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アストロシティ:ローカルヒーロズ

アストロシティ:ローカルヒーロズ
(作:カート・ビュシーク、画:ブレント・アンダーソン)

ヒーローたちが集う街アストロシティ。その街で弁護士として働くヴィンスには、「法は美しい」という信念があった。
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法は美しい。司法とはそれに関わる者が真摯に役割を果たすことで機能する、人類が築き上げた概念の中で最も"完璧"という言葉ににじり寄った存在であるのだ。

そんなある日、ヴィンスは厄介としか言いようのない事件を担当することとなる。
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弁護の相手は、マフィアのドラ息子。
父親の経営するバーで女性と口論になったドラ息子は、多くの人が見守る中で女性を殴打。
彼女を死へと至らしめたのだ。

ドラ息子の有罪は明らか。後はその量刑をいかに減らせるかが裁判のポイントとなる筈であった。
しかし、ドラ息子の父親であるマフィアは、無罪以外の判決を認めない態度でヴィンスを脅すのだ。

八方ふさがりの状態で進んでいく裁判。

最愛の家族を人質に取られて望んだ最終弁論の場で、ヴィンスは驚きの法廷戦術にでる。

ヴィンス:検視官。ここにあなたが1967年に担当した事件の調書があります。
これは、あなたのサインですね?
検視官:間違いありません。しかし、その事件は…
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ヴィンス:あなたはこの銀行強盗事件で逮捕された容疑者、ジョンソン大統領、ケネディ大統領、エリザベス・モンゴメリ(女優)の指紋が本人のものであることを認めていますね?
検視官:あれはドッペルギャングの仕業だった。他人に化けるのが、奴らのやり口で……

ヴィンス:1971年の核兵器盗難事件は?あなたは指紋と監視カメラの映像を証拠に、ファースト・ファミリーのリーダーを逮捕していますね?真犯人は誰でしたか?
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検視官:ワースト・ファミリー、別次元からやってきた悪のファースト・ファミリーだ。

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ヴィンス:1966年のスーパーソニックの検死を行ったのもあなたですね?
ご存知の通り、彼はその後、死から復活しました。今回の被害者とされる女性が本当に死亡していたと、あなたは言い切れますか?

アストロシティで起こった過去の事件を次々と引き合いに出しながら、「今回の容疑者が本当に本人だったのか?」、「魔術などで操られていた可能性はないのか?」、「そもそも本当に事件は発生したのか?」を問いかけていくヴィンス。

いずれの証人たちもヴィンスの問いかけに応えられない。
あたりまえである。なんでも起こりえるこの世界で、あらゆる可能性を考慮できるわけはないのだから。

かくして、被告人のドラ息子には推定無罪の原則が適用され、晴れて無罪放免となる。

勝利と引き換えに、自らが信奉する法の穴を突き、世界の司法システムを根底を覆してしまったヴィンス。
しかし、彼にとっての地獄はこれからであった。

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ヴィンスの手腕を気に入ったドラ息子の父親は、彼をマフィアの顧問弁護士に無理やり抜擢。今回の法廷戦術を、ファミリーが抱える全ての裁判に適用するように命じたのだ……

*****************************
というわけで、新型コロナの影響で新刊が出ない時期が続いたので、今回はその間に読んだ作品の紹介です。

『スポーン』や『Gen13』などのイメージコミック勢が台頭し、それらの作品に追随する形でマーベルやDCのヒーローたちも、より過激で、より暴力的な方向に路線変更していた90年代半ば。
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しかしそんな"エクスリーム"全盛期において、その方向性に待ったをかけ、現代のコミックシーンにつながるヒーローたちの王道回帰の流れを創った作品群が登場しました。

それは例えば、『ヒーローズリボーン』の終了後に始まったマーク・ウェイドの『キャプテン・アメリカ』やカート・ビュシークの『アベンジャーズ』であり、
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グラント・モリソンの『JLA』であるのですが、
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その中でも欠かすことが出来ない作品が今回紹介した『アストロシティ』です。

