 』の翻訳も決定。
特にウエスト・コースト・アベンジャーズはホークアイ(ケイト)や、アメリカ・チャベスなど、いま一番熱いヒーローたちが所属するチームなので期待してます。


続いてDCからは、DCでいま一番勢いのあるライター、トム・テイラーによる『スーサイド・スクワッド:バッド・ブラッド』が翻訳決定。本作品は当ブログでも紹介済み。紹介した時の最高のテンションを維持したまま、最後まで短期間で駆け抜けた快作なので、非常におすすめです。
また今月は『バットマン:スリー・ジョーカーズ』も発売。「ジョーカーは3人いる」という特大級の秘密の暴露の真相に肉薄する、非常に感傷的な物語。



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バットマン#101

バットマン#101
(作:ジェイスム・タイニン4世、画:ギレン・マーチ)

ブルース・ウェインの資産を合法的に我がものとし、ゴッサムの財力・権力・暴力の全てを支配したジョーカーによる統治。
イベント『ジョーカーウォー』で描かれたその事件を終えたゴッサム市は、ジョーカーの残した爪痕からの復興の道を辿っていた。

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そしてそんなゴッサムの全てを見下ろす高層ビルのペントハウスには、謎の人影と戦うバットマンの姿が。
闘いの相手はコール・キャッシュ。生身の人間ながらこの世界有数の傭兵"グリフター"として恐れられる男である。

互いの体術の限りを尽くして死闘を続ける"世界一の探偵"と"世界一の傭兵"。

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ルーシャス・フォックス:キャッシュ、止めたまえ。彼が来るかもしれないことは伝えておいたはずだ!
グリフター:すまねぇ、忘れてた。というか、「奴とやりあったことあるぜ」っていう武勇伝が欲しくてな。


ルーシャスの制止に悪びれる様子もなく、構えを解くキャッシュ。

バットマン:あの男をボディガードを雇ったのか?
ルーシャス:知合いですか?
バットマン:自分自身をグリフター(詐欺師)と名乗る様な男だ。
ルーシャス:彼に払っている額を考えれば、納得の名前だ。
ただボディーガードの1人も雇いたくなりますよ、あなたの彼女が私にしでかしたことを考えれば。


バットマンを連れて愚痴りながら階段を降りていくルーシャス。
階段を下りた先は、豪勢なペントハウスの一部を改築したゴッサム最新鋭にして最高層の研究室であった。
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実は『ジョーカーウォー』で奪われたウェイン家の資産がキャットウーマンの手で取り返された時、複雑な事情により、その資産はブルースではなくルーシャスに振り込まれ、フォックス家はゴッサム1の資産家となったのだ。

研究室に腰を落ち着かせたルーシャスは、ブルースに現在の状況を淡々と説明する。
・バットマンが密かに街中に配備していた(そしてジョーカーに奪われた)武装の出資者がブルースであることを、世間は重く見ていること。
・そのため、ゴッサム再建計画をウェイン社が進めるためには、ウェイン社がブルース・ウェインと手を切ったことを世間に示す必要があること。
・ウェイン社の役員会は、十分な金額と引き換えにブルースから経営権をはく奪する方向で検討が進んでいること。
・今回の事件で、(いまやルーシャスの物となった)ウェイン家の資産には金融の専門家たちの厳しい目が注がれるようになり、仮に資産がブルースの手に戻ったとしても、今までのようにバットマンの活動に注ぎ込むのは実質不可能になること。
・上記の事を認識したうえで、それでも資産と経営権を取り戻したいならば、ルーシャスは協力を惜しまないこと。

つまり、ブルースに提示された選択肢は2つ。
1つ目は「ルーシャスから資産と経営権を返してもらい、ゴッサムの復興支援とバットマンとしての活動を諦めること」、
2つ目は「ルーシャスに資産をあずけゴッサム復興支援につくしてもらい、自分はバットマンとして活動すること」。

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ルーシャス:これはあなたの家族の会社と未来についての選択です。どちらを選ぶにせよ、私は全力でサポートします。
ただよく考えてください。確かに資産を受け取らなければあなたに向けられる監視の目も和らぎ、バットマンとして活動できる。
でもそれは"よりスリムなバットマン"としてです。
宇宙船も人工衛星もなし、バットモービルをウェイン社の最新3Dプリンタから出力することもできません。
もし車を壊したならば、その時は自分で直す必要があるんですよ?