DCでもマーベルでもない、しかし確実にそのエッセンスを感じさせる世界を舞台に、ヒーローがいる世界のリアルを描いた『アストロシティ』。
「ヒーローがいる世界のリアルを描く」というと、ヒーローが酒や薬に溺れたり、社会的立場を利用して暗い欲望を満たすヒーローの裏の顔を描くような、露悪的な物語を想像するかもしれません。(実際にそういう作品も、当時、沢山ありました)

しかし、『アストロシティ』の描く"リアル"はそうではありません。
『アストロシティ』の"リアル"とは、例えば「ヒーロー家族の末っ子として宇宙や別次元を冒険する少女が感じる"学校"という異世界への憧れ」であったり、「刑期を終えて更生を目指すB級ヴィランの溜め息」であったりと、ヒーローコミックの全てを肯定した上で描かれる、パネルとパネルの間に存在する住人たちの日常なのです。

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今回紹介した物語も、けして「アメコミ世界ではまともな司法制度なんて成立しないよね」という意地悪な指摘で終わりではありません。
そうした指摘を踏まえたうえで、「それではアメコミ世界における司法の正義とはどのような形なのか?」を探る物語となっていきます。

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(ちなみに今回の物語で重要な役割を果たすヒーロー、ブルーナイト。
司法プロセスを無視し罪人を射殺する私刑執行人で、パニッシャーとゴーストライダーを合わせたようなキャラクターです。)

残念ながら、国内での翻訳は止まってしまった本作ですが、短編が多い(そしてそれらが皆面白い)作品ですので、原書でもぜひどうぞ。

【宣伝】
『アストロシティ』には複数の翻訳本が出ています。
いずれも現在では入手難ですが、名作ぞろいですので見かけたら是非どうぞ。
また、翻訳された2巻に続く『ファミリーアルバム』と今回紹介した話が収録される『ローカルヒーローズ』は、それぞれ短編集ですので、ここから読み始めるのもおすすめです。
(紹介しておいてあれですが、個人的には『ファミリーアルバム』の方を特にお勧めします)



DCは最近本国で、1冊完結のグラフィックノヴェルに力を入れているのですが、そんな作品群が続々と翻訳される模様。
『ハーレイ・クイン:ガールズ・レボリューション』はいわゆる"学パロ版ゴッサム"!ハーレクインを主人公に、ブルース、ジョーカー、ポイズン・アイヴィがみんな10代の若者として登場。
同じくハーレイが主人公の『ハーリーン』は打って変わって、アダルトな雰囲気が漂うロマンス。ジョーカーがセクシーすぎて鼻血出そう…
『ワンダーウーマン:ウォーブリンガー』は、ワンダーウーマンの少女時代を描いたグラフィックノベル。こちらは"Wonder Woman Warbringer comic"ちょっと検索してほしいのですが、とにかくアートが美麗です。ワンダーウーマンを主人公としたベストセラー小説が原作で、内容も折り紙つきです。




また、最近はヒーローコミック以外のコミックの翻訳も盛んになってきました。
『アメリカン・ボーン・チャイニーズ:アメリカ生まれの中国人』は現在DCで活躍中のライター、ジーン・ルエン・ヤンの出世作。
彼が『スーパーマン』に抜擢されたのは、アメリカ移民2世の悲哀を描いた本作がDC編集部の眼に止まったからではないかと、管理人は思っています。
またピュリッツァー賞を獲得した名著『完全版 マウス――アウシュヴィッツを生きのびた父親の物語』が久しぶりに発売。
こちらも一生モノのコミックですので、未読の方は是非。


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スーサイド・スクワッド#1

スーサイド・スクワッド#1
(作:トム・タイラー、画:ブルーノ・レドンド)

【タスクフォースX招集】
オーストラリアで起こった、超人環境テログループによる原子力潜水艦のシージャック事件。
自国が売りつけた原潜が裏社会に流出することを恐れ、密かに事態の収拾に乗り出したアメリカ政府は、罪の減免をかけて戦う悪党たちの特殊部隊タスクフォースX――通称スーサイドスクワッドの投入を決定する!