資産家としての生活と、クライムファイターとしての生活。2つの選択を突きつけられたブルースは、事も無げに答える。
バットマン:ならばもう答えは出てる。


ルーシャスとの会話を終え、再び屋上から立ち去ろうとするバットマン。そんな彼にグリフターが声をかける。

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グリフター:さっきの件、恨んでないよな?スパーリングだったとでも思ってくれや。
バットマン:……お前のボスに言伝がある。
グリフター:おいおい、俺のボスとはいま話してきたばかりだろ?


とぼけるグリフターを無視し、バットマンはグリフターの"本当のボス"への伝言を残す。

バットマン:私はHALO社の正体を知っている。
そしてもう1つ。何が変わろうとこの街は私の街だ。いつでもお前たちの事は見張っているぞ。


*******************************

というわけで、今回はイベント『ジョーカーウォー』終了後のバットマンの状況を整理してみました。
一番最後に名前の挙がったHALO社とは、イメージコミック設立当時の看板チーム『ワイルドキャッツ』の出資会社の名前。
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今回のグリフター登場からも見て取れるように、どうやら来年はDCユニバースに編入以降いまいち影の薄かったワイルドストーム勢が次々と登場する雰囲気です。

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ちなみに、スーパーマン系列には、"ワイルドストーム版バットマン"ことミッドナイターが登場予定で、スーパーマンが"ワイルドストーム版ジャスティスリーグ"ともいえるヒーローチーム、オーソリティのリーダーとなるなんていう噂もあったりします。

またバットマン誌の今後を占う上で、もう一つの重要なキャラが、今号に登場したルーシャス・フォックスの3人の子供たち。
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フォックステック社の若き天才社長であるルークは、バットウィングとして活動中で、DCファンにはお馴染みのキャラ。
そしてその妹であるタムも、兄のサポート役としてよくに目にする名前なのですが、注目なのが長兄のティム・フォックスです。
ルーシャスの息子として1970年代に登場するもその後数回しか登場していない忘れられたキャラであるティムですが、2021年1-2月で行われるイベント『フューチャーステイト』では、近未来のゴッサムのバットマンとして登場することが確定。

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『フューチャーステイト』というイベントは、今後のDC各誌の展開(の方向性)を予告するような内容であるため、今後のバットマン誌においてもティム・フォックスが台風の目となっていくことが予見できます。
ここら辺、あえて読者にとって馴染みのあるルークではなく新キャラに等しいティムにその役割を与えるあたり、DCの自信を感じさせますね。
余談ですが、「フォックス家のメンバーを黒人初のバットマンとするという展開の脚本の出来が素晴らしいらしい」という噂は、昨年の冬あたりから様々なメディアで囁かれており、そういう意味でも楽しみです。


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今回した物語の直前となるバットマン誌のイベント『ジョーカーウォー』の単行本がこちら。
1冊目はバットマン誌で繰り広げられた本編、2-3冊目はその関連誌となっています。


続いて最近の翻訳本ですが、米国での大ヒットをうけすっかり"ホワイトナイト・ユニバース"を形成しつつある『バットマン:ホワイトナイト』の続編である『バットマン:カース・オブ・ホワイトナイト』が1月に発売。今回はアズラエルやバットガールが登場!!
そして現在のDC正史世界の旗艦タイトルであるジャスティス・リーグ誌関連では、そのクライマックスである『ジャスティス・リーグ:ドゥーム・ウォー』が発売。『ダークナイツ:デスメタル』へと繋がる重要タイトルでDC世界の未来と過去のヒーローたちが集結するさまは一見の価値あり。
そして先日発表された嬉しいサプライズが『ゴッサム・セントラル』の翻訳。なんの特殊能力も持たず、職業的倫理観だけに突き動かされてゴッサムの狂人たちと戦うゴッサム市警の活躍を描いた本作。グレッグ・ルッカ(ワンダーウーマン)や、ブルベイカー(ウィンターソルジャー)といったハードボイルドな作風で知られる人気ライターが手掛け、非常に高評価な作品なのですが、とにかく地味なタイトルであるのでまさか翻訳されるとは。



また嬉しいサプライズといえばマーベルの『スーペリア・フォー・オブ・スパイダーマン1』。シニスターシックスを名乗る5人組のC級ヴィランたちが、マーベルユニバースの底辺で繰り広げるドタバタ劇がまさかの翻訳です。その評判だけ聞いていつか手を出したいと思っていた本作が日本語で読めるとあって、管理人はすぐさま予約しました。

またマーベルからは『チャンピオンズ:チェンジ・ザ・ワールド』と『ウエスト・コースト・アベンジャーズ:ベスト・コースト』の翻訳も発表。前者はカマラ・カーン(Ms.マーベル)やマイルス・モラレス(スパイダーマン)、後者はケイト・ビショップ(ホークアイ)やグウェンプールを中心とした、若手ヒーローたちのチーム誌。明るいキャラ同士の掛け合いが魅力のタイトルですので、そういうのが好きな方は是非!


バットマン #86-90

バットマン #86-90
(作:ジェイムス・タイニン4世、画:トニー・S・ダニエル他)

【家族の死】
バットマンの心身の粉砕と屈服を目論んだベインとトーマス・ウェインによるゴッサム侵攻を退けたバットマンたち。
しかしその代償は余りにも大きかった。バットファミリーによるゴッサム奪回作戦の邪魔になることを恐れたアルフレッド・ペニーワースは、自らの命をベインに捧げたのだ。
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父親同然の存在であるアルフレッドの死に打ちひしがれたバットマン。しかし、彼はその悲劇を振り払うかのように、資産家ブルース・ウェインとして、また闇の騎士バットマンとして、ゴッサムシティの再建に没頭していく。

そんなある日、「世界最高の職業暗殺者たちが何者かによって雇われ、ゴッサム入りした」という情報が、裏社会に流れる。

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チェシャ、マーリン、ガンスミス、Mr.ティース、一人また一人と雇い主が指定した酒場に現れるDC世界最高の暗殺者たち。
そして最後に現れたのは、当然"世界最高の傭兵"であった…
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【ヴィランたちの動揺】
5人の暗殺者の噂を聞き、その身柄の確保のために動き出したバットマン。
しかし動き出しのたのは彼だけではなかった。
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ペンギン、リドラー、キャットウーマン。
バットマンの最古参の敵である彼らもまた、それぞれ独自の動きを見せ始める。
そう、彼らは知っていたのである、「5人の暗殺者の到来」は、彼らが忘れようとしていた過去の亡霊の復活を意味することを…

ヴィラン達があわただしい動きを見せる中、バットマンの内縁の妻となったキャットウーマンは、バットマンに彼女たちの"完全犯罪計画"を告白する。

【デザイナー登場】
キャットウーマンの告白は、バットマンが活動を始めて間もないころの時代に遡る。
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それは物事が今よりもずっとシンプルで大らかな時代であった。颯爽とゴッサムに現れたバットマンとその相棒である"驚異の少年"ロビンはゴッサムの屋上を駆けまわり、彼らとの知恵比べを楽しむかのように、カラフルなコスチュームに身を包んだ悪人たちは、より大仰でより奇妙な犯罪の準備にいそしむ。

そんなある日、ゴッサムを代表する4人のヴィランに招待状が届く。
差出人の名として書かれているのは、"D"の飾り文字。その頭文字は、ヴィラン達に犯罪界に伝わるある都市伝説を思い起こさせるのであった。

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ジョーカー:はてなマークの杖の男と一緒なんて笑えるぜ。
キャットウーマン:ジョーカーも呼ばれたなんて心外だわ。TV局の事件の時なんて、本当に犠牲者がでたのよ?