ベル・レーヴ収容所にあるブリーフィングルームに、いつものように連れ出されたハーレクインとデッドショットはしかし、いつもの任務とは違う2点に気が付く。
1つめは、彼らに任務の説明をするのがアマンダ・ウォラーではなく、ロークと呼ばれる新顔である点。
そして2つ目は、その集められたメンバーであった。
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デッドショット:マグパイにキャバリエ?
本気か?もっと他にいるだろ。
こいつらと一緒だと、道路を横断するのだって自殺任務だ。史上最低のスーサイドスクワッドだぜ。

ハーレイ:あまり"可哀そうな人たち"のことを非難したくはないけど、デッドショットの言うことも一理あるかも……
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キャバリエ:ワンフォーオール、オールフォーワン!
デッドショット&ハーレイ:黙ってろ!

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デッドショット:このシマウマ野郎もひどいな。
ハーレイ:そもそもなんでまたシマウマの恰好してるの?放射能シマウマに噛まれた?
ゼブラマン:いや
ハーレイ:シマウマの能力を持ってるとか?
ゼブラマン:いや
ハーレイ:シマウマがすっごい好き?
ゼブラマン:自分の名前については、一度も考えたことがない。
ハーレイ:一度も!?

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マグパイ:わたしただのコソ泥で、ちょっと場違いな気がしてるんですけど……


そんな不平たらたらなチームをスーサイドスクワッドの新長官ロークは、暴力的に黙らせる。
例えどんな面子でも彼らに拒否権はない。自身の恩赦を鼻先にぶら下げられ自殺同然の任務へと向かう。
それこそがスーサイドスクワッドなのだから。

【任務開始】
一方、奪われた原子力潜水艦の艦上では、自らを”地球環境を守るヒーロー”と自認する若者たちが、自らに迫りくるスーサイドスクワッドの存在を知らず、その翼を休めていた。

兄弟ではしゃぐ者、
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恋人と語らう者、
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新たな愛情を育む者。
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まるで家族のように互いを思いやる彼らに、スーサイドスクワッドが襲い掛かる!

闘いは凄惨を極めた。

キラーシャークに兄を食われ、崩れ落ちる弟、
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頭を勝ち割られるキャバリエ
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一瞬で殺されるマグパイ……

互いに殺しあう2つのチームの動向を上空から見下ろしていたスーサイドスクワッドの新司令官ロークは、戦いに気を取られる全員の体内にリモート爆弾を埋め込み、見せしめにテロリストの1人を爆殺したうえで、投降を促す。

ローク:次はどいつを殺してほしい?
リーダー:いつか絶対に殺してやる。
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ローク:同じことを言った奴はお前の前にも何人もいた。そして私はまだここにいる。
さぁ撤収だ。タスクフォースXの諸君、彼らがお前らの新しいチームメートだ。

デッドショット、お前は最初に"史上最低のスーサイドスクワッド"といったな。
その通りだ。私はこのやり方で世界を変えていく。


*************************
というわけで、今回は始まったばかりの新生『スーサイドスクワッド』の紹介でした。
直前のミッションで殺しあった敵をチームメンバーに徴用していく方針を推し進めた結果、"悪党同士の友情"どころか互いに互いの事を"仲間の仇"とみなす者たちで構成されることとなった新生スーサイドスクワッド。そんな彼らが「恩赦のために自殺的ミッションを遂行しながら、いかに監視の目を欺き身内の寝首を掻くか?」に血道をあげる姿が今回の作品の見どころですが、それに加えて特筆するべきポイントは、そのマイナーキャラ主体のメンバー構成。

映画などの影響もあり、それなりの人気悪役たちで構成されることが多かった近年のスーサイドスクワッド。
勿論、メジャーなキャラが登場することに異論はないのですが、そのせいで物語から"死臭"を感じなくなってしまったことは紛れもない事実。
そんな状況に対する反省なのか、今回は(ハーレクインとデッドショットを除き)皆がいつ死んでも不思議ではないメンバーばかり。
しかもそんな彼らをただ殺すだけではなく、短い描写の中で読者が彼らを好きになるのを見計らってから、きっちり殺すその見事さは、さすがトム・タイラー。『インジャスティス』、『DCeased』などで、"DC界の虐殺王"の名(管理人が命名)を欲しいままにしたのは伊達じゃありません。

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今回紹介した作品はこちら。(1つ目が単行本、2つ目が該当号の電子書籍となります)



続いて翻訳本ですがなんといってもお勧めしたいのが『ヴィジョン』の第2巻。"現役最重要ライターによる21世紀のマーベルの最高傑作"という売り文句が、大げさに聞こえない超傑作が日本語版で完結!
また傑作と言えば、漫画論の傑作『マンガ学 マンガによるマンガのためのマンガ理論 完全新訳版』。漫画における各種表現の分析や、欧米のコミックと日本の漫画の比較を、あくまで定量的な手法で行い、それを漫画形式で説明する作品です。
何度も言いますが、管理人はこの本の古本を相当なプレミアを払って手に入れました。それが新訳ででるなんて…


映画に合せて発売されるのが『ハーレイ・クイン&バーズ・オブ・プレイ(仮) 』。映画版バーズ・オブ・プレイに登場する主要キャラクターでのコミックでの名シーンを集めたオムニバス誌で、通常ならば翻訳の機会があまりないキャラが主体なのが嬉しいところ。
続く『マーベル・ミャオ』は、マーベルの公式アカウントで発表された日本人漫画家藤ナオ氏によるWebコミックを"ほぼ全編描き下ろし&日本オリジナル編集"でまとめた作品です。

DCの次なるクライシスと"究極の年表"について

今回はいつもと趣向を変えて、現在のDC世界に立ち込めるある噂について語ろうかと思います。

その噂とは、ずばり"次なるクライシス"。
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『クライシス・オン・インフィニティ・アースズ』、『インフィニット・クライシス』、『フラッシュポイント』…
DC世界の節目節目で発生し、その宇宙観や歴史と共にキャラクター設定さえ根底から覆すようなイベントを指して"クライシス"と呼ぶのはDCの伝統ですが、2020年に新たなクライシスが到来しようとしています。
本記事では、この"クライシス"について現在わかっている内容を、管理人による想像も交えながら予想していきたいと思います。

【クライシスの到来とダークマルチバース】
まずそもそも「本当に来年クライシスをやるの?」という疑問ですが、これにははっきり「やります」と答えることが出来ます。

そもそもの話、以前からコミコンのパネルやWebメディアのインタビューなどで、度々「現行のジャスティスリーグ誌で展開している『イヤー・オブ・ザ・ヴィラン』に続く展開として、DC史上類をみない規模の展開をやる」と言われてきました。
しかし、クライシス到来の根拠はそれだけではありません。
遂に、作中でも到来が予告されたのです。

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予告した人物はこちら、テンパス・フュージノート。
なじみのない方も多いかもしれませんが、『ダークナイツ:メタル』の後に登場した。ダークマルチバースの監視者です。

全ての恐怖と妄想が実現する可能性の領域であるダークマルチバースを日夜監視する使命を持った彼は、「DC世界の歴史上の大事件が最悪な方向に進んでいたら?」を探る連作短編集『テイル・フロム・ダークマルチバース』の一遍で、こう語っています。

テンパス:クライシスがくる……おそらく過去最大級のそれが。これを切り抜けるために、この世界は強くあらねばならない。

そしてクライシスの到来を察知した彼は、2つの行動を始めます。

1つ目は、文字通り無限の可能性を秘めたダークマルチバースの世界を渡り、来るクライシスに立ち向かう術を探ること。
その探索の様子は先ほども名前を挙げた連作短編集『テイル・フロム・ダークマルチバース』で描かれています。

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(こちらは「もしも背骨の損傷から回復したブルース・ウェインが、アズラエルからバットマンの名を取り戻すことに失敗していたら?」を描いた『テイル・フロム・ダークマルチバース:ナイトフォール』の表紙)