軽口へと交わし、招待状の示す館へと向かうヴィラン達。
そして、館のドアをあけ、一人の男が彼らを出迎える。

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デザイナー:ようこそ。私が今宵の晩餐の招待者、デザイナーと呼んでくれたまえ。

彼の名はデザイナー。
「そんなわけでデザイナーはまんまと犯罪をやり遂げたってわけさ」、「そのブツなら20年前にデザイナーが盗んで、今あるのは贋物だぜ」…
ゴッサムの犯罪者たちの間で交わされる法螺話にしか登場しない、伝説の犯罪プランナーである。

ジョーカー:はっ!
ペンギン:少しは敬意を見せんか、ジョーカー。我々はいま、生ける伝説を目の当たりにしてるだぞ。

その名を聞いてせせら笑うジョーカーをいさめるペンギン。

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デザイナー:"犯罪界の道化王子"。君の名声はいささか独り歩きが過ぎるようだ。
ジョーカー:勝手に独り歩きするから名声っていうのさ。お前さんの名声だって、まだその裏付けを見せてもらってないんだぜ?


ジョーカーの愚弄を悠然と交わし、4人の若きヴィランを晩餐の席に座らせたデザイナーは、自身の過去の物語と4人を呼び寄せた目的を語りだす。

【デザイナーの過去】
彼がまだデザイナーと呼ばれる前の時代、既に凄腕の犯罪者として知られていた彼には1人の宿敵がいた。
その宿敵とは、バットマンが登場するずっと前に"世界最高の探偵"と呼ばれた男。

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犯罪者と探偵との戦いはまるで永遠のいたちごっこのようであった。
敗北の度により周到を計画立てる犯罪者と、そのたびに一歩先をいく捜査術で犯罪者を捕まえる探偵。
再戦を重ねるたびにその複雑さを増していく彼らの戦いはしかし、いずれも犯罪者の敗北で終わった。

ある日、犯罪者は自分の過ちに気が付く。
このまま、少しずつ自分の計画に改良を加えていっても、更なる敗北を重ねるだけだと。
彼が探偵に勝つためには、「このまま探偵との戦いを20年間続けた末にたどり着くであろう自分の最終形」に、一足飛びでならなければいけないのだ。

かくして自分の犯罪計画を練り直すために自室に引き籠った犯罪者。
一年後、その部屋から出てきたのは今までの彼ではなかった。犯罪者は彼自身の最終形、"デザイナー"となったのだ。

自身の究極の犯罪計画をもって探偵との再戦に臨むデザイナーだが、既に探偵は彼の敵ではなかった。
一度は"世界最高の探偵"として称えられた男は、歴史の影でその生涯を閉じたのであった。


【究極の犯罪計画】
自身の過去を4人のヴィランに語り終えたデザイナーは、本題、つまりは彼が4人を招待した目的を明かす。
バットマンが登場したゴッサムで日夜バットマンとの知恵比べを続ける4人に、かつての自分の姿をみたデザイナーは、彼らを"最終形"へと引き上げるための協力を申し出たのだ。

バットマンを打倒し彼らの最終目的を達成するための"究極の犯罪計画"を授けるため、4人それぞれと順番に面談を始めたデザイナー。
面談相手として最初に選ばれたのはキャットウーマンであった。

デザイナーの執務室の中で、じっくりと語り合う2人。
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その中でデザイナーは、気に入った美術品を狙う盗人であるキャットウーマンに、より大きなスケールで物事を考えることの必要性を説き、彼女が最終的に狙うべき獲物を定義し、それを盗み出すための計画を作り出す。
面談を終え執務室から出てきたキャットウーマンは、新たな獲物と新たな計画のことで頭がいっぱいであった。

彼女の後に続いたリドラーとペンギンも、同様であった。
いずれもデザイナーとの対話で、自分が心の奥底で臨んでいた自分の"最終形"を見出したのだ。

最後に、デザイナーの執務室に招かれたのはジョーカーであった。
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しかし、彼だけは違った。ジョーカーの"最終形"を引き出すデザイナーのセッションはいつまでたっても終わらなかったのだ。
執務室の前で終了を待つ3人。ジョーカーのセッション開始から数時間たったのち、執務室の扉がはね明けられる。


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デザイナー:この者たちを殺せ!
抜き身の剣を持ったデザイナーは、部下たちにそう命令する。
デザイナー:奴は私に、ゴッサムがどのような街なのか、どのような街になろうとしているのかを示した。奴は……
しかし、デザイナーの口からその続きが語られることはなかった。
ジョーカーが隠し持っていた拳銃で、デザイナーを射殺したからである。