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そしてテンパスの2つ目の行動は、クライシスの到来と共に謎の暴走を見せ始めたダークマルチバースからこの世界を護るため、"世界最速だった男"ウォーリー・ウエストをテンパスのエージェントとして選び出すことでした。

また、ダークマルチバース関連して暗躍をしているのは、テンパスだけではありません。
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"ダークマルチバースの化身"とも言えるような男、嗤うバットマンもまた、『バットマン/スーパーマン』誌で活動を再開。
正史世界のヒーローたち6人を密かに"ダークマルチバース化"。
独自の私兵集団であるシークレットシックスを結成し、何らかの計画を侵攻しているのです。

【究極の年表】
というわけで、クライシスの到来は正式に予告され、それにはダークマルチバースが重要な役割を果たすことが提示されたわけですが、今回のクライシスを読み解くうえでもう一つ欠かせないキーワードがあります。
そのキーワードとは"歴史"。

先日開催されたニューヨークコミコンのパネルにて、DCの編集長は「今後の展開を前に、現在、我々はDC世界の"究極の年表"を作り上げようとしている」として、1枚の巨大な年表をスクリーンに投影しました。
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会場に比して非常に細かい字で書かれており、初めから来場者に詳細を読ませること狙っていないことが明白なこの年表ですが、そこからはDC世界の歴史は、
 ・ワンダーウーマンが世界最初のヒーローとして人間社会にやってきたところから始まる1G(1st Generation)、
 ・スーパーマンのデビューから始まる2G、
 ・『クライシス・オン・インフィニティ・アースズ』から『フラッシュポイント』までが起こったクライシスの時代3G、
 ・現在我々が読んでいる時代である4G、
の4つの時代に分けられることがわかります。

また先日、DCのTwitterアカウントがリーク画像の体でツイートした画像からは、この年表の具体的な構成と、1Gの様子がみてとれます。
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それによれば、セミッシラから人間界にやってきたワンダーウーマンは、その後JSAと共に、第二次世界大戦に参戦。
しかし、原爆の投下を理由に人間界に見切りをつけた彼女は、再びセミッシラに引き籠ることになったとのこと。

しかし、ここで注目すべきは「ワンダーウーマンがDC世界の最初のヒーロー」という新設定ではなく、「クラーク・ケントもブルース・ウェインも第2次世界大戦の終戦前に既に生まれていること」ではないでしょうか?
一見、1940年代に既に生まれていたバットマンやスーパーマンが、現在(年表で言えば4Gの時代)も現役で活躍しているのは、設定的に破綻しているようにも見えます。
しかし思い出してください、上記の通り3Gとは「クライシスの時代」であり、実際に年表には『フラッシュポイント』などの歴史改変イベントがはっきりと記載されていることを。

つまりは、この"究極の年表"とは、クライシスによる歴史改変自体が歴史上の事件に含まれたいわばメタ年表なのです。

そう考えれば、戦中生まれのバットマンが、今も元気にジャスティスリーグに参加していることは何ら不思議ではありません。
途中歴史は改変され、彼らは新しいスタートを切ったのですから。

ちょっと横道気味でしたが、いずれにせよ次のクライシスでは、この"究極の年表"とDCの過去の歴史の復活が、ダークマルチバースと並んで重要な要素となることは間違いないでしょう。
そして、その予兆は既に刊行中の様々なコミックに現れてきているのです。
以降のパラグラフではその予兆を一つ一つ追っていくことにしましょう。

【フラッシュポイント前を思い出し始めたヒーローたち】
ウォーリー・ウエストのNew52世界への帰還から始まったDCリバース。
それ以降、長らくウォーリー・ウエストはこの世界で唯一の「フラッシュポイントの前の歴史」を知る人物でした。
しかし、現在のDC世界では、少しずつ過去の人生の記憶を思い出し始めたキャラたちがいます。
まずはそのキャラクターたちを紹介していきましょう。