ジョーカー:どうも俺のジョークが奴の気に障ったらしい。

燃え落ちるデザイナーの館を尻目に、そそくさとゴッサムへと帰還する4人。
彼らは、この日の事はなかったこととし、バットマンと知恵比べを繰り返す日常に帰っていくことを決めたのだ。

しかし、キャットウーマンは気が付いていた。
あの部屋の中で、ジョーカーは確かに変わったことを
その眼の中で、彼の"最終形"が確かに生まれたことを……
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******************************

というわけで、遂に完結したトム・キングによるバットマン・サーガの後を受けて伝統ある『バットマン』誌のライターに就任したのは、ジェイムス・タイニン4世。
最近で言えば、DCリバース期の『ディテクティブコミックス』や、『ジャスティスリーグ・ダーク』などを担当しており、今回のバットマン誌の起用は名実ともに彼がDCのトップライターであることをDC社が宣言したといっても過言ではないでしょう。
またバットマン誌の前担当であるトム・キングや、その前の担当であるスコット・スナイダーと比べると非常にエンタメ志向の強いライターであるため、そういう意味でも先が楽しみであります。

今回、紹介した内容で管理人が気に入っているのは、「バットマンがゴッサムでデビューした当初、バットマンもヴィラン達も、実際のコミック同様に牧歌的な戦いを繰り広げていた」という設定。
実際の出版史とユニバースの歴史を重ねる面白い設定だと思います。

そういう意味で言えば、今回の4人のヴィランの人選にも納得がいきますよね、つまりはこれです。
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【宣伝】
今回紹介した作品の単行本はこちら。


続いてマーベルのクロスオーバー『モンスターズ・アンリーシュド』が邦題『マーベル怪獣大進撃』として翻訳決定。
ヒーローたちが登場する以前のマーベル社の顔であった怪獣たちが、日系人の少年"キッド・カイジュウ"を筆頭とするヒーローたちと共に宇宙怪獣に立ち向かう痛快娯楽作です。
日本人漫画家によるマーベル公式コミック『スパイダーマン/偽りの赤』は既に発売済み。映画ではなくコミック版をベースとした、様々なヴィランが登場する物語で、アメコミ読者の評判も上々ですので、気になる方は是非。
また1200人以上のキャラクターを紹介する事典『マーベル・エンサイクロペディア』は発売が8月に延期。
10年前に発売した『マーベル・キャラクター大事典』は、速攻で売り切れてプレミア本になってしまったので、買い逃した方は是非。
この手の事典系の書籍は、翻訳がツボを外した微妙なものになることも多いのですが、本作はアメコミ翻訳の一線で活躍する翻訳者が集結しているので、そういう意味でも安心して手を出せるタイトルですね。



続いてDCからは『スーパーマン:イヤーワン』が翻訳決定。『バットマン:イヤーワン』のフランク・ミラーと巨匠ジョン・ロミータJr.によるダークナイト・リターンズ世界におけるスーパーマンのオリジンです。
『ハーレイ・クイン:ブレイキング・ガラス』は、若者向けレーベルから発売された"学園パロディ版ゴッサム"ともいえる作品。
『バットマン/ミュータント タートルズ 2』は今回紹介したジェイムス・タイニン4世による企業間クロスオーバー。非常に評価の高い作品で、本国では既に3度目のクロスオーバーが刊行済み
そして最後は、翻訳コミックに新規参入したワイズ・パブリッシングさんの参入第一弾『ソニック・ザ・ヘッジホッグ①フォールアウト!』。その名の通り、ゲーム、『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』のコミックとなります。
管理人は門外漢なので詳しくないのですが、ソニックのアメコミは米国では非常に人気があり、既にゲームを離れコミック独自のユニバースを形成していると聞いているので、そんな作品が遂に日本に上陸するのは非常に喜ばしいところです。


プロフィール

NOB-BON

Author:NOB-BON
X-men生まれSpawn育ちを地でいく、90年代アメコミバブルの残党。
しばらくの間、アメコミは翻訳本を買う程度だったのが、最近のデジタルコミックの手軽さにひかれ、本格的に復活しました。

基本的にMarvelメインですが、DCのリランチを機に自分の中でDCブームが来てるので、しばらくはDCの話題続くかも。
しばらくどころか完全にDC派に転びました。

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