[ヤングジャスティス]
今年になって始まった新タイトルの主人公たち。
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ウォーリー同様スピードフォースの中から脱出したインパルス(バート・アレン)と、訳あってDCにおけるファンタジー世界ジェム・ワールドに飛ばされていたスーパーボーイ(コン・エル)の2人は、そもそもNew52世界での人生を持たないリブート前の世界の住人です。
しかしNew52世界のキャラとして今まで活躍していたレッドロビン(ティム・ドレイク)とワンダーガール(キャシー・サンドマーク)も、リブート前にインパルスたちと結成したチーム、ヤングジャスティスの記憶を何故か持っています。

この記憶の混乱については、ティムも自覚しており、「なぜ自分たちが、歩んでいない人生の記憶を持っているのか?」はヤングジャスティス誌の重大な謎となっています。

[アイリス・ウエスト]
バリー・アレンの恋人、アイリスも未来世界のフラッシュ博物館を訪問したことを切っ掛けにリブート前の記憶を取り戻しました。
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しかし、自分とバリーが結婚していたことを思い出したことが、かえって悪い方向に作用してしまい、現在、アイリスとバリーの関係はどこかギクシャクしたものに…

[二人のクエスチョン]
無貌の仮面をかぶったDCを代表する探偵であるクエスチョン。
実は現在のDC世界では、ヴィク・セイジによる男クエスチョンと、レニー・モントーヤが名乗る女クエスチョンの2人のクエスチョンが存在していました。
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リブート前の世界では言わば初代と2代目の関係にあった2人ですが、New52世界での2人の関係は不明。
しかし、『ロイス・レーン』誌で初めて出会った二人は、初対面の筈なのに互いの事を知っているばかりか、「吹雪の中、命を落としたヴィクとそれを看取るモントーヤ」という、リブート前の世界における初代クエスチョンの死亡の瞬間の記憶すら共有していることに驚きます。

【"過去"の復活】
そして、こうした微かな予兆だけではなく、今までその存在を匂わせる程度であったリブート前の歴史が、New52世界で実際に復活を遂げました。

その舞台となったのは、DC世界の創世神パーペチュアとヒーローたちの戦いを描く『ジャスティスリーグ』誌の中でした。
パーペチュアの使徒となったルーサーたちとの最終戦争に備えるために、二手に分かれてこの世界の過去と未来に跳んだヒーローたち。
歴史を遡ったバリー・アレンとジョン・スチュワートは、ハイパータイムを超えたその先で、自分たち同様未来からやってきたゴリラグロッドらと戦う、ヒーローたちと出会います。

初めて出会った謎のヒーローたちに、助力を乞うフラッシュとグリーンランタン。
しかし、彼らの名前を聞いた謎のヒーローたちの反応は予想外なものでした。

ヘルメットの男:君たちがフラッシュとグリーンランタンだって?失礼ながら、君らはなにか勘違いをしているようだ。
フラッシュとは私の事。そしてグリーンランタンとは隣にいる彼の事だ。
どうやら、我々も自己紹介をしなければいけないようだ。
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ジャスティス・ソサエティ・オブ・アメリカと!


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(余談ですが、未来に行ったチームも、なんだかんだあってDCの様々な未来世界のヒーローが一堂に会する胸躍る事態に。)
(さらに余談ですが、よくみるとこれらの"未来ヒーロー"の中にとんでもないキャラが…)

【DC世界のこれから】
というわけで、今まで長々と
 ・2020年にDCは大規模なクライシスをやるらしい
 ・そして、この新たなクライシスでは、"ダークマルチバース"と"DCの歴史"がキーワードとなるらしい
という話をしてきました。

そして、これらの視点に従うならば、DCが12月より開始するミニシリーズ『イヤー・オブ・ザ・ヴィラン:ヘル・アリズン』は重要な作品となると思われます。
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何故なら、本作では嗤うバットマンとレックス・ルーサーが激突、
つまりは、"ダークマルチバース"をテーマとした物語と、"DCの歴史"をテーマとした物語が遂に交錯するのですから。

今までの情報から考えるに、この激突が"クライシス"につながることは、疑いないでしょう。
(少なくとも管理人は疑っていません)

このクライシスがどのようなものになるのかは、わかりません。
しかし、その結果何が起こるのかについては、1つはっきりしていることがあります。
このクライシスをもって、現在のDCの時代"4G"は終了。
次なる時代"5G"が始まるのです。

ニューヨークコミコンのパネルにて名前のみが発表された5G。
この内容については、
 ・現在のNew52は既に過去のものとなり、多くのヒーローは既に代替わりしている。
 ・スーパーマンの名を継いだのは、ジョン・ケントだ。
 ・バットマンは、ルーク・フォックスだ。
 ・グリーンランタンは…
など、正直出所の怪しい眉唾物も含めて様々な噂が飛び交っています。
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仮にそれらの噂が真実でもガセでも、「DC世界にとんでもないことが起きる」ということは紛れもない事実。
新しい時代の誕生に立ち会い、歴史の転換点の目撃者となることを楽しみにアメコミを読んでいる管理人は、あらたなクライシスが楽しみでなりません。

【宣伝】
今回の記事で語った「ダークマルチバース」と「DCの歴史」という2つのストーリーライン。
これらの物語は既に、翻訳本で語られ始めています。

『バットマン・メタル』で始まったダークマルチバースの物語は、先日『ザ・バットマン・フー・ラフズ』の刊行予定が発表。



また、DCの歴史の部分を語る『ジャスティスリーグ』も着々と翻訳が進んでいます。
今回の記事を読んで興味を持った方は、ここら辺から読み始めてみるのも良いと思います。


続いて近刊ですが、これまたトピックが多くて困ってしまいます。
まずは個人的にうれしいのが、"ヒーローたちのメンタルヘルス"というアメコミのタブーを扱った名作『ヒーローズ・イン・クライシス』の翻訳決定。
個人的には今年のベストに上げたい作品ですので、未読の方は是非。
同じ作者が手掛けているバットマン誌も順調に翻訳が継続。
遂に中盤の山場ともいえる『バットマン:ウェディング』までが刊行リストに載りました。




そしてこれまた嬉しいニュースが、角川のアメコミ翻訳参入。
不動の人気を誇るTRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の各種コミカライズ作品を、TRPGのシナリオ付きという面白い形態で刊行するとのこと。個人的には非常に評判の高い『バルダーズゲートの伝説』から読み始めてみようかと思っています。



また最後にぜひ皆さんに紹介したいのが、管理人の大好きな『アメコミ・ヒーロー スーパーグラフィック インフォグラフィックで拡がる 海外コミックの世界』の翻訳決定!

「5人のロビンの在任期間」、「バットマンのテーマの歌詞における"Da!"と"バットマ~ン♪"の割合」、「パニッシャーが悪人を前にした時のフローチャート」など、アメコミ界の様々なデータをインフォグラフィックの手法で提示する愉快な統計集です。
疲れた時に拾い読みするだけでも楽しめる管理人の愛読書なので、未読の方は是非!
また、同じ出版社から『ジャック・カービー アメコミの"キング"と呼ばれた男』の翻訳も決定。
こちらは、マーベルとDCを股にかけ、今日のヒーローユニバースの礎を築いたアメコミ界の"キング"ジャック・カービーの伝記となります。
伝記と言いながらも、当時のコミックやラフスケッチを多数収録したヴィジュアル的にも見どころの多い本のようなので、こちらも楽しみです。
ついでにスタン・リーの伝記も読んで、皆さんも「スタンとキング、マーベルユニバースを真に生み出したといえるのはどちらなのか」という、マニアたちの不毛な百年戦争に参加しましょう!(笑)


プロフィール

NOB-BON

Author:NOB-BON
X-men生まれSpawn育ちを地でいく、90年代アメコミバブルの残党。
しばらくの間、アメコミは翻訳本を買う程度だったのが、最近のデジタルコミックの手軽さにひかれ、本格的に復活しました。

基本的にMarvelメインですが、DCのリランチを機に自分の中でDCブームが来てるので、しばらくはDCの話題続くかも。
しばらくどころか完全にDC派に転びました。

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